そして、スパイは無職になった
辺境の地に立つ巨大な塔、それこそが魔法『大国』アスラディアだ。国土が塔のみという超小国でありながら『大国』を自認することができるほど、アスラディアは大国に強い影響力を持っていた。その表向きの理由は全ての魔法石がアスラディアで作られていることであったが、裏の理由としては『すべての魔法石がアスラディア以外では作られないこと』である。つまり、『魔法石の作り方』、そして、それを守り続けている組織『闇の魔』こそがアスラディアを大国足らしめている理由である。
『闇の魔』はアスラディアの有する公然の秘密、つまりはスパイ集団である。たぐいまれなる魔法石を操る能力の高さ、構成員の完璧な連携、そして敵に対する容赦のなさ――魔法石の作り方を守るためにすべての裏仕事を受け持つ彼らがいる限りアスラディアは難攻不落、決して落ちることはない――それが彼らの強さであり、誇りだった。彼らは閉鎖的なアスラディアを守るために命を削って働いていた。
しかし、アスラディア新国王は即位と同時に君主制廃止を宣言、そして魔法石の作り方を他国に公開し、対等な貿易の開始を宣言した! その結果、守るものが最早ない『闇の魔』はリストラされるどころか、容赦なく国外追放を言い渡されてしまう。
こうして『黒の魔』の長であるルイ・スタンレー・フォードは自身だけでなく、部下であるラウラとイライザにも就職先を斡旋しなければならなくなった。しかしメンバー全員、表に出せる経歴がない。つまり出せるものは、生まれた時からずーっと無職のまっさらな経歴書のみ!
「我々はそれでも生涯雇用を目指す」
リストラされた最強スパイ達によるセカンドライフ冒険活劇、ここに開幕。
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