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家臣現る

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「神子様とお見受けいたします」
 後ろから声をかけられた。

 振り向くと濃紺色の髪をした背の高い男の人が立っていた。

 さて、どう返事をしよう。
 普段ならはいそうですと全面肯定はあまりしないようにしているが、この衣装では否定のしようもない。
 私が返事をどうしようかと思い倦ねていると、私の隣にいたジークハルト様が口を開いた。

「何かご用でしょうか」
 冷たい声だ。辺りは氷点下になりそうなくらい冷気が漂よう。

「突然ご無礼致しました。私はバルダナス国の元の王家に仕えておりましたフェルナンド・スサラフと申します」
「場所を移そう」
 ジークハルト様はその人の腕を掴むと、瞬間移動でその人と私を連れて移動した。
 
 目の前にはお茶を飲んでいるアラン様、リーナ様、レスリー様がいた。

 スパリーナ国のアラン様のお屋敷に移動したようだ。

「あら、ジーク。今日は結婚式でしょ?どうしたの」
 リーナさんが驚いてジークハルト様に声をかける。
「レティの神子ドレス姿を見せにきたのか? 神子ドレスも可愛いな」
 アラン様がおどけた調子で言う。

「この者を連れてきた」
 ジークハルト様は相変わらず言葉が足りないので私は補足する。

「先程、声をかけられたのです。バルダナス国の元の王家に仕えていたスサラフ様だそうです」
 
 そう言うと、レスリー様が立ち上がった。
「スサラフ? まさか、フェルナンドか?」
「レスリー殿下でございますか。大きくなられましたね。お会いしとうございました」
 サフラス様がレスリー様の手を取る。本当に家臣だったのね。

 ジークハルト様は心の声を聞く魔法が使える。あの一瞬でスサラフ様が本物だとわかり、レスリー様の元に連れてきたのだろう。

 スサラフ様は元の王家の近衛騎士団長の嫡男で父親は現バルダナス国王に捕らえられ処刑されたそうだ。
 
 あの時、国にいなかったレスリー様が生きていて、きっと仇を討つと信じて探していたそうだ。
 スサラフ様も、あの時、何人かの騎士とともに父親に密かに国外に逃され、隠れながら近隣国を転々とし、レスリー様を探しておられたらしい。
 
 ランソプラズム国に入り、聴力魔法で神子達がバルダナス国王を倒そうとしていると聞きつけ、ひょっとしてレスリー様の手がかりを掴めるかもと、結婚式に私達が現れると踏み、待っていて声をかけたらしい。
 しかし、心の声が聞けたり、小さな話し声が聞こえたり、魔法って本当に便利だけれど怖い。

 独裁国の王がこんな魔法使えたら、すぐに捕まって処刑されてしまうだろう。

 魔法は使う人と使い方によって善にも悪にもなるものなんだなぁ。
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