【完結】どれだけ永く生きてても

紫蘇

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王子様と皇太子殿下 7

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その夜の宴は、豪華だった。

猟犬はどこかから猪を獲ってきて処理を済ませると、それを全て窯に入れて焼き、「普通なら」まだ大きくならないはずの野菜も沢山盛り付けられた。

北の名物、ふわふわの蜂蜜パン。
バターをたっぷり使って作った焼菓子。

そして、学園の農学部が実習で造った各種の酒。

先生が乾杯の音頭をとる。

「えー、皆様、お日柄もよく、この度はお目出度いことが重なり…クロエ君、ソラ君、猟犬のみんな、トーリ王国に来て1周年、おめでとう…と…エースが、クロエ君を永遠のパー…伴侶として迎えられてめでたい、あと…この世界に魔法が生まれてめでたい、と、それから、ヤンマ君の家族がここへ移ってくることになってそれもめでたい、えー、それと、新しい家の柱が立ちましてそれもめでたいし、宿屋も設計図ができて…」

「先生、つまりどういうことじゃ」

「ちょうめでたい!乾杯!」

「「「「乾杯!」」」」

わいわいと盛り上がる一同。

特にクロエの周りには、宴の話をどこかから聞いて集まった北の猟犬たちが寄ってきて賑やかだ。

「殿下はやはり普通の方では御座いませんでしたか、我々、何とは無しに気付いておりましたが」
「殿下が種を蒔く前にしていたお祈り、あれはみんなで続けていきます!なんせご利益があることは確約されてますもんね!」
「ああ、そうか…。していたな、そんなことも。
 だったら、いくつか祈りの言葉があれば…祭りにできるし、皆も楽しみが増えるだろう」
「お願いします!」
「北の辺境で作物が育つのって、やっぱ奇跡なんすね。それって殿下のお力ってことですよね?」
「それは違う。
 自分も考えていた事だが、あれは皆の努力あってこその事…皆の気持ちが1つになっていたから、あそこまでの奇跡を起こせたんだ。
 一人ひとりの「力」は小さくても、集まれば大きな「力」になるだろう?だから、祈りを祭りにできないかと思ってな…楽しいことは人を繋ぐだろ?
 そうすれば「力」を集められる、奇跡を起こし続けられるんじゃないかと思うんだ。
 ……自分が1人でやるなら、小さな畑が精々だ。
 そういう事だから、これからも…頼むぞ」

「「「はい!」」」

和気藹々と話す北の猟犬と元領主。
クロエの見た目は少々変わったけれど、成長した姿の方が北の面々には驚きで…目の色や耳の形などどうでも良い事として片付けられていた。

北の辺境…
カラス連合共和国は、これからも安泰だろう。

一方。

「儂とクロエの宴なのに…」
「まあまあ、そう言うなって」
「そうっすよ、これから先いくらでも一緒にいるんだから、今日ぐらい譲ってあげましょ、それに…」

何かソラが言いかけたが、外から呼びかけられて中断される。

「おーいソラ!お前もこっちに来て飲もうぜ!」
「おいでよソラ!お酒美味しいよ!」
「はいはい」

ソラとロウを中心に、酒の品評会が始まり、それを猛烈に記録するスーの姿に、何故かそれを半裸で見つめるギー。手には赤い葡萄酒。

「しかし、相変わらずソラって、酒何杯飲んでも平気なのな」
「酔わねぇって、酒飲んでる理由の半分は無いようなもんじゃねぇの?」
「うん、でもお酒は美味しいからなぁ」

ギーがソラに話しかける。

「美味しいから飲むって、いいね!」
「そうすか?」
「俺はぁ、赤の葡萄酒がぁ、好きー。だからこれずっと飲んでるー。スーはねえ、白だよねー」
「こら、ギー。もう酔っているんじゃないのか?
 こんなところで肌を晒すなんて」
「ふふふ、スーが俺のこと「抱きたい」って思うまでここでこうしてるもーん」
「なんちゅう誘い方だ」「あいつやべえな」

ギーが裸になるのは、スーへのアピール。
裸でいられる所は人のいない所、つまり、

「外でするの、だーい好き!」

禁忌だからと悩んでいた青年は……もういない。

「……スー、行ってやれよ、あのままほっとくと全裸になっちゃいそう」

それはいけない、と、スーがギーの手を取ってどこかへ

「久しぶりにお酒飲むの、楽しいねぇ」
「先生はあんま強くないんだから飲みすぎないでよ…、おい、エース、暇なら飲み比べでもやるか」
「おっ、いいぞ、勝負じゃ!」

酒が減る速度が加速する。
エースもユーゴも酒には強い。
北の猟犬たちも勝負をアテに酒をあおる。
ソラとロウも遠巻きに見守る。

先生が、透明な酒を手にクロエに話しかける。

「でもさぁ~、眷属なんだからぁ、おさけ、飲んでも、へーいきってことにならないのはぁ、なーんでなのかなーあ、へーんなのー」
「先生、大丈夫ですか?」
「んあ、へーきへーき、眷属はねぇー、二日酔いとかー、しないからぁー」
「…なるほど、「毒になるほど飲めば」回復が行われる…ということかもしれませんね」
「そっかあ、でもさーあ、もー、けっこーのんだからぁー、どくにはなってるらー?」
「うーん…酒は何か…特殊なもの、なのか…
 飲んでいるお酒の種類などは関係しませんか?
 今先生がお飲みになっているのは…」
「これはぁ、ぼくのー、しゅーねんでぇ、つくったぁ、にほんしゅー、こめとーこうじでー、でーきたやーつだよー、こめからぁー、そだててぇー、くらもつくったー!
 くろえくーん、けんきゅーするう?」
「いえ…酒の事は遠慮します」
「そーお?
 じゃあー、だれかぁ、だーれかなぁー、そーだ。
 ゆーごぉー!おさけー、けんきゅーしてぇ」

ユーゴ、と呂律の回らない先生が呼ぶのを見て、

「やべえ、先生が酔ってる」
「おお…完全な酔っぱらいではないか」
「まーだのーむもーん」
「もう駄目だったら!
 先生も飲んだら脱ぐ癖が、ああもう!上着は着てねぇしシャツのボタンは3つも開いてるし…ベルト、先生、ベルトどこやったの!?」
「しーらなーい、おしっこーしたとーきにーなーくしたーとおもーうよぉー」
「あと、謎の歌も追加ですね」
「あーもう!ちょっと、ロウ、家貸せ」
「やだよ!」
「お前とソラだったら、朝まで飲んでても平気だろ?それに…新婚の家に泊まるわけにいかねーだろ」
「仕方ないなぁ…エッチなことは厳禁だからね」
「分かってるよ、やるときは外でする、誓う」

ここでも青姦宣言が出る。
無茶苦茶な宴である。

「…でも、楽しいですね」
「…そうじゃな」

ようやく、エースはクロエのそばに寄る。

「そういえば、酒は?」
「…飲んでません、弱いので…」
「そうか、しかしもう立派な美丈夫になったのじゃから…一杯くらい、付き合えるじゃろ?」
「……はい」

エースが1番弱い酒を持ってくる。
クロエに杯を渡し、ふたりきりで乾杯する。

カツン、と、杯と杯がぶつかる。

クロエは、おそるおそる、林檎の薫りがする酒を飲んでみる…一口、二口…

「…あまくて、おいしい…」
「そうじゃろ?」

そして、クロエはくたり、とエースに体を預ける。

「お?」

急に甘えてくる仕草に、全身から酒が抜けるほどの欲望が湧いて…たぎる。
そんなエースの気持ちを知ってか知らずか、

「…しあわせ」

クロエはそういって笑うと、

「!?」

すうすうと、安らかな顔で……



寝てしまった。

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