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王子様と皇太子殿下 7
クロエとソラは友だち
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ソラ君と久しぶりに剣を合わせる…と言っても、木剣だけど。
「宜しくお願いします」
そう言うと、ソラ君は笑って
「こちらこそ」
と言う。
まずは軽く、剣術「ごっこ」から始める。
そこから少しずつ本気を出していって、どちらかが参ったと言ったらおしまい。
こっちから、手元を狙う「感じの」一撃を入れる。
軽く払われ、今度はソラ君が手元を狙う「感じの」一撃を返してくるので、それを逸らさせるように剣を出し、返して胴を、それを払って頭、返して…
カン、カン、カン、
「もうちょっと速度上げてみようか」
「うん」
打って、返して、打って返して…
カンカンカン…
「上げるよ!」
「うん!」
カ、カ、カ、カ、カ
「せっ!」
パン、シュ、パン、シュ
「たあっ!」
カァン!
……っ。
「参りました」
負けだ。もう一回、最初から。
----------
「はあっ、はあっ、やっぱり勝てないなぁ…」
「ふー、そりゃ、カラス君、暫く剣を、握ってないからさ、でも感覚は、しっかり残ってる、よ」
2人で草原へ座り込む。
「腕が辛いな…」
「右も何か、義手とかあればいいのにね」
義手かあ。そういえば作ろうって思わなかったな。
「とりあえず、左手でも剣は使えるから、あんまり考えたことなかったな、でも、確かに、右も何かしたほうが釣り合いとれるよね」
右腕を鍛える、か。
肘は残ってるから…少しは何か出来るかな。
「何か重りでも付けてみようかなあ…」
「あ、じゃあちょっと待ってて」
ソラ君が、小さな砂袋をいくつか持ってきて、それをぼくの右腕に巻きつけるようにして固定した。
「これで、もう一回、かるくやってみよう」
これでやると…
「こっち側、重いだけで、違うね」
「うん、切り落とされた分の、重みをね」
なるほど。
カン、カン、カン、カン。
カンカンカン……
「ここから先って、重かったんだなあ」
カ、カ、カ、カ、カ
「このまま、「ごっこ」だけで終わる?」
「いや、いつものやつ、いこう」
カキン!シュッ!カァン!シュルッ!カキン!
「ふんっ!」
「せあっ!」
バキ!
「……剣、折れちゃった…」
「あらら、カラス君にしては珍しいね」
仕方がないから今日はこれで終わり。
一休みしようと草原に2人で座る。
持ってきた水筒に口をつけ、ソラ君にも勧める。
「薬草茶の新しい配合を試してみたんだけど、飲んでみて感想を聞かせてくれる?」
「うん」
「そろそろ暑くなってくるから、清涼感を出すのにミントと、レモンの皮を乾燥させたのを混ぜたんだ。
そこに、甘草で少し甘みを足して…」
ソラ君が飲んでから感想をくれる。
「さっぱりしてて美味しい。でも運動の後に飲むなら、少し塩を足してみてもいいかも」
「塩か…。」
確かに、汗は塩っぱいから、体から塩が無くなっていくのは分かるな。
温泉を皆が入れる場所にするなら、こういうの置いても売れるかも…
「何か考えてる?」
「……うん、温泉をもっと皆が使えたらいいのになって思ってて。
ヤンマが窯を買ったでしょ?家族も今度遊びに来るっていうしさ。
もしかしたら、ここへ家族で住むことになるかもしれないでしょ?
だからここにお客さん来てくれるようなものがあればさ、パン屋とか食堂とかで生計立てられるでしょ?
あの家にヤンマの家族が住むことになったらギンたちの家も増えるかもしれないし、そうやって少しずつ町になってかないかなと思って」
「なるほどなぁ~。
先生がここらへんを別荘地にしようかと思ってるって言ってたし、それなら宿屋とか、お酒飲めるとことか、色々作って、皆が楽しめる場所にしたらいいかもね。
そうなったら、うちは温泉までの馬車とか貸馬なんかで稼ごうかな」
「いいね!
僕はね、ここを薬草茶のお店にしたいなって。
お茶なら気軽に楽しめて、薬草を身近に感じられるんじゃないかと思って。
…となると、薬学も学ばないといけないなーと思ってさ、今勉強してるとこなんだ」
そう言うと、ソラ君は、感心したように言う。
「カラス君は勉強熱心だなあ」
「知りたいことがたくさんあるだけだよ。
本を読むとね、色んなことが分かるんだ。
実際にやってみて、うまく行かないことも多いからさ、読んだだけじゃ駄目なんだろうけど、やっぱり本を読んでからでないと何からしたらいいか分からないもんね」
「そうだよね、北の平原でも1年目は苦労の連続だったもんねぇ。鳥に食われて種が全部やられたりさ」
ハハハ。
ぼくらはそのまま、地面に寝転がる。
すっかり疲れてしまったみたい。
少し眠い…
「でも…その経験が今…生きてるんだよね」
「ほんとだね!でもさ、薬学の実践って、どうするの?実際にやってみて、何かあったら困るよね?」
「そうだよね…飲み合わせってあるみたいで、間違うと大変だから…まずは自分で試すんだけどさ」
「カラス君に何かあったら困るよ!おれがやるからさ、何でも言ってよ」
「でもソラ君になにかあるとロウさんが心配するよ?」
「カラス君に何かあってもエースが心配するよ!
…ただでさえ何かあったら死んじゃうんじゃないかって、心配ばっかしてるのにさ」
この練習の前に随分釘を刺されたらしい。
…過保護だなあ。
「確かに…人間は…死ぬ…」
「そうだよ、だからさ…やめなよ、自分で試すの」
「でも…、そうか…だから…不死者が…必要…」
「そうだよ、学園なら先生もユーゴさんもいるから安心して試せるんだ」
「そか…けんぞく、に…なれば…じぶんで…」
「そうだよ、そうしなよ」
「うん…そのうち…ね…」
眠たい…
「眠いの?」
「うん…」
そっかあ、と言って、ソラ君が右腕に左腕をくっつけてきて、そこから温かいのが伝わって…
----------
「お前ら何しとるか!!」
わっ!
エースさん!?
「何で2人でそんなにくっついてるのさ!」
ロウさんも!?
「こうすると良く眠れるんだ、それだけだよ!」
なんで2人とも怒ってるの?
「まさか、クロエに右手があったときは、手を握り合って寝ていたんじゃなかろうな…」
そう言ってエースさんが凄むので、つい本当のことを言ってしまう。
「それは…まあ、そうですけど…」
何なら背中と背中をひっつけて寝るのが、小さい頃は普通だった。
寝台が狭いから2つを並べて2人で使ってたし、背中が温かいと良く寝られるから、生活の知恵みたいなもので。
そしたら、2人は、
「「許しません!」」
「友だちだからって!くっつき過ぎ!」
「そうじゃ、友だちだからといってそのような破廉恥なことをするでない!」
「…は?破廉恥、ですか?」
「そういうことを思うそっち側の問題でしょ!?」
色々抵抗してみたけれど、結局勝てなくて…怒る2人にお互い横抱きにされて、家に「持ち帰られる」ことになってしまった。
「次からは儂が見とるとこで稽古しろ」
「もう2人きりで会わせないからね」
「ロウ、ソラをちゃんと躾けておけよ」
「お前もな!」
あれ、これ、良くない気がする?
「ロウさん、ソラ君に酷い事しないで…」
「しねーよ、ちょっと啼かすだけだ」
そういうと、ロウさんはソラ君に口づけを…
「んー!」
うわっ、すご…あんな激しいの…
ソラ君もロウさんの首に抱きついて…って、
だめ!見ちゃだめだ!目を逸らさないと…って、エース、さん?ちょっと、やめ…
「ん、んん…!」
ぼくらは2人して、そこで濃厚な口づけをされるのを見せ合うことになってしまったのだった…
「宜しくお願いします」
そう言うと、ソラ君は笑って
「こちらこそ」
と言う。
まずは軽く、剣術「ごっこ」から始める。
そこから少しずつ本気を出していって、どちらかが参ったと言ったらおしまい。
こっちから、手元を狙う「感じの」一撃を入れる。
軽く払われ、今度はソラ君が手元を狙う「感じの」一撃を返してくるので、それを逸らさせるように剣を出し、返して胴を、それを払って頭、返して…
カン、カン、カン、
「もうちょっと速度上げてみようか」
「うん」
打って、返して、打って返して…
カンカンカン…
「上げるよ!」
「うん!」
カ、カ、カ、カ、カ
「せっ!」
パン、シュ、パン、シュ
「たあっ!」
カァン!
……っ。
「参りました」
負けだ。もう一回、最初から。
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「はあっ、はあっ、やっぱり勝てないなぁ…」
「ふー、そりゃ、カラス君、暫く剣を、握ってないからさ、でも感覚は、しっかり残ってる、よ」
2人で草原へ座り込む。
「腕が辛いな…」
「右も何か、義手とかあればいいのにね」
義手かあ。そういえば作ろうって思わなかったな。
「とりあえず、左手でも剣は使えるから、あんまり考えたことなかったな、でも、確かに、右も何かしたほうが釣り合いとれるよね」
右腕を鍛える、か。
肘は残ってるから…少しは何か出来るかな。
「何か重りでも付けてみようかなあ…」
「あ、じゃあちょっと待ってて」
ソラ君が、小さな砂袋をいくつか持ってきて、それをぼくの右腕に巻きつけるようにして固定した。
「これで、もう一回、かるくやってみよう」
これでやると…
「こっち側、重いだけで、違うね」
「うん、切り落とされた分の、重みをね」
なるほど。
カン、カン、カン、カン。
カンカンカン……
「ここから先って、重かったんだなあ」
カ、カ、カ、カ、カ
「このまま、「ごっこ」だけで終わる?」
「いや、いつものやつ、いこう」
カキン!シュッ!カァン!シュルッ!カキン!
「ふんっ!」
「せあっ!」
バキ!
「……剣、折れちゃった…」
「あらら、カラス君にしては珍しいね」
仕方がないから今日はこれで終わり。
一休みしようと草原に2人で座る。
持ってきた水筒に口をつけ、ソラ君にも勧める。
「薬草茶の新しい配合を試してみたんだけど、飲んでみて感想を聞かせてくれる?」
「うん」
「そろそろ暑くなってくるから、清涼感を出すのにミントと、レモンの皮を乾燥させたのを混ぜたんだ。
そこに、甘草で少し甘みを足して…」
ソラ君が飲んでから感想をくれる。
「さっぱりしてて美味しい。でも運動の後に飲むなら、少し塩を足してみてもいいかも」
「塩か…。」
確かに、汗は塩っぱいから、体から塩が無くなっていくのは分かるな。
温泉を皆が入れる場所にするなら、こういうの置いても売れるかも…
「何か考えてる?」
「……うん、温泉をもっと皆が使えたらいいのになって思ってて。
ヤンマが窯を買ったでしょ?家族も今度遊びに来るっていうしさ。
もしかしたら、ここへ家族で住むことになるかもしれないでしょ?
だからここにお客さん来てくれるようなものがあればさ、パン屋とか食堂とかで生計立てられるでしょ?
あの家にヤンマの家族が住むことになったらギンたちの家も増えるかもしれないし、そうやって少しずつ町になってかないかなと思って」
「なるほどなぁ~。
先生がここらへんを別荘地にしようかと思ってるって言ってたし、それなら宿屋とか、お酒飲めるとことか、色々作って、皆が楽しめる場所にしたらいいかもね。
そうなったら、うちは温泉までの馬車とか貸馬なんかで稼ごうかな」
「いいね!
僕はね、ここを薬草茶のお店にしたいなって。
お茶なら気軽に楽しめて、薬草を身近に感じられるんじゃないかと思って。
…となると、薬学も学ばないといけないなーと思ってさ、今勉強してるとこなんだ」
そう言うと、ソラ君は、感心したように言う。
「カラス君は勉強熱心だなあ」
「知りたいことがたくさんあるだけだよ。
本を読むとね、色んなことが分かるんだ。
実際にやってみて、うまく行かないことも多いからさ、読んだだけじゃ駄目なんだろうけど、やっぱり本を読んでからでないと何からしたらいいか分からないもんね」
「そうだよね、北の平原でも1年目は苦労の連続だったもんねぇ。鳥に食われて種が全部やられたりさ」
ハハハ。
ぼくらはそのまま、地面に寝転がる。
すっかり疲れてしまったみたい。
少し眠い…
「でも…その経験が今…生きてるんだよね」
「ほんとだね!でもさ、薬学の実践って、どうするの?実際にやってみて、何かあったら困るよね?」
「そうだよね…飲み合わせってあるみたいで、間違うと大変だから…まずは自分で試すんだけどさ」
「カラス君に何かあったら困るよ!おれがやるからさ、何でも言ってよ」
「でもソラ君になにかあるとロウさんが心配するよ?」
「カラス君に何かあってもエースが心配するよ!
…ただでさえ何かあったら死んじゃうんじゃないかって、心配ばっかしてるのにさ」
この練習の前に随分釘を刺されたらしい。
…過保護だなあ。
「確かに…人間は…死ぬ…」
「そうだよ、だからさ…やめなよ、自分で試すの」
「でも…、そうか…だから…不死者が…必要…」
「そうだよ、学園なら先生もユーゴさんもいるから安心して試せるんだ」
「そか…けんぞく、に…なれば…じぶんで…」
「そうだよ、そうしなよ」
「うん…そのうち…ね…」
眠たい…
「眠いの?」
「うん…」
そっかあ、と言って、ソラ君が右腕に左腕をくっつけてきて、そこから温かいのが伝わって…
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「お前ら何しとるか!!」
わっ!
エースさん!?
「何で2人でそんなにくっついてるのさ!」
ロウさんも!?
「こうすると良く眠れるんだ、それだけだよ!」
なんで2人とも怒ってるの?
「まさか、クロエに右手があったときは、手を握り合って寝ていたんじゃなかろうな…」
そう言ってエースさんが凄むので、つい本当のことを言ってしまう。
「それは…まあ、そうですけど…」
何なら背中と背中をひっつけて寝るのが、小さい頃は普通だった。
寝台が狭いから2つを並べて2人で使ってたし、背中が温かいと良く寝られるから、生活の知恵みたいなもので。
そしたら、2人は、
「「許しません!」」
「友だちだからって!くっつき過ぎ!」
「そうじゃ、友だちだからといってそのような破廉恥なことをするでない!」
「…は?破廉恥、ですか?」
「そういうことを思うそっち側の問題でしょ!?」
色々抵抗してみたけれど、結局勝てなくて…怒る2人にお互い横抱きにされて、家に「持ち帰られる」ことになってしまった。
「次からは儂が見とるとこで稽古しろ」
「もう2人きりで会わせないからね」
「ロウ、ソラをちゃんと躾けておけよ」
「お前もな!」
あれ、これ、良くない気がする?
「ロウさん、ソラ君に酷い事しないで…」
「しねーよ、ちょっと啼かすだけだ」
そういうと、ロウさんはソラ君に口づけを…
「んー!」
うわっ、すご…あんな激しいの…
ソラ君もロウさんの首に抱きついて…って、
だめ!見ちゃだめだ!目を逸らさないと…って、エース、さん?ちょっと、やめ…
「ん、んん…!」
ぼくらは2人して、そこで濃厚な口づけをされるのを見せ合うことになってしまったのだった…
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