上 下
70 / 91
第一部 第一章

70話

しおりを挟む
 グースはエルクとルリにそう言うと、翼を羽ばたかせて一気にその場から飛び去っていった。

 グースが飛び去るのを見送ったエルクとルリは、少しの間グースが飛び去って行った方向の空を見上げていたが、お互いに辺りを警戒するために張っていた気配察知に魔物達の反応が引っ掛かった事で現実に引き戻され辺りの警戒をし始めた。

「グースが居ないなった途端に、今までこの迷いの森の中心部に居た魔物達やその魔物達によって住処をおわれていた魔物達も続々と元から居た場所に戻り始めたみたいだな」

「ええ、そうね。大怪我をしていたとは言え本当にはた迷惑な巨大なトカゲだったわね」

「おいおい、ルリ、お前、そんなにグースのことが嫌いだったのか。でも、その巨大なトカゲって言うのグースの前では言うなよ。あいつ、あの感じだとそれを聞いただけで、また、暫く泣き続けるぞ。一々泣き止むのを待つのが面倒くさいからさ」

「そうね。それは面倒くさいわ。グースの前では言わない様に気を付けるわ」

 そして、エルクは自分とルリに仙術『神隠し』を施すとその場を立ち去り、浅層に出て来てしまっていたオーガ達の集落がどうなっているかを確認するためにオーガ達の集落を目指して歩き出した。

 エルクとルリが最深部から浅層と中層の境付近にあるオーガの集落近くに到着すると、オーガ達は丁度、浅層と中層の境付近に今回新しく作った集落を放棄して、元々居た中層へと戻る準備をしていた。

「どうやら、オーガ達は中層に戻るみたいだな」

「ええ、その様ね。これで無駄にオーガ達を殺さなくてもよくなったわね。私、正直今回は、グースが中心部に降りて休憩していたせいで、住処をおわれて浅層に出て来るしかなかったオーガ達を殺したくなかったのよね。勿論、街道で悪さをしていたオーガは別だけどね」

「まあ、そうだよな。俺も正直、あの集落に居るオーガ達を殺さずに済んで、内心良かったって思ってたんだよ。よし、それじゃあ、オーガ達の移動を見届けたら俺達もマスイの街に帰ろうか」

「そうね。そうしましょう」

 そして、エルクとルリはオーガ達が中層へと戻って行くのを数時間かけて見届けると、その場を後にし、マスイの街へと帰って行った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回は少し短めになってしまいました。




面白い、この先が気になると思った方は、お気に入り登録をお願いします。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【本編完結】ごめんなさい、お淑やかじゃないんです。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:8,612pt お気に入り:3,921

限界集落で暮らす専業主婦のお仕事は『今も』あやかし退治なのです

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:1,732pt お気に入り:1

本当はあなたを愛してました

m
恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,373pt お気に入り:218

【完結】待ってください

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:43

ざまぁされちゃったヒロインの走馬灯

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,132pt お気に入り:59

裏路地古民家カフェでまったりしたい

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:387

処理中です...