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3話
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琉唯はいつの間にか眠っていたらしく、扉を開ける音と「琉唯!」という母の声に目が覚めた。
「大丈夫?!本当に心配したんだからね。学校から電話があって家に帰ったら、トイレで血を吐いて倒れてるんだから。もう、琉唯が私より先に死んじゃったらどうしようかと……。」
そう言う母、雨宮春恵の声は細く震えていて、目には涙が溜まって今にも溢れそうだ。
琉唯はその言葉に、私は死なないから大丈夫だよ、と言おうとしたがどうしても言えなかった。
春恵はついに目から涙を零し、琉唯をぎゅっと強く優しく抱きしめた。その温もりに琉唯も涙を流した。この温もりも感じられるのもあと僅かかもしれない、そう思うと怖くて怖くて仕方がないのだ。
「怖いよぉ……。」
そう琉唯が声を漏らすと、春恵は頭を撫でながら大丈夫だよ、と声をかける。
数分間ずっと泣き続け、疲れた琉唯はまた眠ってしまった。その時部屋をノックする音が聞こえた。失礼します、という声と同時に扉は開き、そこには和彦の主治医である宮塚誠二が立っていた。
「お母様、少しよろしいですか。」
少し深刻そうに春恵に声をかけ、診察室に案内した。
「まずお子様、琉唯ちゃんについてですが、ほぼ間違いなく体に何か問題があります。頭が酷く痛み吐血もしていましたから。近頃、何か体調が悪そうな様子は見られませんでしたか。」
そう言われると、何となく心当たりは浮かんでくる。太った訳でもないのにダイエットするなんて言ってご飯を減らしたり、休みの日も前までは友達と遊んでいたのに家で寝ていることが多くなった。もしそれが、体調が悪かったからだとしたら__。
「少し、食べる量が減ったり、家で寝ていることが多くなりました。私にわかることはそれくらいです。」
「いえ、それだけでも十分な情報です。明日に検査をするので今日は入院となりますが、よろしいですか。」
「はい、お願いします。」
「お任せ下さい。病室に帰っていただいて結構ですよ。琉唯ちゃんの傍に居てあげてください。」
ありがとうございます、礼を言い廊下に出た瞬間手の震えが止まらなかった。ほぼ間違い体に何か問題があります、という言葉が頭の中で繰り返される。琉唯を失うかもしれないという恐怖は相当なもので、また泣きそうになってしまう。
けれど、今1番辛いのはきっと琉唯。そう思い、春恵は自分の両頬を軽く叩いて喝を入れた。
病室に帰ると琉唯は眠っていて、その顔色はどことなく悪い様に見える。大切な我が子が苦しんでいたのに気づけなかったのかと思うと胸が苦しくなり、それを誤魔化すために琉唯の頬を撫でると、琉唯が目を覚ました。
「お母、さん……。」
「琉唯、起きたの。体調悪くない?」
「大丈夫。ちょっと頭痛いだけ。」
「それは大丈夫って言わないからね。先生呼ぼうか?」
「いや、そこまでしなくても大丈夫だよ。ありがとう。」
優しく微笑んだ琉唯の目は腫れていて、春恵が居ない間に一人で泣いたんだろうということが容易に想像出来た。
「明日検査だから今日は入院になるんだって。明日は仕事でどうしても外せない会議が朝早くにあるからそれが終わったらすぐに来るね。」
「今日も仕事抜けてきたのに大丈夫なの。」
「琉唯と仕事なんて、どっちが大事かなんて一目瞭然でしょ。」
笑顔でそう言いきったけど、目の奥にうっすらと溜まる涙を琉唯は見逃さなかった。
「大丈夫?!本当に心配したんだからね。学校から電話があって家に帰ったら、トイレで血を吐いて倒れてるんだから。もう、琉唯が私より先に死んじゃったらどうしようかと……。」
そう言う母、雨宮春恵の声は細く震えていて、目には涙が溜まって今にも溢れそうだ。
琉唯はその言葉に、私は死なないから大丈夫だよ、と言おうとしたがどうしても言えなかった。
春恵はついに目から涙を零し、琉唯をぎゅっと強く優しく抱きしめた。その温もりに琉唯も涙を流した。この温もりも感じられるのもあと僅かかもしれない、そう思うと怖くて怖くて仕方がないのだ。
「怖いよぉ……。」
そう琉唯が声を漏らすと、春恵は頭を撫でながら大丈夫だよ、と声をかける。
数分間ずっと泣き続け、疲れた琉唯はまた眠ってしまった。その時部屋をノックする音が聞こえた。失礼します、という声と同時に扉は開き、そこには和彦の主治医である宮塚誠二が立っていた。
「お母様、少しよろしいですか。」
少し深刻そうに春恵に声をかけ、診察室に案内した。
「まずお子様、琉唯ちゃんについてですが、ほぼ間違いなく体に何か問題があります。頭が酷く痛み吐血もしていましたから。近頃、何か体調が悪そうな様子は見られませんでしたか。」
そう言われると、何となく心当たりは浮かんでくる。太った訳でもないのにダイエットするなんて言ってご飯を減らしたり、休みの日も前までは友達と遊んでいたのに家で寝ていることが多くなった。もしそれが、体調が悪かったからだとしたら__。
「少し、食べる量が減ったり、家で寝ていることが多くなりました。私にわかることはそれくらいです。」
「いえ、それだけでも十分な情報です。明日に検査をするので今日は入院となりますが、よろしいですか。」
「はい、お願いします。」
「お任せ下さい。病室に帰っていただいて結構ですよ。琉唯ちゃんの傍に居てあげてください。」
ありがとうございます、礼を言い廊下に出た瞬間手の震えが止まらなかった。ほぼ間違い体に何か問題があります、という言葉が頭の中で繰り返される。琉唯を失うかもしれないという恐怖は相当なもので、また泣きそうになってしまう。
けれど、今1番辛いのはきっと琉唯。そう思い、春恵は自分の両頬を軽く叩いて喝を入れた。
病室に帰ると琉唯は眠っていて、その顔色はどことなく悪い様に見える。大切な我が子が苦しんでいたのに気づけなかったのかと思うと胸が苦しくなり、それを誤魔化すために琉唯の頬を撫でると、琉唯が目を覚ました。
「お母、さん……。」
「琉唯、起きたの。体調悪くない?」
「大丈夫。ちょっと頭痛いだけ。」
「それは大丈夫って言わないからね。先生呼ぼうか?」
「いや、そこまでしなくても大丈夫だよ。ありがとう。」
優しく微笑んだ琉唯の目は腫れていて、春恵が居ない間に一人で泣いたんだろうということが容易に想像出来た。
「明日検査だから今日は入院になるんだって。明日は仕事でどうしても外せない会議が朝早くにあるからそれが終わったらすぐに来るね。」
「今日も仕事抜けてきたのに大丈夫なの。」
「琉唯と仕事なんて、どっちが大事かなんて一目瞭然でしょ。」
笑顔でそう言いきったけど、目の奥にうっすらと溜まる涙を琉唯は見逃さなかった。
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