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第四章 世界との関わり

第51話 王はいつの間にか、邪知暴虐の王へ その3

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「何だあれは?」
 討伐軍を率いてきた王。エサイアス=アルホ=ミッドグランドは、目の前に立ちはだかる壁を見て驚く。

 幾度かの撤退を受け、設備については聞いていた。
 話の流れで、当然設備を作る金はどこからという事になる。
 誰かが言う。
「王に対する謀反を企て、国に黙って金を集め。準備をしていたのでしょう。もはや逆賊。討伐いたしましょう」
「うむ。そうだな。どのくらいの金が、私的に流用されたか不明だが、きっちり償わせよう」

 当然。ウーベル=ナーレ辺境伯がため込んでいると、勝手に予測された財産を目当てとして、賛同者達はいくらでも王の下へ集まってくる。

 その為、兵士は三万を数える。
 王国の、実に八割の貴族が参加。

 文字通り、ミッドグランド王国対辺境伯プラスちょっとだけ、神の軍団若干名。


「来ましたぁ」
「ああ見ている。さすがにすごいな」
 門の城壁の上で、ビーチパラソルを立て、ベッドに寝転がりながらモニターを見ているメンバー達。

「なんだか、アリのようね」
「なんだか匂いそう」
 無慈悲な好実と美葉の会話。

「そりゃ、遠征してきたから、仕方が無いだろう」
 城壁の上は、日光浴の場となり。そこから、指令が伝えられるようになっている。

「とりあえず、罪状の朗読と辺境伯への投降命令。その後、実力行使かな?」
「概ね、その流れで進むと思います」
 辺境伯は、すでに開き直っている。いざとなればうちが力を貸すから、独立でもするかい? と軽く言ったら、すごい勢いで頷いた。

 まあ非常識さは、今更だから、防御を兼ね備えた街道建設など、間者が追いつけないうちに終わってしまったし。まあ、今更なんだろう。

「そう言っていると、使者が来たようだ」
 多くの兵の中から、馬が一頭出てきた。

 多分取り出したのは、封印王状だろうが、読み上げるようだ。
「王からの命を伝える。ウーベル=ナーレ辺境伯においては、不当に金銭を稼ぎ。それを王に伝えることなく自国の守備へ回し、その力を持って王国の転覆を狙う逆賊である。おとなしく投降し、王への忠誠を示せ。以上だ。開門をしないとお前達の家族も縛り首だ。さっさと開けることだ」
 ついでに門番まで、おどしていった。

「回答をしよう」
 空に、ウーベル=ナーレ辺境伯の姿が映し出される。

 さすがにビーチベッドではなく。
 優雅に、テーブルへ着き、望や精霊達と卓を囲んでいる。

 その姿に、どよめきが広がっていく。当然国王軍の方だ。
 意外と遠征は辛かったらしく、テーブルの上にならぶ見たことのないフルーツやワイン。見たことはないが、美味そうな菓子に目が向かう。
 当然怒りとともに。やっぱり、ため込んでやがる。そう理解する。

「王は、その課せられた業務を放棄し、民のためではなく、自身と王妃のためだけに政策を執り行い。土地を奪い、領民を奴隷化して私腹を肥やしてきた。その事は、神の国リギュウムディへと逃れてきた民から、聞き及んでいる。他にも、領民の娘や妻をつまみ食いしては、むごくも殺したな。その恨みを何とかしてくれとの訴えは多い。此処におられる方は、リギュウムディ王国の王。山川 望様だ。そばのお方達は四精霊。その相談を受け。どうするか思案をしていたところへ、私が持つ財産を目当てにそれを強奪しようと目論んだな。どのように理屈を付けようとも、やっていることは、王という身分を振り回すだけのならず者。何か反論はあるかな? 王エサイアス=アルホ=ミッドグランド殿」
 このやり取りは、王国全土に放送されている。

「そこに。正義は本当にあるのか?」
 何かのコマーシャルの様な言葉が、念押しされる。

 王は、今の話を聞いて少し困っていた。
 さすがの王でも、リギュウムディ王国のことは知っている。

 そもそも、今回の発端は、自分に向いた言いがかりの矛先をウーベル=ナーレ辺境伯へとむけ、何なら罪もかぶって貰おうというつまらないことが始まり。

 そして、リギュウムディ王国の脇に控えていたのは、角は控えめだが、どう見たって魔族。

 そして、それは横にいる宰相セヴェリエ=エロヤッバイも見ていた。
 王の影に隠れて、領民達のつまみ食い。主犯はこいつ。

 王のせいになっているのは、ありがたいが、そんな小さな事までご存じとは。さすがに神の国の王。どういたしましょうかね。心の中で思案をする。

「王よ。相手は、おとなしく下る気は無い様子。攻撃命令を」
「おおう。そうだな。攻撃せよ」
 王からの命令が、伝令へと伝えられる。

「ではこれより、逆賊ウーベル=ナーレ辺境伯を捕らえるため進軍と攻撃を開始」
「「「おおう!!」」」

 バラバラと、まとまりのないかけ声とともに、破城槌が用意される。
「いけえ」
 かけ声とともに、弓隊から矢が放たれ、それと同時に破城槌が押し出される。


 空に浮かべられたスクリーンからも、静に攻撃命令が指示される。
 スクリーンに映された場面が戦場へと切り替わる。

 動き出した破城槌。
 それに向かい、一本の光が放たれる。
 それがあたると、音もなく燃え上がる。

 そしてよく見れば、矢は放たれた後、味方へ向かって降り注ぐ。
 むろん、風の魔法により、すべて押し返されている。
「撃ち方やめえ」
 弓隊の隊長は、手が詰まり困ってしまう。

「矢が駄目なら、これはどうだ」
 槍隊の隊長が前に出て壁に向かい投げる。
 当然吹き戻される。

「うわったぁ」
 何とか、自分の槍を躱す。

「これは困ったな」
 こうして、戦いは、静に始まった。
 その間にも、風の精霊である、彩のいたずらは開始される。
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