125 / 134
王子様と皇太子殿下 7
宴
しおりを挟む
その夜の宴は、豪華だった。
猟犬はどこかから猪を獲ってきて処理を済ませると、それを全て窯に入れて焼き、「普通なら」まだ大きくならないはずの野菜も沢山盛り付けられた。
北の名物、ふわふわの蜂蜜パン。
バターをたっぷり使って作った焼菓子。
そして、学園の農学部が実習で造った各種の酒。
先生が乾杯の音頭をとる。
「えー、皆様、お日柄もよく、この度はお目出度いことが重なり…クロエ君、ソラ君、猟犬のみんな、トーリ王国に来て1周年、おめでとう…と…エースが、クロエ君を永遠のパー…伴侶として迎えられてめでたい、あと…この世界に魔法が生まれてめでたい、と、それから、ヤンマ君の家族がここへ移ってくることになってそれもめでたい、えー、それと、新しい家の柱が立ちましてそれもめでたいし、宿屋も設計図ができて…」
「先生、つまりどういうことじゃ」
「ちょうめでたい!乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
わいわいと盛り上がる一同。
特にクロエの周りには、宴の話をどこかから聞いて集まった北の猟犬たちが寄ってきて賑やかだ。
「殿下はやはり普通の方では御座いませんでしたか、我々、何とは無しに気付いておりましたが」
「殿下が種を蒔く前にしていたお祈り、あれはみんなで続けていきます!なんせご利益があることは確約されてますもんね!」
「ああ、そうか…。していたな、そんなことも。
だったら、いくつか祈りの言葉があれば…祭りにできるし、皆も楽しみが増えるだろう」
「お願いします!」
「北の辺境で作物が育つのって、やっぱ奇跡なんすね。それって殿下のお力ってことですよね?」
「それは違う。
自分も考えていた事だが、あれは皆の努力あってこその事…皆の気持ちが1つになっていたから、あそこまでの奇跡を起こせたんだ。
一人ひとりの「力」は小さくても、集まれば大きな「力」になるだろう?だから、祈りを祭りにできないかと思ってな…楽しいことは人を繋ぐだろ?
そうすれば「力」を集められる、奇跡を起こし続けられるんじゃないかと思うんだ。
……自分が1人でやるなら、小さな畑が精々だ。
そういう事だから、これからも…頼むぞ」
「「「はい!」」」
和気藹々と話す北の猟犬と元領主。
クロエの見た目は少々変わったけれど、成長した姿の方が北の面々には驚きで…目の色や耳の形などどうでも良い事として片付けられていた。
北の辺境…
カラス連合共和国は、これからも安泰だろう。
一方。
「儂とクロエの宴なのに…」
「まあまあ、そう言うなって」
「そうっすよ、これから先いくらでも一緒にいるんだから、今日ぐらい譲ってあげましょ、それに…」
何かソラが言いかけたが、外から呼びかけられて中断される。
「おーいソラ!お前もこっちに来て飲もうぜ!」
「おいでよソラ!お酒美味しいよ!」
「はいはい」
ソラとロウを中心に、酒の品評会が始まり、それを猛烈に記録するスーの姿に、何故かそれを半裸で見つめるギー。手には赤い葡萄酒。
「しかし、相変わらずソラって、酒何杯飲んでも平気なのな」
「酔わねぇって、酒飲んでる理由の半分は無いようなもんじゃねぇの?」
「うん、でもお酒は美味しいからなぁ」
ギーがソラに話しかける。
「美味しいから飲むって、いいね!」
「そうすか?」
「俺はぁ、赤の葡萄酒がぁ、好きー。だからこれずっと飲んでるー。スーはねえ、白だよねー」
「こら、ギー。もう酔っているんじゃないのか?
こんなところで肌を晒すなんて」
「ふふふ、スーが俺のこと「抱きたい」って思うまでここでこうしてるもーん」
「なんちゅう誘い方だ」「あいつやべえな」
ギーが裸になるのは、スーへのアピール。
裸でいられる所は人のいない所、つまり、
「外でするの、だーい好き!」
禁忌だからと悩んでいた青年は……もういない。
「……スー、行ってやれよ、あのままほっとくと全裸になっちゃいそう」
それはいけない、と、スーがギーの手を取ってどこかへしけこんだ。
「久しぶりにお酒飲むの、楽しいねぇ」
「先生はあんま強くないんだから飲みすぎないでよ…、おい、エース、暇なら飲み比べでもやるか」
「おっ、いいぞ、勝負じゃ!」
酒が減る速度が加速する。
エースもユーゴも酒には強い。
北の猟犬たちも勝負をアテに酒をあおる。
ソラとロウも遠巻きに見守る。
先生が、透明な酒を手にクロエに話しかける。
「でもさぁ~、眷属なんだからぁ、おさけ、飲んでも、へーいきってことにならないのはぁ、なーんでなのかなーあ、へーんなのー」
「先生、大丈夫ですか?」
「んあ、へーきへーき、眷属はねぇー、二日酔いとかー、しないからぁー」
「…なるほど、「毒になるほど飲めば」回復が行われる…ということかもしれませんね」
「そっかあ、でもさーあ、もー、けっこーのんだからぁー、どくにはなってるらー?」
「うーん…酒は何か…特殊なもの、なのか…
飲んでいるお酒の種類などは関係しませんか?
今先生がお飲みになっているのは…」
「これはぁ、ぼくのー、しゅーねんでぇ、つくったぁ、にほんしゅー、こめとーこうじでー、でーきたやーつだよー、こめからぁー、そだててぇー、くらもつくったー!
くろえくーん、けんきゅーするう?」
「いえ…酒の事は遠慮します」
「そーお?
じゃあー、だれかぁ、だーれかなぁー、そーだ。
ゆーごぉー!おさけー、けんきゅーしてぇ」
ユーゴ、と呂律の回らない先生が呼ぶのを見て、
「やべえ、先生が酔ってる」
「おお…完全な酔っぱらいではないか」
「まーだのーむもーん」
「もう駄目だったら!
先生も飲んだら脱ぐ癖が、ああもう!上着は着てねぇしシャツのボタンは3つも開いてるし…ベルト、先生、ベルトどこやったの!?」
「しーらなーい、おしっこーしたとーきにーなーくしたーとおもーうよぉー」
「あと、謎の歌も追加ですね」
「あーもう!ちょっと、ロウ、家貸せ」
「やだよ!」
「お前とソラだったら、朝まで飲んでても平気だろ?それに…新婚の家に泊まるわけにいかねーだろ」
「仕方ないなぁ…エッチなことは厳禁だからね」
「分かってるよ、やるときは外でする、誓う」
ここでも青姦宣言が出る。
無茶苦茶な宴である。
「…でも、楽しいですね」
「…そうじゃな」
ようやく、エースはクロエのそばに寄る。
「そういえば、酒は?」
「…飲んでません、弱いので…」
「そうか、しかしもう立派な美丈夫になったのじゃから…一杯くらい、付き合えるじゃろ?」
「……はい」
エースが1番弱い酒を持ってくる。
クロエに杯を渡し、ふたりきりで乾杯する。
カツン、と、杯と杯がぶつかる。
クロエは、おそるおそる、林檎の薫りがする酒を飲んでみる…一口、二口…
「…あまくて、おいしい…」
「そうじゃろ?」
そして、クロエはくたり、とエースに体を預ける。
「お?」
急に甘えてくる仕草に、全身から酒が抜けるほどの欲望が湧いて…滾る。
そんなエースの気持ちを知ってか知らずか、
「…しあわせ」
クロエはそういって笑うと、
「!?」
すうすうと、安らかな顔で……
寝てしまった。
猟犬はどこかから猪を獲ってきて処理を済ませると、それを全て窯に入れて焼き、「普通なら」まだ大きくならないはずの野菜も沢山盛り付けられた。
北の名物、ふわふわの蜂蜜パン。
バターをたっぷり使って作った焼菓子。
そして、学園の農学部が実習で造った各種の酒。
先生が乾杯の音頭をとる。
「えー、皆様、お日柄もよく、この度はお目出度いことが重なり…クロエ君、ソラ君、猟犬のみんな、トーリ王国に来て1周年、おめでとう…と…エースが、クロエ君を永遠のパー…伴侶として迎えられてめでたい、あと…この世界に魔法が生まれてめでたい、と、それから、ヤンマ君の家族がここへ移ってくることになってそれもめでたい、えー、それと、新しい家の柱が立ちましてそれもめでたいし、宿屋も設計図ができて…」
「先生、つまりどういうことじゃ」
「ちょうめでたい!乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
わいわいと盛り上がる一同。
特にクロエの周りには、宴の話をどこかから聞いて集まった北の猟犬たちが寄ってきて賑やかだ。
「殿下はやはり普通の方では御座いませんでしたか、我々、何とは無しに気付いておりましたが」
「殿下が種を蒔く前にしていたお祈り、あれはみんなで続けていきます!なんせご利益があることは確約されてますもんね!」
「ああ、そうか…。していたな、そんなことも。
だったら、いくつか祈りの言葉があれば…祭りにできるし、皆も楽しみが増えるだろう」
「お願いします!」
「北の辺境で作物が育つのって、やっぱ奇跡なんすね。それって殿下のお力ってことですよね?」
「それは違う。
自分も考えていた事だが、あれは皆の努力あってこその事…皆の気持ちが1つになっていたから、あそこまでの奇跡を起こせたんだ。
一人ひとりの「力」は小さくても、集まれば大きな「力」になるだろう?だから、祈りを祭りにできないかと思ってな…楽しいことは人を繋ぐだろ?
そうすれば「力」を集められる、奇跡を起こし続けられるんじゃないかと思うんだ。
……自分が1人でやるなら、小さな畑が精々だ。
そういう事だから、これからも…頼むぞ」
「「「はい!」」」
和気藹々と話す北の猟犬と元領主。
クロエの見た目は少々変わったけれど、成長した姿の方が北の面々には驚きで…目の色や耳の形などどうでも良い事として片付けられていた。
北の辺境…
カラス連合共和国は、これからも安泰だろう。
一方。
「儂とクロエの宴なのに…」
「まあまあ、そう言うなって」
「そうっすよ、これから先いくらでも一緒にいるんだから、今日ぐらい譲ってあげましょ、それに…」
何かソラが言いかけたが、外から呼びかけられて中断される。
「おーいソラ!お前もこっちに来て飲もうぜ!」
「おいでよソラ!お酒美味しいよ!」
「はいはい」
ソラとロウを中心に、酒の品評会が始まり、それを猛烈に記録するスーの姿に、何故かそれを半裸で見つめるギー。手には赤い葡萄酒。
「しかし、相変わらずソラって、酒何杯飲んでも平気なのな」
「酔わねぇって、酒飲んでる理由の半分は無いようなもんじゃねぇの?」
「うん、でもお酒は美味しいからなぁ」
ギーがソラに話しかける。
「美味しいから飲むって、いいね!」
「そうすか?」
「俺はぁ、赤の葡萄酒がぁ、好きー。だからこれずっと飲んでるー。スーはねえ、白だよねー」
「こら、ギー。もう酔っているんじゃないのか?
こんなところで肌を晒すなんて」
「ふふふ、スーが俺のこと「抱きたい」って思うまでここでこうしてるもーん」
「なんちゅう誘い方だ」「あいつやべえな」
ギーが裸になるのは、スーへのアピール。
裸でいられる所は人のいない所、つまり、
「外でするの、だーい好き!」
禁忌だからと悩んでいた青年は……もういない。
「……スー、行ってやれよ、あのままほっとくと全裸になっちゃいそう」
それはいけない、と、スーがギーの手を取ってどこかへしけこんだ。
「久しぶりにお酒飲むの、楽しいねぇ」
「先生はあんま強くないんだから飲みすぎないでよ…、おい、エース、暇なら飲み比べでもやるか」
「おっ、いいぞ、勝負じゃ!」
酒が減る速度が加速する。
エースもユーゴも酒には強い。
北の猟犬たちも勝負をアテに酒をあおる。
ソラとロウも遠巻きに見守る。
先生が、透明な酒を手にクロエに話しかける。
「でもさぁ~、眷属なんだからぁ、おさけ、飲んでも、へーいきってことにならないのはぁ、なーんでなのかなーあ、へーんなのー」
「先生、大丈夫ですか?」
「んあ、へーきへーき、眷属はねぇー、二日酔いとかー、しないからぁー」
「…なるほど、「毒になるほど飲めば」回復が行われる…ということかもしれませんね」
「そっかあ、でもさーあ、もー、けっこーのんだからぁー、どくにはなってるらー?」
「うーん…酒は何か…特殊なもの、なのか…
飲んでいるお酒の種類などは関係しませんか?
今先生がお飲みになっているのは…」
「これはぁ、ぼくのー、しゅーねんでぇ、つくったぁ、にほんしゅー、こめとーこうじでー、でーきたやーつだよー、こめからぁー、そだててぇー、くらもつくったー!
くろえくーん、けんきゅーするう?」
「いえ…酒の事は遠慮します」
「そーお?
じゃあー、だれかぁ、だーれかなぁー、そーだ。
ゆーごぉー!おさけー、けんきゅーしてぇ」
ユーゴ、と呂律の回らない先生が呼ぶのを見て、
「やべえ、先生が酔ってる」
「おお…完全な酔っぱらいではないか」
「まーだのーむもーん」
「もう駄目だったら!
先生も飲んだら脱ぐ癖が、ああもう!上着は着てねぇしシャツのボタンは3つも開いてるし…ベルト、先生、ベルトどこやったの!?」
「しーらなーい、おしっこーしたとーきにーなーくしたーとおもーうよぉー」
「あと、謎の歌も追加ですね」
「あーもう!ちょっと、ロウ、家貸せ」
「やだよ!」
「お前とソラだったら、朝まで飲んでても平気だろ?それに…新婚の家に泊まるわけにいかねーだろ」
「仕方ないなぁ…エッチなことは厳禁だからね」
「分かってるよ、やるときは外でする、誓う」
ここでも青姦宣言が出る。
無茶苦茶な宴である。
「…でも、楽しいですね」
「…そうじゃな」
ようやく、エースはクロエのそばに寄る。
「そういえば、酒は?」
「…飲んでません、弱いので…」
「そうか、しかしもう立派な美丈夫になったのじゃから…一杯くらい、付き合えるじゃろ?」
「……はい」
エースが1番弱い酒を持ってくる。
クロエに杯を渡し、ふたりきりで乾杯する。
カツン、と、杯と杯がぶつかる。
クロエは、おそるおそる、林檎の薫りがする酒を飲んでみる…一口、二口…
「…あまくて、おいしい…」
「そうじゃろ?」
そして、クロエはくたり、とエースに体を預ける。
「お?」
急に甘えてくる仕草に、全身から酒が抜けるほどの欲望が湧いて…滾る。
そんなエースの気持ちを知ってか知らずか、
「…しあわせ」
クロエはそういって笑うと、
「!?」
すうすうと、安らかな顔で……
寝てしまった。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話
さんかく
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話
基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想
からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定
(pixivにて同じ設定のちょっと違う話を公開中です「不憫受けがとことん愛される話」)
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください
東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。
突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。
貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。
お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。
やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。
ただの雑兵が、年上武士に溺愛された結果。
みどりのおおかみ
BL
「強情だな」
忠頼はぽつりと呟く。
「ならば、体に証を残す。どうしても嫌なら、自分の力で、逃げてみろ」
滅茶苦茶なことを言われているはずなのに、俺はぼんやりした頭で、全然別のことを思っていた。
――俺は、この声が、嫌いじゃねえ。
*******
雑兵の弥次郎は、なぜか急に、有力武士である、忠頼の寝所に呼ばれる。嫌々寝所に行く弥次郎だったが、なぜか忠頼は弥次郎を抱こうとはしなくて――。
やんちゃ系雑兵・弥次郎17歳と、不愛想&無口だがハイスぺ武士の忠頼28歳。
身分差を越えて、二人は惹かれ合う。
けれど二人は、どうしても避けられない、戦乱の濁流の中に、追い込まれていく。
※南北朝時代の話をベースにした、和風世界が舞台です。
※pixivに、作品のキャライラストを置いています。宜しければそちらもご覧ください。
https://www.pixiv.net/users/4499660
【キャラクター紹介】
●弥次郎
「戦場では武士も雑兵も、命の価値は皆平等なんじゃ、なかったのかよ? なんで命令一つで、寝所に連れてこられなきゃならねえんだ! 他人に思うようにされるくらいなら、死ぬほうがましだ!」
・十八歳。
・忠頼と共に、南波軍の雑兵として、既存権力に反旗を翻す。
・吊り目。髪も目も焦げ茶に近い。目鼻立ちははっきりしている。
・細身だが、すばしこい。槍を武器にしている。
・はねっかえりだが、本質は割と素直。
●忠頼
忠頼は、俺の耳元に、そっと唇を寄せる。
「お前がいなくなったら、どこまででも、捜しに行く」
地獄へでもな、と囁く声に、俺の全身が、ぞくりと震えた。
・二十八歳。
・父や祖父の代から、南波とは村ぐるみで深いかかわりがあったため、南波とともに戦うことを承諾。
・弓の名手。才能より、弛まぬ鍛錬によるところが大きい。
・感情の起伏が少なく、あまり笑わない。
・派手な顔立ちではないが、端正な配置の塩顔。
●南波
・弥次郎たちの頭。帝を戴き、帝を排除しようとする武士を退けさせ、帝の地位と安全を守ることを目指す。策士で、かつ人格者。
●源太
・医療兵として南波軍に従軍。弥次郎が、一番信頼する友。
●五郎兵衛
・雑兵。弥次郎の仲間。体が大きく、力も強い。
●孝太郎
・雑兵。弥次郎の仲間。頭がいい。
●庄吉
・雑兵。弥次郎の仲間。色白で、小さい。物腰が柔らかい。
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる