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15話

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私の言葉を聞いて、馬鹿共は顔を真っ赤に歪めて、私を睨み付けてきた。

「そもそも!!貴様が俺に魔法を使っていなければ、こんな事にはなっていない!!」

私は馬鹿の叫び声を聞き、ピクリと眉を少しだけ反応させてしまった。
それは一瞬だけ、私が魔法を発動させたのを気取られたのかと考えたからだった。

しかし、そもそも魔眼所持者でなければ、魔法を発動させたかどうかは判別出来ない。
魔法を発動させたかを判別するには、発動させた瞬間に、その場で魔力を感じ取る必要がある。
つまり、馬鹿共には魔眼所持者が居ないので、今の魔法発動がバレた訳じゃない。

それなら何のことを言っているのかと、私が首を傾げると、馬鹿はキレながら叫んだ。

「この俺を氷漬けにした事を覚えてないのか!!」

私は馬鹿の言葉で何を言っているのかを察した。
しかし、バカ正直に認めてやる気はサラサラないので、知らないふりをした。

「氷漬け?なんのことです?」

「なんだと貴様!!私を氷漬けにした事は、近衛騎士から聞いているぞ!!」

「近衛騎士から?因みに、その近衛騎士はどうしたので?」

「あんな無能共は牢屋に打ち込んだ!!それよりも俺に謝罪しろ!!」

私とフィーナは馬鹿の言葉に呆れて首を横に振った。

せっかく手打ちにしてやったのに、なんで馬鹿騎士共はわざわざ自分が裁かれる側にまわるのか。
そんなことを考えながら私は、外聞を気にしなくて良くなる案を思い付いたので、敬語をつけずに馬鹿に質問した。

「謝罪?私がバカに謝罪をしなければならない理由は?」

「貴様は耳がないのか!?俺を氷漬けにした事を謝罪しろと言っているのだ!!」

「私は確かに魔法を使った。しかし、それは私が居た扉だけに範囲を限定した上での事。

よって、私が魔法を発動させた事は貴方が私の屋敷に押し入り、無理矢理(居た)に入り込もうとした事に対する正当防衛。これの何処に謝る要素があるの?」

私の言葉に、周りで私の言葉を聞いていた常識を持つ人間は絶句した。
いや仮に常識を持っていない人間でも、私の発言を聞けば絶句するだろう。

というのも、私は『私の部屋』という言葉を強調し、逆にその部屋が私の部屋ではないという部分を隠した。
つまり、周囲には王子が未婚の、しかも女性の伯爵家当主の寝室に無理矢理は入ろうとしたと理解するだろう。
更に、私が魔法を発動させたという部分と無理矢理という部分から、無理矢理王子が私に夜這いをかけに来たと解釈している筈だ。

つまり、目の前のバカは未婚の伯爵家当主に夜這いをかけたが、それを魔法で防がれ、魔法で防いだ事を謝れと、恥知らずにも公衆の面前で喚いている王子ということになる。
対して私は夜這いをかけられたのに、気丈に振る舞い、バカの相手をしている気高き伯爵家当主という構図になる。

これなら、どれだけの下手を打とうとも、こちらが今回の事で負ける事はないだろう。
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