銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 僕は勢いよく立ち上がった。
 軍服だって?誰だ?トラビスか?いや、トラビスはその頃、使者としてバイロン国に向かっていたはずだ。では誰だ?ラズールは今は調査のために軍服を着ているが、基本は着ていない。それに姉上が存命中は、ずっと姉上の傍にいたので王城から出られない。じゃあ一体誰が…!

「落ち着いて…。大丈夫、俺が誰かを突き止めます。俺に任せて。あなたは安心して俺の傍にいればいい…」

 ラズールが僕に顔を寄せ、優しく囁く。
 ラズールの大きな手で背中を撫でられて、だんだんと僕の乱れた気持ちが落ち着いてくる。
 僕はストールを外した。隠れていた口があらわになり、息がしやすくなって指先の震えも止まった。

「君は…」

 村長の声に、僕は村長と目を合わせた。

「はい」
「女の子…なのか?いや、でも声が…」
「ふふっ、僕は男ですよ。これから鍛えて、この人みたいに大きくなる予定です」
「そうかそうか、これは失礼なことを言った」
「大丈夫ですよ」

「あなたはそのままでいい」と不満げに呟きながら、ラズールが僕の肩を軽く押す。
 僕は再び椅子に座って、村長に聞いた。

「村長、その軍服の男はどのくらいの身長で何歳くらいだったかわかりますか?」

 村長が小さく首をふる。

「その夜は曇りで辺りは暗く、怪しい男達も軍服の男も灯りを持っていなかった。雲間から一瞬現れた月の光で軍服を着ていることだけがわかったそうじゃ。歳や髪色、顔はわからぬが…声は若く、小柄な男だと話していたぞ」
「小柄な男か」

 ラズールがポツリと呟く。
 軍に所属する騎士のことは、僕よりもラズールの方が詳しい。もっと言えば、トラビスが一番詳しい。
 王城に戻ったらトラビスに協力してもらおうと、僕は手を固く握りしめる。

「さて村長、夜になるまで俺達はここにいます。暗くなってから採掘場を調べさせてもらいます」
「君達だけでか?君達も石を盗んだりは…」
「しません。石などに興味はない。俺達は盗難の真相を知りたいだけです」
「…そうか。家族に危害を加えぬなら…」
「加えませんよ。あなたは話してくださいましたからね。ただ…余計な動きが見られれば、容赦はしません」
「…わかっておる」

 ラズールと村長のやり取りを、僕は上の空で聞いていた。
 先ほどの話が衝撃だったからだ。
 軍服の男が絡んでいるなら、犯人はイヴァル帝国の者じゃないか。なぜ?どうして?その者はどうやって母上の目をかいくぐったの?何が起きてる?
 ラズールが任せろと言ったけど、とてもジッとなんてしてられない。ここの調査を終えて、早く王城に戻らなければ!

 
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