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27.プロポーズ①
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夕食の片付けを慶弥さんに任せると、引っ越しの準備を進めることにして、早めにパソコンを梱包してしまう。
「あれ、もう片付けちゃうんだ」
「うん。ちょっと早いけど、この裏とか早めに掃除しちゃいたいし」
パソコンデスクとテレビラックの裏にハンディモップをかけながら、油断するとすぐに埃が溜まる話で盛り上がる。
「瑞穂は時間がないのに凄く部屋が綺麗だよね」
「そんなことないよ。引っ越し前だから、なんとなく荷物がまとまってて片付いてるだけだし、今日は慶弥さんが来るから必死で掃除したもん」
「そんな気を遣わなくてよかったのに」
「そうはいかないよ」
慶弥さんにそう答えながら、パソコンデスクを雑巾で綺麗に拭き上げると、少し動かして空いた隙間にモップをかけた。
「瑞穂、段ボールにしまうものがあればやるよ」
「お風呂とキッチン周り以外は終わってるから、それはもう大丈夫。ありがとうね」
「いよいよだね」
「そうだよ。もうこの週末には引っ越しだもん。あっという間だった」
ようやくソファーに腰を落ち着けると、慶弥さんがグラスに注いだビールを持ってきて改めて乾杯する。
「お疲れ様」
「こっちこそ、片付けありがとう」
慶弥さんにもたれてビールを一気に呷ると、喉の奥がキュッと締まる感覚に思わず声が出る。
「あぁあ、美味しい」
「瑞穂の手料理、本当に美味しかったよ」
「お母様の手料理には全然及ばないけどね」
「そんなことないよ。お酒を知ってるだけあって、さすがだなって思うよ」
「もう、褒めてもなにも出ないよ」
クスクス声をあげて笑い合うと、そういえばと言って慶弥さんはトートバッグを引き寄せる。
「俺、この前誕生日だったでしょ」
「あ! ちょっと待って。プレゼント用意してあるの」
言われて思い出して寝室に向かうと、チェストに入れておいた小箱を手に取ってリビングに戻る。
「はい。お誕生日おめでとう」
「なんか催促したみたいになったね。でもありがとう」
「いいのいいの。バタバタしてて、当日は電話しか出来なかったし」
「でもね瑞穂、俺、他に欲しい物があってさ」
「え、そうなの」
突然の慶弥さんの言葉に首を傾げる。
確かにそういうこともあるだろうけど、渡したプレゼントがまだ開封されていないので、これが気に入らない訳ではないらしい。
「言いにくいんだけど、聞いてもらっていいかな」
「……うん。別にいいけど」
思いの外真剣な顔をしている慶弥さんに、背筋を伸ばして向き直ると、両手を掴まれて祈るように指先にキスをされる。
「赤西瑞穂さん」
「は、はい」
「今すぐにという話じゃないけど、俺と結婚して欲しい。君の人生を俺に預けて欲しいんだ、瑞穂」
「……え?」
「これを、受け取ってくれないか」
そう言って慶弥さんが取り出したのは、小粒のダイヤモンドが両サイドにあしらわれた可愛らしいデザインのパールのリングだ。
「え。……え、本当に?」
「この先ずっと歳を重ねる度に、こんな風に好きだって伝えていきたい」
「慶弥さん。それじゃあ私のお祝いになっちゃうよ」
「そうなの? じゃあ俺と結婚してくれる? もちろん今すぐじゃなくていい。瑞穂のそばにずっといることを許して欲しい」
「もちろん。私も貴方のそばにいたいです」
私がそう答えると慶弥さんは嬉しそうに笑って、けれど緊張してるのか、少し震える指先で私の左手の薬指にリングをはめは。
「よかった。ぴったりだね」
「凄い。よくサイズ分かったね。こっそり測ったの?」
「それは秘密」
「あれ、もう片付けちゃうんだ」
「うん。ちょっと早いけど、この裏とか早めに掃除しちゃいたいし」
パソコンデスクとテレビラックの裏にハンディモップをかけながら、油断するとすぐに埃が溜まる話で盛り上がる。
「瑞穂は時間がないのに凄く部屋が綺麗だよね」
「そんなことないよ。引っ越し前だから、なんとなく荷物がまとまってて片付いてるだけだし、今日は慶弥さんが来るから必死で掃除したもん」
「そんな気を遣わなくてよかったのに」
「そうはいかないよ」
慶弥さんにそう答えながら、パソコンデスクを雑巾で綺麗に拭き上げると、少し動かして空いた隙間にモップをかけた。
「瑞穂、段ボールにしまうものがあればやるよ」
「お風呂とキッチン周り以外は終わってるから、それはもう大丈夫。ありがとうね」
「いよいよだね」
「そうだよ。もうこの週末には引っ越しだもん。あっという間だった」
ようやくソファーに腰を落ち着けると、慶弥さんがグラスに注いだビールを持ってきて改めて乾杯する。
「お疲れ様」
「こっちこそ、片付けありがとう」
慶弥さんにもたれてビールを一気に呷ると、喉の奥がキュッと締まる感覚に思わず声が出る。
「あぁあ、美味しい」
「瑞穂の手料理、本当に美味しかったよ」
「お母様の手料理には全然及ばないけどね」
「そんなことないよ。お酒を知ってるだけあって、さすがだなって思うよ」
「もう、褒めてもなにも出ないよ」
クスクス声をあげて笑い合うと、そういえばと言って慶弥さんはトートバッグを引き寄せる。
「俺、この前誕生日だったでしょ」
「あ! ちょっと待って。プレゼント用意してあるの」
言われて思い出して寝室に向かうと、チェストに入れておいた小箱を手に取ってリビングに戻る。
「はい。お誕生日おめでとう」
「なんか催促したみたいになったね。でもありがとう」
「いいのいいの。バタバタしてて、当日は電話しか出来なかったし」
「でもね瑞穂、俺、他に欲しい物があってさ」
「え、そうなの」
突然の慶弥さんの言葉に首を傾げる。
確かにそういうこともあるだろうけど、渡したプレゼントがまだ開封されていないので、これが気に入らない訳ではないらしい。
「言いにくいんだけど、聞いてもらっていいかな」
「……うん。別にいいけど」
思いの外真剣な顔をしている慶弥さんに、背筋を伸ばして向き直ると、両手を掴まれて祈るように指先にキスをされる。
「赤西瑞穂さん」
「は、はい」
「今すぐにという話じゃないけど、俺と結婚して欲しい。君の人生を俺に預けて欲しいんだ、瑞穂」
「……え?」
「これを、受け取ってくれないか」
そう言って慶弥さんが取り出したのは、小粒のダイヤモンドが両サイドにあしらわれた可愛らしいデザインのパールのリングだ。
「え。……え、本当に?」
「この先ずっと歳を重ねる度に、こんな風に好きだって伝えていきたい」
「慶弥さん。それじゃあ私のお祝いになっちゃうよ」
「そうなの? じゃあ俺と結婚してくれる? もちろん今すぐじゃなくていい。瑞穂のそばにずっといることを許して欲しい」
「もちろん。私も貴方のそばにいたいです」
私がそう答えると慶弥さんは嬉しそうに笑って、けれど緊張してるのか、少し震える指先で私の左手の薬指にリングをはめは。
「よかった。ぴったりだね」
「凄い。よくサイズ分かったね。こっそり測ったの?」
「それは秘密」
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