二周目の世界で、前世の護衛騎士から怖いくらいに溺愛されています。

 妖精のような見た目の伯爵令嬢ヴィクトリアは、ある夜の舞踏会にて、貴族の令息に暗がりへと引きずり込まれる。
 力では敵わず、絶体絶命! 
 誰か助けて!

 心で叫んだとき、幻のように浮かんだのは、会ったこともない見知らぬ青年の姿だった。

 長い金色の髪にアイスブルーの瞳を持つ、長身の騎士。よく体を鍛えていて、剣の腕も立ち、どんな時でも護衛対象を完璧に守り抜く鋼の意志の持ち主。
 ヒースクリフ・ブルーイット。
 彼の名前が、自然と頭に浮かぶ。

(ヒースクリフがいれば、こんなことにはならなかったのに!)

 自分のものとも思えない感情が、溢れ出す。
 そして思い出す。自分がかつて「ラルフ」という名前で、この国の王子であったこと。婚約者の公爵令嬢ナタリアに毒殺されて、命を落としたこと。ヒースクリフは、ラルフの護衛だった青年だ。

 それは、過去ではなく、いまと同じ時代の出来事。現に、ナタリアはこの世界にも存在している。
 ただし、ラルフはいない。
 ラルフが生まれていない世界で、ラルフの記憶を持つヴィクトリアは、まだヒースクリフには出会っていなかった。
 男に襲われたヴィクトリアは、無我夢中で叫ぶ。

「ヒースクリフ、『僕』はここだ! 助けて!」

 そのとき、ふっと風が流れて、耳に馴染む懐かしい声が響いた。

※TS+逆行転生。
前世の部下の「恋の練習役」にならねばと斜めな奮闘をするヒロインと、完全にロックオンしているヒーローのすれ違いラブコメです!
(「元の自分」はいない世界で、ヒロインは女性として生まれ育ち、男性の記憶は希薄です。
精神的BL要素と言えるほどの内容はありませんが、苦手な方はお気をつけください)

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