【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

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39 ユバル領主 フラン

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「……初めましてエリスリーヤ殿下、ご機嫌麗しゅう」

 俺はどんな顔をしていた?笑えていただろうか?きっと無理だったな。目の前の人物が物凄く困った顔をしているもんな、そうだよな、困るよな。
 ぺこり、と一つお辞儀をする。礼儀とか何とか、無理、もう無理だ。

「父さん、少しだけ母さんを貸してくれ。ちゃんと返すから」

「……分かった」

 謁見中だったとかそんなのは関係ない。ごめん、眼鏡達何とかしておいてくれ。俺は隣に座っていた母さんの手を握って立ち上がった。

「……良いわ、行きましょう。リーヤ」

 俺の横に母さんは並んで歩いてくれる。皇帝とその家族が専用で出入りする扉から出て、遠ざかる。

 なるべく遠い部屋に入り、母さんはソファの上に座り、俺もその隣に座った。

「母さん、俺、フラれたんだな」

「泣いて良いわよ、リーヤ」

 俺は母さんの膝に縋り付いて大声で泣いた。多分、好きになっていたんだろうな。あの強い心を。折れない真っ直ぐで明るく挫けない心を。

「うわああああーーーー!」

 デズモンドの被害者として、やっと城にまねかれたフランと久しぶりに対面した。
 いつかフランはやって来ると思っていた。会ったらフランは何て言うだろう?無理矢理抱いて放置していなくなったんだ。謝るだろうか?それとも明るく声をかけて来るだろうか。ふざけるかな?そんな事して来たらぜったいぶん殴ってやろうと思ってた。
 責任を取るとか言うのか?皇帝の息子として座っている俺に何て言う?驚くかな?憎むかな……?出来れば憎まれたくないんだがなぁ~。

 それなのにフランは何もなかった事にした。元王子であり、現ユバル領の領主として俺の前に現れた。
 そうだよな、過去に俺と会ったことなんか領主には関係ないもんな。俺と結婚なんてする訳ないよな。なんせ俺は男だ、跡継ぎなんて産めやしない。

 フランはどこまでも正しい王族だった。ただそれだけ。俺が勝手に思っていただけ。

「ごめんなさい、リーヤ。フランなら……あなたを任せられるって母さんも思ったの……」

「う、うう、ううう……」

 良いんだ、分かってる。正しいんだ、フランが正しくて俺が間違ってた。分かってるけど、俺の心は泣き叫ぶんだ。

「ごめんなさい、リーヤ」

 母さんは俺の背中を撫で続けてくれた。ありがとう母さん。大丈夫、明日になればまたいつもの俺に戻るから。

 今だけは、このままでいさせてくれ。思えば前世を含めて初めて人を好きになったんだ。はは!気付くのがフラれた瞬間なんて笑っちまう!



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