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99:祝福と、嵐の前の静けさ

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城へ移り住んでからは、ずっとひっそりと暮らしていたソフィアとブライトだった。
しかし前国王に知られ祝福されたことで、一気に城中がお祝いムードになった。

(ジャック様は、様々な方々にとても愛されているのね)

ソフィアはブライトの父親として、そして自分の将来の夫としてのジャックを誇らしく思う。
国政へ関与している貴族たちも、噂を聞きつけてぞくぞくと祝福を言いに会いに来るため、一気にソフィアとブライトは忙しくなった。

「ジャック様が、これほど人気者だとは知りませんでした」

「海辺から城へ戻って来てからは、ひたすらに仕事ばかりして来たからな。その姿勢を……今までやって来たことを認められているようで、嬉しいよ」

ジャックは忙しい仕事の合間で、挨拶の約束時間には遅刻せずに必ず現れた。

「嬉しい忙しさだな」

そう笑顔で言うジャックは、面会が終わるとソフィアとブライトの頬へキスをしてから、急いで仕事へ戻って行くのだった。

「ジャック様、忙しいのに嬉しそうだね」

「ええ、そうね。ブライト、次の面会時間まで二時間あるから、今がチャンスよ?」

「そうだね、行って来る! 今までは訓練場の端っこを使わせてくれていたのに、最近は”もっと中を使って良い”って言ってくれるんだ」

そう嬉しそうに言いながら、ブライトも付き添いの使用人と消えて行った。



一人になったソフィアは、最近頭から離れないことについて考えることとする。

「失礼いたします」

お茶を持って来た侍女は、あの一件がなかったかのように、すっかり以前通りの無表情で不愛想だ。

「ねえ、その後、第二王子夫人から何か言われたりはしていないの? あなたも、あの時の使用人の3人も」

「いいえ、特に何も。……彼女たちは……いえ、何でもございません」

侍女が”しまった”という顔をしたのを、ソフィアは見逃さなかった。

「何?」

「……」

「教えて頂戴」

「……」

「言いなさい」

ソフィアの言い方が命令形になったところで、侍女はしぶしぶ口を開いた。
"余計なことを言ってしまった"との後悔を顔に滲ませながら。

「……3人はやめました……」

「えっ?」

「……偶然三人のタイミングが重なっただけで、あの件が理由ではありません……。では、片付けてまいります。失礼いたします」

侍女は足早に部屋を退室して行く。

(偶然な訳がないわ……)

ソフィアはあの時の第二王子夫人の顔を思い出し、”ゾッ”とする。
そしてあれ以来、ソフィア達に対しては何の音沙汰もない。

(何だか怖いわね……)

今が嵐の前の静けさではないことを、ソフィアは祈るばかりだった……






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