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第2章 領地編1~新たな出会い~

第52話 ノアもテンパっていたのです

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「お待たせして申し訳ございません」
 
 パタパタと走る音と共に救世主、改めメモルがやってきた。
 
「魔物が人化ひとかしたので早急にバスローブを用意するようにとのことでしたが……」
 
 そう言って、ノア付きのメイドであるメモルはしゅいちゃんを見た。そして、瞬時にサイズを把握したようで、またたにバスローブをしゅいちゃんに着せた。神業である。
 だが、バスローブ姿もまたエロし。

「お父様に会う前に服を用意しないと……」

 なんて言っていたら──。

 ボッフン!!

 今度は、べにちゃんが真っ白な煙に包まれた。

「えっ!? 嘘でしょ?」
『うそじゃないですよ! べにも、できました!! しゅいさんのおかげです。アドバイス、ありがとうです!!』

 誇らしげなべにちゃんの声が煙の中から聞こえてくる。

「えっ!? アドバイス? いつの間に?」
『お姉様がバスローブのお話ししてる時ですよ! べにも人間になれて、とっても嬉しいです』

 喜んでるところ悪いけど、人になるのは今じゃないんだよね。
 だって、このパターンだとまた全裸なんでしょ!? 立て続けに全裸の女子は求めてないんだよ! 一人ですら困ってんのに!!

 ノアがちゃんと背中を向けてくれたままなことを素早く確認し、メモルからバスローブを1枚借りる。

 絶対に姿が見えた瞬間に着てもらうんだから! そう思って、目線よりも少し高い位置を見ながら煙が晴れるのを待つ。
 煙が少しずつ減っていく。だが、べにちゃんの姿はない。

「へっ?」

 何でいないの!? とべにちゃんを探そうとすれば、ドンッというちょっとした衝撃と共に、ぎゅっと腰に抱きつかれる。

「べにちゃん!?」
『はい! お姉様、見てください! 人間ですよぉ』

 うす桃色の瞳を細めてへらりと笑う、紅色の髪を肩で切り揃えた幼い子が言う。

「か、かわ……」

 震えた。全、私が歓喜した瞬間だった。私に抱きついているべにちゃん。それはもう、可愛いの化身だ。ノアを天使と言うならば、べにちゃんは小動物系の愛らしさである。

『お姉様! べに、がんばりました!!』

 褒めて褒めて! と、うす桃色の瞳が期待で光り輝く。べにちゃんの瞳は、まるで宝石みたい。
 あまりの可愛さに魂が口から飛び出そうになっていれば、メモルの言葉が私を現実に戻してくれた。

「そこの全裸女子に、アリア様が持っているバスローブでは大きいかと。こちらをお使いください」

 そう言って渡してくれたのは、4~5歳くらいの子が着るサイズのバスローブ。それは、ふわっふわで、お日様の匂いがする。

「ありがとう」

 私はバスローブを受けとると、べにちゃんに着せる。その間ずーーーっと、べにちゃんは嬉しそう。にこにこさんだ。
 
「うーん。しゅいちゃんの服は誰かから借りればいいけど、べにちゃんサイズの服ってうちにあるのかな……」
 
 色白ギャルのしゅいちゃんは、メイドさんから服を借りれば問題ない。けど、べにちゃんのサイズとなると……。

「……魔物に戻って頂けば済む話ではないのでしょうか?」
「「確かに!!」」
 
 メモルの言葉に、私とノアの声が重なった。
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