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2 そういう夫は必要ありません

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「するとあなたは、私とは結婚するものの、私の妹と今発覚したばかりの熱い恋愛関係を継続したいと。その許可を、私に求めているという事ね? 私との婚約をなかった事にして、妹と結婚させてほしいというわけでもなく」

「そうだよ?」

「なぜ?」


 イーサンがキョトンとしている。
 それも謎。


「なぜって、君が王家に連なるデュシャン公爵家の令嬢だからだ」

「妹もデュシャン公爵令嬢よ」

「ミシェルは実権を握らされていない。結婚するなら余所の貴族に嫁ぐ事になる」

「ええ」

「君の息子が次期デュシャン公爵だろ?」

「ええ。あなたはデュシャン公爵家の実権を握りつつ、妹とイイ事したいと」

「違う! そうじゃないよ、マルグリット!! 僕はデュシャン公爵家の実権を握る君と結婚しつつ、ミシェルと愛を育みたいって、丁重に相談しているんだ」


 これは、駄目だわ。
 馬鹿とは会話が成立しない。

 こんな人だとは思わなかった。
 出会った頃は、素直で純粋な侯爵令息だったのに。

 権力と色に狂ったわね。


「イーサン。婚約破棄で結構よ」

「え!?」

「ミシェルと結婚なさい」


 イーサンはこれまで見た事もないほど取り乱して、私に縋った。


「ちちち違う! そうじゃない! 君とは結婚したいんだ!!」

「ミシェルを愛しているんでしょ?」

「ああ! 心から君を尊重し、心から君の妹を愛しているんだよ!!」


 私が手をあげて合図すると、執事のポチョムキンがイーサンを引き剥がした。
 老齢のふくよかな執事ポチョムキンは、その外見から油断されがちだけれど、軍人並の類稀な素晴らしい筋肉に恵まれている。


「マルグリット! マルグリット、聞いてくれ! 僕ほど君を大切に想っている男はいない!! 地味で堅物で可愛げの欠片もない、ただ権力を握っているバツグンに血筋がいいだけの君を心から大切にできる優しい男は、僕しかいないんだ!!」


 ミシェルは、この愚かな男のなにがいいの?
 顔?

 一刻も早く妹と話し合わなくては。


「ミシェルはわかってくれた!」


 あら、心が通じた。
 こんな時に。


「ミシェルも君の事を愛しているんだ! 心から! 僕とミシェルで一生、君に忠誠を誓うよ!! 結婚しよう! っていうか結婚するだろう!? 僕たちは婚約しているんだからさあっ! 僕はミシェルと結婚したいなんて一言も言っていないんだ!! 結婚する! 結婚するよ君と!!」


 しつこい。


「マルグリットぉ!!」


 私はイーサンを一瞥し、告げた。


「そういう夫は必要ありません。本気でそう思っています。
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