家政婦 遠野静子の憂鬱 ~ 花言葉の二重の秘密(長田家シリーズ①)

家政婦静子と令嬢恭子の視点で
恭子の継母、実母との家族の形、亡き父、実母の夫婦の形を描きます。

◇印で視点が変わります。


 大富豪長田家の家政婦の採用試験で合格した遠野静子は一人娘の長田恭子の専属の家庭教師も兼任することとなった。

 恭子は幼い頃、両親の離婚で母と離れ離れとなり、その後、父も他界し、今では家に寄りつかない継母との二人暮しをしている。けれど、恭子は寂しさを微塵も出さない強い女の子だ。

 そして恭子を優しく見守る家政婦の静子は少し慌てんぼさんだ。

 大きな邸宅での意地悪な継母とのやり取り、授業参観でのおかしな道徳教育、うっかり買ってしまった漫画の雑誌、町の人々との交流、ピアノコンクールなどを通して静子と恭子の間に心の絆が構築されていく。

 家政婦の静子は亡くなった長田家の当主ヒルトマンと離婚した妻とのこと調べるうちにおかしなことに気づく。

 それはヒルトマンはかつて元妻を桜の花に例えていたことがあり、彼女を迎えるように邸宅の庭の小道に桜の木々が植えられていることだ。

 更に邸宅を東京から神戸に移したその場所の近くには元妻の実家があること。

 邸宅の中には元妻の部屋があり、家財、衣服、書籍が全て残されていることなど。

 恭子の亡くなった父ヒルトマンは前妻の家の近くに家を建て、妻が戻ってくることを願って待っていたのではないだろうか? と考えるようになった。

 それは花言葉の桜の花が意味するものの一つが「あなたを待つ」だからだ。

 フィッツジェラルドの小説「華麗なるギャツビー」とヒルトマンが折り重なりながら物語は進み、

 ある事件がきっかけで静子は前妻の家には藤棚が植えられていることを知る。

 藤の花言葉・・「あなたを歓迎する」

 桜の「あなたを待つ」藤の「あなたを歓迎する」

 まるで離婚した夫婦が再び結ばれることを望んでいるみたいではないか? 

 と静子は考える。

 恭子のピアノコンクールの招待券を携え前妻の邸宅を訪れた静子は藤の花言葉の本当の意味を知ることになる。

 藤の花言葉には反対、真逆の意味があった。

 花言葉の本当の意味が明かされる時、恭子と実の母親との真の決別の時が訪れる。


  【シリーズ小説の時系列】

春       「遠野静子の憂鬱」
    ↓      ↓            
夏「水を守る」                
    ↓
秋「水の行方」
    ↓        ↓
冬「水をすくう」 「長田多香子の憂鬱」
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