魔眼持ちの伯爵家当主（旧題:魔眼持ちの伯爵令嬢）

８話

「ぎゃあ～！！」

そんな叫び声が聞こえて来たので、私はため息をついた。

「はぁ～、汚い叫び声だね」

「そうですね。おそらく声からして、急に来た第一王子でしょう。どうしますか？」

「放置でいいんじゃない？」

「流石に魔法を食らわせて放置は不味くないですか？」

「ちっ、確かに」

私は舌打ちをしてから立ち上がった。
フィーナもすぐに立ち上がり、私に従うように後ろに立った。
それを確認しつつ、私は魔法を使った。

「『氷魔支配』」

魔法を使い、扉に使った魔法のみを解除した。
そうしてから、私はフィーナの方を向き、１度頷いた。

フィーナは私が頷いたのを見てから、私の前に出て扉を開けた。
扉を開けると、無駄にゴテゴテしている服を着ている第一王子が、右手を肘の辺りまで凍り付けながら転がっていた。

それを見て、屋敷の侍女や第一王子の護衛らしき騎士達はオロオロしているだけだった。
まあ屋敷の侍女が、私の魔法で凍り付くのは外聞が悪いので、オロオロしてくれていたのは良かったと思った。

しかし、第一王子を心配しているだろう事は確実なので、私は侍女達に指示を出した。

「侍女は通常の仕事に戻りなさい。この馬鹿の氷には決して触らない様に、触れば触った者にも氷は移り、体を凍りつける。

少しでも触った者が居るなら、今のうちに私に言いなさい。氷を溶かすわ」

私はそう言って、この場にいた侍女を見回し、視線で『触った者は？』と問いかけたが、どの侍女も首を横に振った。
なら良いと、侍女に仕事に戻るように手をヒラヒラとさせた。

すると、侍女達は頭を下げてから仕事に戻った。
次に護衛の騎士達を見た。
護衛の騎士達は、さっきまでオロオロしていたが、今は顔を真っ青にしている。

その真っ青になっている理由は大体予想がついた。
私がした説明を聞いてから真っ青になったので、自分が触れていたときの事を考えていたか、城に帰った後の事でも考えていたのだろう。

それを冷めた目で見ながら言った。

「そちらの騎士は、早く馬鹿を連れて城に帰ってくれます？」

「お、お待ち下さい！！クリスハルト殿下にかけた魔法の解除を！！」

「はぁ？その馬鹿が勝手に私の魔法に触っただけでしょ？私が攻撃目的で仕掛けた魔法じゃないのに、解除する理由がないわ」

「なっ！？そ、それはあまりにも横暴です！！」

護衛の騎士が馬鹿な事を言ってきたので、私は正論を叩きつけた。

「横暴？それを言うなら、私の屋敷で王子バカが好き勝手にしている方が横暴でしょ？私は騒ぎ声が聞こえたから、魔法で扉を塞いだだけ。

それに扉を開けるのは、安全面を確保する為に護衛や執事、侍女がする仕事よ。
その仕事をせずに、主人に好き勝手を許したのは、護衛である筈の貴方達騎士でしょ？」

「うっ、そ、それは」

私が正論を叩きつけると、騎士はたじろいて狼狽えた。