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第一章 ラバネス半島編
21.荒くれ者達の乱入!
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トランスベル王国側の外交官に『ボーン食器』の魔法陣を渡して一ヵ月が過ぎた。
王都ブリタスの店舗の執務室でレミリアと紅茶を飲んでいると、下の階からドタバタと大きな音が聞こえてくる。
その音を聞いたレミリアが『様子を見てきます』と言って部屋から走り去っていった。
それからしばらくして、レミリアが部屋に戻ってきて、僕に一階まで来て欲しいという。
なので彼女と一緒に一階まで階段を下りていってみると、冒険者風の男達が床に倒れていた。
「これってどういうこと? 何があったの?」
「いきなり店に入ってきて、シオン様を出せって騒ぎだしたので、つい……」
なるほど、ちょっと状況が理解できたぞ。
冒険者風の男達が店の中で暴れたので、シャムによって鎮圧されたというわけね。
白猫族のシャムは元々は腕利きの冒険者だ。
普段は真面目で大人しい彼女だけど、実は怒らせると怖かったりするんだよね。
だから安心して店長を任せているわけなんだけど。
床に倒れたまま男の一人が顔を上げて、僕に向かって大声をあげる。
「お前がシオンか。黙って俺の指示に従って、俺達と一緒に来い。さもないと酷い目に遭うぞ」
「酷い目にあってるのは、おじさんの方だと思うけど」
「うるせー! だまっていうことを聞け!」
「黙るのはアナタです」
怒鳴る男の様子に怒ったシャムが、腰に下げてあった木剣を抜いて、男の頭をバシバシと殴って気絶させた。
うーん、床に倒れた姿のまま大声を出されても、まったく説得力ないな。
でも、いったい僕に何の用だったんだろう?
気絶したまま動かない男達を見て悩んでいると、レミリアが「吐かせますか?」と聞いてくる。
その表情には尋常ではない殺気が発散していた。
彼女に任せたら男達の命が危ないかもしれない。
僕は心の中で冷や汗を流しながら、シャムに頼んで男達を店の外へ放り出してもらい、街の警備兵を呼びに行ってもらった。
そして三日後、また違う荒くれ者達が、店の中へと乱入してきた。
そのことに激怒したレミリアとシャムによって撃退されたことは言うまでもない。
それから二週間の間に六回の襲撃があった。
全てレミリアとシャムによって鎮圧されたんだけどね。
「彼等の意図は分かりませんが、シオン様を狙っているのは確実です。もし、よろしければ私が動いてもよろしいですか?」
黒の燕尾服を着たアグウェルが礼儀正しく頭を下げてくる。
もちろん『ロンメル商会』の統括であるアグウェルは、男達の襲撃の件を知っていて、そのことにめちゃくちゃ怒っていた。
でも、アグウェルに対処してもらうと死人が出そうだったからレミリアとシャムに任せていたのだ。
だってアークデーモンのアグウェルが本気になったら、国の一つぐらいは簡単に滅ぼしかねない。
でも、そろそろ我慢も限界のようだし、ちょっと働いてもらったほうがいいかもしれないかも。
「では、男達を使って僕を狙ってる張本人の素性を探ってきて。決して荒事はダメだからね」
「御意」
アグウェルは礼をしたまま、黒霧に姿を変えて消えていった。
やっぱりアークデーモンの能力って桁外れだよね。
そして二日後の夕方、執務室でレミリアと一緒に事務作業をしているとアグウェルが空中から突然に現れた。
「ただいま戻りました」
「何かわかったの?」
「はい。荒くれ者達を雇っていたのは、トランスベル王国の王宮の手の者でした。その者の目的は、シオン様から魔法陣についての秘密を聞き出すことだったようです」
なるほど……トランスベル王国の魔導士でも魔法陣の解析はできなかったようだね。
まあ、僕しか扱えない魔法陣だから、気軽にトランスベル王国のへ渡したんだけどね。
「それなら、どうして僕を誘拐するとかしなかったのかな? そのほうが手っ取り早いと思うだけど?」
「そのことについて申し上げますと、この店舗に忍び込もうとしていた輩は、私が全て排除していましたので。シオン様に報告すると、怯えさせることになると思い伏せておりました。報告が遅れて申し訳ありません」
父上に会いたい時やアレン兄上に会いたい時は、姿見の転移ゲートから転移して会いにいくし、ほとんど僕は店舗から出ないからね。
深夜などに店舗の忍び込んで僕を誘拐しようと試みたみたいだけど、侵入者はアグウェルによって処分されていたのか。
だから店舗へ荒くれ者達を乗り込ませるなんて、バカ正直な方法を取ってきたんだな。
僕がウンウンと頷くのを見て、アグウェルは話を続ける。
「このままトランスベル王国の王宮を野放しにしていれば、また色々と仕掛けてくると思いますが、私がトランスベル王国へ乗り込んで、王宮を破壊してきましょうか?」
「ダメダメ、そんなことをすれば魔族が敵視されることになっちゃうよ。せっかく静かに暮らしているんだから、それはダメだからね」
「仰せのままに」
今は僕の指示で我慢してくれてるけど、アグウェルも相当に怒ってる。
僕のためにも、皆のためにも早く解決しないといけないな。
王都ブリタスの店舗の執務室でレミリアと紅茶を飲んでいると、下の階からドタバタと大きな音が聞こえてくる。
その音を聞いたレミリアが『様子を見てきます』と言って部屋から走り去っていった。
それからしばらくして、レミリアが部屋に戻ってきて、僕に一階まで来て欲しいという。
なので彼女と一緒に一階まで階段を下りていってみると、冒険者風の男達が床に倒れていた。
「これってどういうこと? 何があったの?」
「いきなり店に入ってきて、シオン様を出せって騒ぎだしたので、つい……」
なるほど、ちょっと状況が理解できたぞ。
冒険者風の男達が店の中で暴れたので、シャムによって鎮圧されたというわけね。
白猫族のシャムは元々は腕利きの冒険者だ。
普段は真面目で大人しい彼女だけど、実は怒らせると怖かったりするんだよね。
だから安心して店長を任せているわけなんだけど。
床に倒れたまま男の一人が顔を上げて、僕に向かって大声をあげる。
「お前がシオンか。黙って俺の指示に従って、俺達と一緒に来い。さもないと酷い目に遭うぞ」
「酷い目にあってるのは、おじさんの方だと思うけど」
「うるせー! だまっていうことを聞け!」
「黙るのはアナタです」
怒鳴る男の様子に怒ったシャムが、腰に下げてあった木剣を抜いて、男の頭をバシバシと殴って気絶させた。
うーん、床に倒れた姿のまま大声を出されても、まったく説得力ないな。
でも、いったい僕に何の用だったんだろう?
気絶したまま動かない男達を見て悩んでいると、レミリアが「吐かせますか?」と聞いてくる。
その表情には尋常ではない殺気が発散していた。
彼女に任せたら男達の命が危ないかもしれない。
僕は心の中で冷や汗を流しながら、シャムに頼んで男達を店の外へ放り出してもらい、街の警備兵を呼びに行ってもらった。
そして三日後、また違う荒くれ者達が、店の中へと乱入してきた。
そのことに激怒したレミリアとシャムによって撃退されたことは言うまでもない。
それから二週間の間に六回の襲撃があった。
全てレミリアとシャムによって鎮圧されたんだけどね。
「彼等の意図は分かりませんが、シオン様を狙っているのは確実です。もし、よろしければ私が動いてもよろしいですか?」
黒の燕尾服を着たアグウェルが礼儀正しく頭を下げてくる。
もちろん『ロンメル商会』の統括であるアグウェルは、男達の襲撃の件を知っていて、そのことにめちゃくちゃ怒っていた。
でも、アグウェルに対処してもらうと死人が出そうだったからレミリアとシャムに任せていたのだ。
だってアークデーモンのアグウェルが本気になったら、国の一つぐらいは簡単に滅ぼしかねない。
でも、そろそろ我慢も限界のようだし、ちょっと働いてもらったほうがいいかもしれないかも。
「では、男達を使って僕を狙ってる張本人の素性を探ってきて。決して荒事はダメだからね」
「御意」
アグウェルは礼をしたまま、黒霧に姿を変えて消えていった。
やっぱりアークデーモンの能力って桁外れだよね。
そして二日後の夕方、執務室でレミリアと一緒に事務作業をしているとアグウェルが空中から突然に現れた。
「ただいま戻りました」
「何かわかったの?」
「はい。荒くれ者達を雇っていたのは、トランスベル王国の王宮の手の者でした。その者の目的は、シオン様から魔法陣についての秘密を聞き出すことだったようです」
なるほど……トランスベル王国の魔導士でも魔法陣の解析はできなかったようだね。
まあ、僕しか扱えない魔法陣だから、気軽にトランスベル王国のへ渡したんだけどね。
「それなら、どうして僕を誘拐するとかしなかったのかな? そのほうが手っ取り早いと思うだけど?」
「そのことについて申し上げますと、この店舗に忍び込もうとしていた輩は、私が全て排除していましたので。シオン様に報告すると、怯えさせることになると思い伏せておりました。報告が遅れて申し訳ありません」
父上に会いたい時やアレン兄上に会いたい時は、姿見の転移ゲートから転移して会いにいくし、ほとんど僕は店舗から出ないからね。
深夜などに店舗の忍び込んで僕を誘拐しようと試みたみたいだけど、侵入者はアグウェルによって処分されていたのか。
だから店舗へ荒くれ者達を乗り込ませるなんて、バカ正直な方法を取ってきたんだな。
僕がウンウンと頷くのを見て、アグウェルは話を続ける。
「このままトランスベル王国の王宮を野放しにしていれば、また色々と仕掛けてくると思いますが、私がトランスベル王国へ乗り込んで、王宮を破壊してきましょうか?」
「ダメダメ、そんなことをすれば魔族が敵視されることになっちゃうよ。せっかく静かに暮らしているんだから、それはダメだからね」
「仰せのままに」
今は僕の指示で我慢してくれてるけど、アグウェルも相当に怒ってる。
僕のためにも、皆のためにも早く解決しないといけないな。
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