銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 扉の外からリアムの声がする。

「ゼノ、早く開けろ」
「今すぐに」

 ゼノが扉を開けると、リアムがまっすぐに僕の前に来る。
 僕は立ち上がり「クルト王子は?」と尋ねた。

「兄上は部屋で休んでいる。フィル、俺の部屋に来い。今夜は俺の部屋で休め」
「…え?でも、いいのですか?」
「構わん。俺が傍にいてほしいんだ。トラビス、いいか?」
「俺は反対する立場にありませんので」

 明らかに不服そうな顔で、トラビスが言う。
 ラズールなら絶対に反対しそうだけど、トラビスはラズールより甘いと思う。
「そうか、悪いな」と笑って、リアムが僕の手を掴む。
 僕はリアムに手を引かれて、ゼノの部屋から意外と近くにあるリアムの部屋に入った。
 部屋に入り扉が閉まるより早く、リアムが僕を抱きしめる。僕の肩に顔を埋めて深呼吸を繰り返している。

「あの…あまり匂わないで。身体を洗えてないし…」
「大丈夫だ。とても甘くいい香りがする」
「そんなことない…。あ、この部屋すごく広いね」
「まあな。俺は王子だから」
「クルト王子の部屋はどこに?」
「この上の階だ。なに?気になるのか?」

 話をそらしながらリアムの肩を押して離れたのに、すぐに身体を密着されてしまう。
 リアムに触れて嬉しいのだけど、髪を染めているから変な匂いがすると思う。だから離れようとしているのに、リアムが許してくれない。
 僕は諦めて、リアムの胸に額をつけた。

「気になるよ…。だって明らかに僕は不審者でしょ?捕虜だってわかったら、問答無用で斬られそう」
「そんなこと、させるものか」
「リアムが守ってくれるの?」
「もちろん。おまえに指一本触れさせない」
「ふふっ、ありがとう」

 リアムを見上げて笑うと、軽くキスをされた。
 もっとしてほしいと欲が出て、リアムを見つめる。
 リアムは美しい紫の瞳を細めて、僕の唇を塞ぐ。
 ああ、リアムの味だ。僕を蕩けさせるリアムのキスだ。
 伸ばした舌を絡め取られて吸われる。キスをしながらリアムの手が僕の耳をくすぐり、腰の奥が震えてしまう。
 チュッと音を鳴らしてリアムの顔が離れ、今度は僕の首に唇が触れた。
 その瞬間、反射的に僕はリアムの胸を強く押した。

「どうした?」
「あ…ごめっ…なさ」
「大丈夫だ。もうしない。だから落ち着け」

 リアムが優しく抱きしめてくる。
 僕は震えていた。だって僕の首には呪われた痣がある。今のリアムはそのことを知らない。知られたくない。だからリアムを拒絶するような態度を取ってしまった。
 悪いことをしてしまったと悲しくなって、僕は涙を流した。
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