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1、王太子レイモンの宣言

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「いいか、アデル、もうすぐ卒業で、俺は数ヶ月後にお前と結婚しなくてはいけないわけだが、それは立場上仕方なくてのことだ。
 結婚しても俺の最愛の女はこのエリーザで、お前を愛することは決してないから、よーく覚えておけよ?」

 多くの生徒で賑わう王立学園の中庭で――白金ブロンドと青灰色の瞳をした、目の覚めるような美形――王太子レイモンは公然と言い放った。
 それもわざわざ見せつけるように他の女生徒の肩を抱き、婚約者の公爵令嬢アデル・バルトの昼食を邪魔しての宣言だった。

「勿論、子供の頃から殿下が私の事を嫌っているのは存じ上げております」

 対するアデルは微笑をもって答える。
 その微塵も動揺を見せない態度がいつもレイモンの心を傷つけているとはつゆ知らず。
 先刻の発言もアデルとの結婚式が迫って浮かれてのもの。
 幼い頃からのアデルへの恋心と劣等感を拗らせまくったレイモンの捻くれた愛情表現だった。

 そうとは知らない――黒髪の巻き毛と緑の瞳をした、小悪魔的な美貌の女性――男爵令嬢エリーザが、続けて思い上がった口をきく。

「申し訳ありません、アデル様。私の身分が低くて、レイモン様との結婚が認められないばかりに……。
 形だけの妻なんて、お辛いでしょう? おかわいそうに」

 これにもアデルは、

「お気遣いありがとう。全然大丈夫ですわ」

 とにっこり笑顔で返し、レイモンの胸をぐさっとさした。

「ふん! いつも、余裕ぶった取り澄ました顔をしやがって……我が妹ながらつくづく可愛げがない。
 そんなだからアデル、お前は殿下に愛されないんだ!」

 と、いつもレイモンとつるんでいる、アデルと顔だけは似ている双子の兄ロイドに理不尽な毒を吐かれても、
「もう可愛いなんて言われる年頃でもありませんから。それに私達の結婚は完全に政略的なもので、愛はいっさい関係ありませんもの。ねぇ殿下?」

 やんわり受け流してから、止めの一言をレイモンにお見舞いした。
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