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第一部:本編

104:お礼

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 僕達は、他の冒険者達が村の外から連れてきていた特急馬車が纏められた広場へと向かう。

 道中、冒険者達とすれ違う度に……。

「よう坊主、お手柄だったぞ」
「お前のおかげで命拾いしたわ!」
「あんな障壁張り続けるなんて凄かったわよ」
「お、ヘルトと坊主達。今回はありがとよ」

 口々にお礼を言われたり、褒められる事に慣れていなくて、照れてしまった。

 本当に……頑張って、頑張ってきてよかったと思う。

「あれ、ヘルトさんと坊主達帰るんですか?」

 特急馬車の集まった広場へと到着すると、馬の魔獣の世話をしていた冒険者が声をかけてくる。

「ああ。……ここ故郷なんだけどよ。折り合い悪くてな」
「あー、そうなんすね。じゃあ、仕方ねぇや」
「俺は帰るが、ロークさん……こういうのに慣れてるベテランがいるから問題はないと思う。わからないことがあったら頼ってくれ」
「了解っす!」

 ヘルトさんがやり取りしていた彼から、僕達が行きに使っていた特急馬車を教えてもらい帰り支度をする。

「おーい、ヘルト」
「あれ、ロークさん。どうしたんですか?」

 馬と馬車の調子を確認し、もう出発しようと言うところでロークさんが僕達の馬車まで走ってきた。

「いや、坊主に……エルツに礼を言えてない事を思い出してな。礼を言いに行ったのに、お前はいるし、ああなるしで言えずじまいだったからよぉ」

 ため息を吐くロークさんに僕とヘルトさんは苦い笑いを浮かべる。

 確かに、途中から話せるような状態じゃなかったもんね……。

「いろんなヤツからも言われてるだろうが、本当に助かった! エルツの障壁がなければどうなっていたかわからない」

 深く頭を下げるロークさんに気恥ずかしくて、居心地が悪くなる。

「そんな……僕は、できる事をやっただけで……」
「それをできるヤツってのは、意外とすくねぇんだ。そっちの嬢ちゃんと命を省みず、中に入ってきた事も普通だったらできねぇ。だから、お前は誇っていい。今日、誰かの命を一番救ったのはお前なんだからな」

 その言葉に……僕は、拳を握りしめる。

 認めてもらえたヘルトさんの師匠のような人に。その事が嬉しかった。

「ヘルトも、外のヤツら仕切ってくれて助かった。大事に育ててるだろうエルツを送ってくれてありがとう」
「なんか、ロークさんに褒められるの久しぶりでくすぐったいっす」

 僕の隣でヘルトさんも照れているが嬉しそうだ。

「で、そっちの嬢ちゃんと坊主もありがとな。嬢ちゃんの通信先が坊主だろ? お前達が様子を伝えてくれたから戦況が把握できた」
「いえ、わたし達は、指示にしたがっただけですので」
「ですが、お褒めいただけるならお言葉を受けとります」
「さっきは、気にならなかったが……なんだかかてぇなこの二人」

 褒めたのに淡々とソルとルナに困惑するロークさん。

「あはは……」
「そいつら真面目なんすよ」

 その様子に僕とヘルトさんは笑うしかできなかった。
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