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88:陰口

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毎朝と晩、欠かさず挨拶をしに来てくれるジャックは、本当に忙しそうだった。

「おはよう、ソフィア」

「おはようございます。お疲れの顔をしています。ゆっくり休めていますか?」

ジャックの顔を見るだけでホッとして温かい気持ちになるソフィアだが、最近のジャックは明らかに疲労していて心配だ。 

「最近は仕事がどんどんと舞い込んで来るのだ。一緒に過ごす時間を作れずに申し訳ない」

「ならば、朝や晩も無理をしていらっしゃらないで下さい!」

「無理ではない! 俺が会いたいのだ。俺の癒しの時間を奪わないでくれ……」

捨てられた子犬のような瞳で言うジャックに、ソフィアは胸が高鳴ってしまう。

(本当に大変なのね……)

そう思いながらも、単純にジャックの身体が心配だった。

(やはり、とても相談は出来ないわ……。ジャック様の仕事が増えたのは偶然かしら? 私たちとの時間を作らせないため……?)

最近ソフィアは、すっかり疑い深くなってしまっている。




城入りして二週間が経った頃、ずっと楽しそうに過ごしていたブライトが変なことを口にした。

「ねえ、僕とお母様は、ここにいてはいけないの?」

「えっ? どうしたの、突然……」

侍女がティーカップを下げに席を外し、二人きりとなったタイミングでブライトは言った。

「聞こえて来たんだ。”さっさと二人で出て行け”って」

悲しそうな顔をしているブライトに、ソフィアは怒りが込み上げて来る。

(私が放っておいたばかりに、ブライトにまで!!!)

「……ブライトは、どうしたい?」

ソフィアは冷静を装いながら、尋ねてみる。

「僕はここにいたい。毎日お父様に会えるのが嬉しいし、使わせてもらっている訓練場も地面の凸凹が少なくて、走り易くて良いんだ」

ブライトは"シュンッ"としてそう言う。
そのブライトの言葉と表情に、ソフィアは決意する。

「そう。なら、ここに居ましょう」

ソフィアはにっこりと笑顔で、そう言ったのだった。

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