魔眼持ちの伯爵家当主(旧題:魔眼持ちの伯爵令嬢)

ロシキ

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62話

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フィーナに男を気絶させてから、学園の終わりまでは特に何もなかった。
ただ、講義中や休み時間も私達の後ろに立っていたアリアが、こちらをチラチラと見てきたので、その視線が少しだけ面倒に思えた事だろうか。

しかし、そんなアリアの視線すら気に留めず、普通の学園生活を送った。
その後、学園で行う講義や予定を全て終えて帰ろうとした際に、クラスの担任の教師に呼び止められた。

「失礼、フロービス嬢とフィーナさん。お二人に話したい事があるのだが、この後は時間があるだろうか?」

「ええ、少しならば時間がありますが、長くなるお話しでしょうか?」

「いや、すぐに終わる話ではあるが、ここでする話でもないのでな。教員室に来て欲しいのだが」

「そう言うことでしたか。それならば、この後で教員室に参ります」

「そうか、それでは私は一足先に行くとしよう」

そう言って、担任の教師は先に教員室に向かった。
私はフィーナとアリアを連れて、一番近くのトイレに入った。
中には誰も居ない事を確認してから、私はため息をついた。

「帰り際に呼び止めるとは、学園の教師は躾がなってないね」

「おそらく、朝の男の件でしょうね。あの様な醜態を晒したのですから、退学はほぼ確定、退学させずに謹慎させる事も考えられますが、どちらになるかは微妙ですね」

「謹慎で済んだとしても、その後に学園に戻れるとは思えないけどね。むしろ謹慎にするくらいなら、退学にした方が優しいと思うけど?」

「確かに、そうですね。

ローニャ様の事情を知っている者からは伯爵家当主に喧嘩を売ったように見えますし、逆に事情を知らぬ者でも令嬢相手にあの様な言動を行う平民を貴族の子供が多い、この学園に置いておきたいと思う人間はいないでしょうし」

「へ、あのガイ君が謹慎か退学、ですか?」

私とフィーナの話を聞いていたありますが驚いた顔をしていた。
それを見て、これは説明がいると判断して、軽く説明をした。

「当たり前でしょう。

私は貴族で、あの男は平民。確かに学園には平等に学ぶという建前はあるけど、それは学園の中でしか通じない。

学園の外での生活や環境が、学園に影響を及ぼす事もあるの。
何が言いたいかというと、貴族相手に何も考えずに喧嘩を売る平民が、自分の子供を預けている場所に存在する事を、貴族家の当主達は許しはしないわ。

学園側は謹慎にするなら、その後は自主退学に持っていきたいだろうね。
でも、自主退学はかなり不名誉な事だし、いつ自主退学を申し出るかも分からない。
だから、私は強制的に退学になると思うけどね」

「そ、そんな。どうにか出来ないでしょうか?」

「私はアリアとアリアに取って人質となり得るアリアの家族は守るけど、幼馴染まで守るつもりはないわ」

私の言葉を聞いて、アリアは目を見開いた。
そして、すぐにフィーナに目を向けたものの、フィーナにも首を横に振られた。
それを見て、アリアは表情を暗くして俯いてしまった。

そんなアリアを見て、このままだと貴族に悪感情を抱く可能性があると判断して、少しだけアリアの幼馴染を庇うことにした。

「まあ、あの男が退学になったら、今後の人生は詰むだろうけど、そうなったら私が私兵として雇っても良いわよ」

「ほ、本当ですか!?」

「ええ、本当よ。でも、そうなっても貴方とは会わせないし、もしも1年間育ててみても私兵に見合わないようなら解雇するわ」

「それでも構いません。ありがとうございます」

アリアは、そう言って頭を下げた。
アリアの頭を下げる直前の顔は、心底安心していた様だったので、あの男を雇う事も必要経費として考える事にした。
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