銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「疲れましたか?少し顔色が悪いです」
「うん…緊張してたのかも」
「俺は食料をもらって来ますので、ここで休んで待っていてください。トラビス殿、頼む」
「承知した」

 ゼノが少しだけ心配そうにして、皆が集まっている場所に行く。
 宿を出てから半日進んだ。そして馬を休ませるために、広大な森の中で今、休息をしている。
 僕とゼノ、トラビスは、皆が休んでいる場所から離れた所にいた。僕の正体がバレては困るから、なるべく人と接触しないようにゼノが気を使ってくれているのだ。
 ゼノが離れてすぐに、トラビスが自身のマントを外して地面に敷き僕を見る。

「フィル様、こちらへ」
「なにしてるの」
「そのまま座れば汚れてしまいますので、こちらへどうぞ」
「トラビス…僕は今、捕らわれたバイロン兵なんだ。ゼノの捕虜だよ。おまえがそんな態度を取ってたら怪しまれるじゃないか」
「ですがあなたを地面に直接座らせるなんてできません」
「よく言うよ…。僕のことを捕虜らしく扱ってくれないと」
「しかし」
「トラビスだって怪しまれてるんだよ?気をつけて。とりあえずそこにはトラビスが座って。僕はゼノが戻って来るまで立ってるから」

 トラビスはしばらくポツンと立っていたが、地面に敷いたマントを拾うと、草や土を叩いて払い腕にかけた。
 僕は小さくため息をつく。トラビスの態度で僕の正体が怪しまれるのも時間の問題かもしれない。もしかするともう怪しまれてるかもしれない。この場所に着くまでも、ここに着いてからも、ジルという騎士が頻繁に僕を見てくる。ジルだけではない。あと二人…確かユフィとテラという名だったか。ゼノから名を聞いた。彼らも僕が気になるらしく、チラチラと見てくる。そしてさすがというべきか。上に立つ者として当たり前というべきか。刺さるような視線を感じて目を向けると、リアムまでもが僕を見ていた。
 ゼノが「リアム様は王城に育ったため、叔父君の配下の騎士の顔を全ては把握しておりません。だからトラビス殿のことはバレませんよ」と話していたけど、本当に?リアムはトラビスのことも不審に思ってるんじゃないかと不安だ。

 そんなことを考え込んでいたから、ついリアムに目を向けてしまった。
 リアムもこちらを見ていたらしく、目が合ってしまった。
 ここで不自然に逸らせては、ますます怪しまれてしまう。僕はリアムと目を合わせたまま、早くゼノが戻って来るように願う。
 僕とリアムは、しばらく動かずに見つめ合った。そして先に痺れを切らしたのはリアムだった。周りを囲む騎士達の間をぬって、こちらへ向かってくる。
 僕は焦った。だけど今はゼノの捕虜である僕は、勝手に逃げ出せない。逃げたら後ろから斬られてしまう恐れがある。
 トラビスは反対側を警戒していて、近づいてくるリアムに気づかない。
 そしてついに、リアムが僕の目の前に来た。
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