51 / 118
第四章 世界との関わり
第51話 王はいつの間にか、邪知暴虐の王へ その3
しおりを挟む
「何だあれは?」
討伐軍を率いてきた王。エサイアス=アルホ=ミッドグランドは、目の前に立ちはだかる壁を見て驚く。
幾度かの撤退を受け、設備については聞いていた。
話の流れで、当然設備を作る金はどこからという事になる。
誰かが言う。
「王に対する謀反を企て、国に黙って金を集め。準備をしていたのでしょう。もはや逆賊。討伐いたしましょう」
「うむ。そうだな。どのくらいの金が、私的に流用されたか不明だが、きっちり償わせよう」
当然。ウーベル=ナーレ辺境伯がため込んでいると、勝手に予測された財産を目当てとして、賛同者達はいくらでも王の下へ集まってくる。
その為、兵士は三万を数える。
王国の、実に八割の貴族が参加。
文字通り、ミッドグランド王国対辺境伯プラスちょっとだけ、神の軍団若干名。
「来ましたぁ」
「ああ見ている。さすがにすごいな」
門の城壁の上で、ビーチパラソルを立て、ベッドに寝転がりながらモニターを見ているメンバー達。
「なんだか、アリのようね」
「なんだか匂いそう」
無慈悲な好実と美葉の会話。
「そりゃ、遠征してきたから、仕方が無いだろう」
城壁の上は、日光浴の場となり。そこから、指令が伝えられるようになっている。
「とりあえず、罪状の朗読と辺境伯への投降命令。その後、実力行使かな?」
「概ね、その流れで進むと思います」
辺境伯は、すでに開き直っている。いざとなればうちが力を貸すから、独立でもするかい? と軽く言ったら、すごい勢いで頷いた。
まあ非常識さは、今更だから、防御を兼ね備えた街道建設など、間者が追いつけないうちに終わってしまったし。まあ、今更なんだろう。
「そう言っていると、使者が来たようだ」
多くの兵の中から、馬が一頭出てきた。
多分取り出したのは、封印王状だろうが、読み上げるようだ。
「王からの命を伝える。ウーベル=ナーレ辺境伯においては、不当に金銭を稼ぎ。それを王に伝えることなく自国の守備へ回し、その力を持って王国の転覆を狙う逆賊である。おとなしく投降し、王への忠誠を示せ。以上だ。開門をしないとお前達の家族も縛り首だ。さっさと開けることだ」
ついでに門番まで、おどしていった。
「回答をしよう」
空に、ウーベル=ナーレ辺境伯の姿が映し出される。
さすがにビーチベッドではなく。
優雅に、テーブルへ着き、望や精霊達と卓を囲んでいる。
その姿に、どよめきが広がっていく。当然国王軍の方だ。
意外と遠征は辛かったらしく、テーブルの上にならぶ見たことのないフルーツやワイン。見たことはないが、美味そうな菓子に目が向かう。
当然怒りとともに。やっぱり、ため込んでやがる。そう理解する。
「王は、その課せられた業務を放棄し、民のためではなく、自身と王妃のためだけに政策を執り行い。土地を奪い、領民を奴隷化して私腹を肥やしてきた。その事は、神の国リギュウムディへと逃れてきた民から、聞き及んでいる。他にも、領民の娘や妻をつまみ食いしては、むごくも殺したな。その恨みを何とかしてくれとの訴えは多い。此処におられる方は、リギュウムディ王国の王。山川 望様だ。そばのお方達は四精霊。その相談を受け。どうするか思案をしていたところへ、私が持つ財産を目当てにそれを強奪しようと目論んだな。どのように理屈を付けようとも、やっていることは、王という身分を振り回すだけのならず者。何か反論はあるかな? 王エサイアス=アルホ=ミッドグランド殿」
このやり取りは、王国全土に放送されている。
「そこに。正義は本当にあるのか?」
何かのコマーシャルの様な言葉が、念押しされる。
王は、今の話を聞いて少し困っていた。
さすがの王でも、リギュウムディ王国のことは知っている。
そもそも、今回の発端は、自分に向いた言いがかりの矛先をウーベル=ナーレ辺境伯へとむけ、何なら罪もかぶって貰おうというつまらないことが始まり。
そして、リギュウムディ王国の脇に控えていたのは、角は控えめだが、どう見たって魔族。
そして、それは横にいる宰相セヴェリエ=エロヤッバイも見ていた。
王の影に隠れて、領民達のつまみ食い。主犯はこいつ。
王のせいになっているのは、ありがたいが、そんな小さな事までご存じとは。さすがに神の国の王。どういたしましょうかね。心の中で思案をする。
「王よ。相手は、おとなしく下る気は無い様子。攻撃命令を」
「おおう。そうだな。攻撃せよ」
王からの命令が、伝令へと伝えられる。
「ではこれより、逆賊ウーベル=ナーレ辺境伯を捕らえるため進軍と攻撃を開始」
「「「おおう!!」」」
バラバラと、まとまりのないかけ声とともに、破城槌が用意される。
「いけえ」
かけ声とともに、弓隊から矢が放たれ、それと同時に破城槌が押し出される。
空に浮かべられたスクリーンからも、静に攻撃命令が指示される。
スクリーンに映された場面が戦場へと切り替わる。
動き出した破城槌。
それに向かい、一本の光が放たれる。
それがあたると、音もなく燃え上がる。
そしてよく見れば、矢は放たれた後、味方へ向かって降り注ぐ。
むろん、風の魔法により、すべて押し返されている。
「撃ち方やめえ」
弓隊の隊長は、手が詰まり困ってしまう。
「矢が駄目なら、これはどうだ」
槍隊の隊長が前に出て壁に向かい投げる。
当然吹き戻される。
「うわったぁ」
何とか、自分の槍を躱す。
「これは困ったな」
こうして、戦いは、静に始まった。
その間にも、風の精霊である、彩のいたずらは開始される。
討伐軍を率いてきた王。エサイアス=アルホ=ミッドグランドは、目の前に立ちはだかる壁を見て驚く。
幾度かの撤退を受け、設備については聞いていた。
話の流れで、当然設備を作る金はどこからという事になる。
誰かが言う。
「王に対する謀反を企て、国に黙って金を集め。準備をしていたのでしょう。もはや逆賊。討伐いたしましょう」
「うむ。そうだな。どのくらいの金が、私的に流用されたか不明だが、きっちり償わせよう」
当然。ウーベル=ナーレ辺境伯がため込んでいると、勝手に予測された財産を目当てとして、賛同者達はいくらでも王の下へ集まってくる。
その為、兵士は三万を数える。
王国の、実に八割の貴族が参加。
文字通り、ミッドグランド王国対辺境伯プラスちょっとだけ、神の軍団若干名。
「来ましたぁ」
「ああ見ている。さすがにすごいな」
門の城壁の上で、ビーチパラソルを立て、ベッドに寝転がりながらモニターを見ているメンバー達。
「なんだか、アリのようね」
「なんだか匂いそう」
無慈悲な好実と美葉の会話。
「そりゃ、遠征してきたから、仕方が無いだろう」
城壁の上は、日光浴の場となり。そこから、指令が伝えられるようになっている。
「とりあえず、罪状の朗読と辺境伯への投降命令。その後、実力行使かな?」
「概ね、その流れで進むと思います」
辺境伯は、すでに開き直っている。いざとなればうちが力を貸すから、独立でもするかい? と軽く言ったら、すごい勢いで頷いた。
まあ非常識さは、今更だから、防御を兼ね備えた街道建設など、間者が追いつけないうちに終わってしまったし。まあ、今更なんだろう。
「そう言っていると、使者が来たようだ」
多くの兵の中から、馬が一頭出てきた。
多分取り出したのは、封印王状だろうが、読み上げるようだ。
「王からの命を伝える。ウーベル=ナーレ辺境伯においては、不当に金銭を稼ぎ。それを王に伝えることなく自国の守備へ回し、その力を持って王国の転覆を狙う逆賊である。おとなしく投降し、王への忠誠を示せ。以上だ。開門をしないとお前達の家族も縛り首だ。さっさと開けることだ」
ついでに門番まで、おどしていった。
「回答をしよう」
空に、ウーベル=ナーレ辺境伯の姿が映し出される。
さすがにビーチベッドではなく。
優雅に、テーブルへ着き、望や精霊達と卓を囲んでいる。
その姿に、どよめきが広がっていく。当然国王軍の方だ。
意外と遠征は辛かったらしく、テーブルの上にならぶ見たことのないフルーツやワイン。見たことはないが、美味そうな菓子に目が向かう。
当然怒りとともに。やっぱり、ため込んでやがる。そう理解する。
「王は、その課せられた業務を放棄し、民のためではなく、自身と王妃のためだけに政策を執り行い。土地を奪い、領民を奴隷化して私腹を肥やしてきた。その事は、神の国リギュウムディへと逃れてきた民から、聞き及んでいる。他にも、領民の娘や妻をつまみ食いしては、むごくも殺したな。その恨みを何とかしてくれとの訴えは多い。此処におられる方は、リギュウムディ王国の王。山川 望様だ。そばのお方達は四精霊。その相談を受け。どうするか思案をしていたところへ、私が持つ財産を目当てにそれを強奪しようと目論んだな。どのように理屈を付けようとも、やっていることは、王という身分を振り回すだけのならず者。何か反論はあるかな? 王エサイアス=アルホ=ミッドグランド殿」
このやり取りは、王国全土に放送されている。
「そこに。正義は本当にあるのか?」
何かのコマーシャルの様な言葉が、念押しされる。
王は、今の話を聞いて少し困っていた。
さすがの王でも、リギュウムディ王国のことは知っている。
そもそも、今回の発端は、自分に向いた言いがかりの矛先をウーベル=ナーレ辺境伯へとむけ、何なら罪もかぶって貰おうというつまらないことが始まり。
そして、リギュウムディ王国の脇に控えていたのは、角は控えめだが、どう見たって魔族。
そして、それは横にいる宰相セヴェリエ=エロヤッバイも見ていた。
王の影に隠れて、領民達のつまみ食い。主犯はこいつ。
王のせいになっているのは、ありがたいが、そんな小さな事までご存じとは。さすがに神の国の王。どういたしましょうかね。心の中で思案をする。
「王よ。相手は、おとなしく下る気は無い様子。攻撃命令を」
「おおう。そうだな。攻撃せよ」
王からの命令が、伝令へと伝えられる。
「ではこれより、逆賊ウーベル=ナーレ辺境伯を捕らえるため進軍と攻撃を開始」
「「「おおう!!」」」
バラバラと、まとまりのないかけ声とともに、破城槌が用意される。
「いけえ」
かけ声とともに、弓隊から矢が放たれ、それと同時に破城槌が押し出される。
空に浮かべられたスクリーンからも、静に攻撃命令が指示される。
スクリーンに映された場面が戦場へと切り替わる。
動き出した破城槌。
それに向かい、一本の光が放たれる。
それがあたると、音もなく燃え上がる。
そしてよく見れば、矢は放たれた後、味方へ向かって降り注ぐ。
むろん、風の魔法により、すべて押し返されている。
「撃ち方やめえ」
弓隊の隊長は、手が詰まり困ってしまう。
「矢が駄目なら、これはどうだ」
槍隊の隊長が前に出て壁に向かい投げる。
当然吹き戻される。
「うわったぁ」
何とか、自分の槍を躱す。
「これは困ったな」
こうして、戦いは、静に始まった。
その間にも、風の精霊である、彩のいたずらは開始される。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
100
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる