10 / 117
第一章
8話
しおりを挟む
「Loving Relief」というこのタイトルは日本語に訳すと「愛のこもった救い」。これはそのままゲームの内容を言っているようなものだ。その内容はヒロインが攻略対象と愛を見つけることによってお互いの心の中の呪縛から救われる、というもの。これはつまり、ゲーム開始時点では登場人物たちは心に闇を抱えているということだ。
そんな登場人物たちが出会うきっかけは彼らが通う王立学院でのある不可解な事件。そこにたまたま居合わせたのがヒロインと攻略対象の四人。ヒロインの担任でもあるロナン先生の依頼により調査を開始することになった五人だが一人での行動は危険だということでヒロインを含む二人と残りの三人に分かれることになる。ここがルートの分岐点だ。
それから選択した攻略対象との調査が始まるがその一方で二人の距離も少しずつ近づいてゆく。そして、お互いの心の中の闇に触れ、時には傷つき傷つけ、時には互いの存在に癒されながら、自らの身に迫る困難を乗り越え、事件を解決する。事件の真相のような詳しいことはもう覚えていないが、どのルートでも最後のスチルの美しさは凄まじかったし、幸せそうな二人の笑顔には号泣させられたのはよく覚えている。
「あなたの全てを愛したい」というキャッチコピーとともに切ないメロディのオープニングが流れるPVを見てしまった私は買わざるを得なくなり、案の定どハマりした。あぁ、もう一回プレイしたいなぁ……。
「いやいや、登場人物たちのこともちゃんと考えなきゃ」
そう、私の目標は健康に長生きすることだけれど、そのためにラブリリの登場人物を犠牲にしたいわけではないのだ。
まずはヒロイン。後から変更可能だが公式から付けられた名前はリリー・オルコック。ミルクティー色のセミロングの髪と若草色のぱっちりお目目が愛らしい少女。オルコック伯爵の一人娘だ。小さい頃から誰からも愛されることなく育ったリリーは愛に飢えており攻略対象との距離が近づくにつれてそれが満たされていく。頭が良く気も効いて優しい子なのでラブリリはヒロイン人気も絶大であったりする。
それから攻略対象たちだが、ルークベルト殿下はもういいだろう。もう会ったというのもあるが、私が生きることができたなら心の闇も自動的になくなるので比較的早い段階でヒロインに心も開くだろうし、その時はちゃんと身を引こうと思っている。万事解決だ。
そして第二王子のルカルド殿下。ルークベルト殿下が長めなのに対しこちらは耳に少しかかるくらいの銀髪で、紫色の瞳をしている。一言で言うと爽やか、しかし腹黒枠でもある、というのがルカルド殿下改めルカちゃんの美味しいところである。いつも輝く笑顔と物腰柔らかい対応で人から好かれやすいのだが、彼を巡る女性たちの争いや、自分と兄を巡る権力争いなど人間の汚らしい部分も多く見てきた人なので実は人間嫌い。純粋で心が綺麗なヒロインと出会うことで少しずつ絆され、最終的には彼女を守りたいと思うようになるのだ。ちなみに権力争いの話はルカちゃんが自分から身を引くのでゲーム開始時には解決済みである。
次にルークベルト王子殿下の護衛であるカイ・アルブラン。アルブラン伯爵家の三男。赤茶色の短髪と黄色の瞳を持った面倒見の良いお兄さん。しかし幼い頃に一緒に遊んでいた女の子が誘拐されてしまったことが原因でどんなに努力して剣の腕を磨いても自分に自信を持つことができず自己肯定感が圧倒的に低い。それがヒロインと出会い、彼女の真っ直ぐな言葉や態度に感化されて少しずつ自分を認められるようになっていく。正直に言うと私はこの人のルートで一番泣いた。本当にカイ兄さんは異常なまでに人の涙腺を崩壊させてくる。
最後がラブリリ屈指の可愛い枠、レオン・クライン。クライン公爵家の長男。肩につかないくらいの輝く金髪と温かなオレンジ色の瞳で天使のようなビジュアルを誇る。可愛いものが好きで本人も美少女のような見た目なので「女のようだ」「頭がおかしい」と馬鹿にされ続け、ありのままの自分でいられなくなってしまう。しかしヒロインと出会い、素の自分を好きになってもらえたことで、自分らしく生きることを決心する。ヒロインに心から微笑んだ時のレオちゃんは本当に天使だった。
「とりあえず主要人物はここまでね」
私は大きくため息を吐いて伸びをした。今まで頑張って思い出したことは何とか数枚の紙に書き起こしておいた。これは誰にも見られないようにしなければならない。そう思って私はその紙束を鍵のついた小箱に入れておいた。この鍵は私しか持っていない。
「よし、これからもっと頑張らなくっちゃ!」
私が長生きすることでラブリリのシナリオが大幅に崩れてしまうのならば私は彼らの幸せを守らなければならない。これは私が伸ばす寿命の分の代金なのだ。
そんな登場人物たちが出会うきっかけは彼らが通う王立学院でのある不可解な事件。そこにたまたま居合わせたのがヒロインと攻略対象の四人。ヒロインの担任でもあるロナン先生の依頼により調査を開始することになった五人だが一人での行動は危険だということでヒロインを含む二人と残りの三人に分かれることになる。ここがルートの分岐点だ。
それから選択した攻略対象との調査が始まるがその一方で二人の距離も少しずつ近づいてゆく。そして、お互いの心の中の闇に触れ、時には傷つき傷つけ、時には互いの存在に癒されながら、自らの身に迫る困難を乗り越え、事件を解決する。事件の真相のような詳しいことはもう覚えていないが、どのルートでも最後のスチルの美しさは凄まじかったし、幸せそうな二人の笑顔には号泣させられたのはよく覚えている。
「あなたの全てを愛したい」というキャッチコピーとともに切ないメロディのオープニングが流れるPVを見てしまった私は買わざるを得なくなり、案の定どハマりした。あぁ、もう一回プレイしたいなぁ……。
「いやいや、登場人物たちのこともちゃんと考えなきゃ」
そう、私の目標は健康に長生きすることだけれど、そのためにラブリリの登場人物を犠牲にしたいわけではないのだ。
まずはヒロイン。後から変更可能だが公式から付けられた名前はリリー・オルコック。ミルクティー色のセミロングの髪と若草色のぱっちりお目目が愛らしい少女。オルコック伯爵の一人娘だ。小さい頃から誰からも愛されることなく育ったリリーは愛に飢えており攻略対象との距離が近づくにつれてそれが満たされていく。頭が良く気も効いて優しい子なのでラブリリはヒロイン人気も絶大であったりする。
それから攻略対象たちだが、ルークベルト殿下はもういいだろう。もう会ったというのもあるが、私が生きることができたなら心の闇も自動的になくなるので比較的早い段階でヒロインに心も開くだろうし、その時はちゃんと身を引こうと思っている。万事解決だ。
そして第二王子のルカルド殿下。ルークベルト殿下が長めなのに対しこちらは耳に少しかかるくらいの銀髪で、紫色の瞳をしている。一言で言うと爽やか、しかし腹黒枠でもある、というのがルカルド殿下改めルカちゃんの美味しいところである。いつも輝く笑顔と物腰柔らかい対応で人から好かれやすいのだが、彼を巡る女性たちの争いや、自分と兄を巡る権力争いなど人間の汚らしい部分も多く見てきた人なので実は人間嫌い。純粋で心が綺麗なヒロインと出会うことで少しずつ絆され、最終的には彼女を守りたいと思うようになるのだ。ちなみに権力争いの話はルカちゃんが自分から身を引くのでゲーム開始時には解決済みである。
次にルークベルト王子殿下の護衛であるカイ・アルブラン。アルブラン伯爵家の三男。赤茶色の短髪と黄色の瞳を持った面倒見の良いお兄さん。しかし幼い頃に一緒に遊んでいた女の子が誘拐されてしまったことが原因でどんなに努力して剣の腕を磨いても自分に自信を持つことができず自己肯定感が圧倒的に低い。それがヒロインと出会い、彼女の真っ直ぐな言葉や態度に感化されて少しずつ自分を認められるようになっていく。正直に言うと私はこの人のルートで一番泣いた。本当にカイ兄さんは異常なまでに人の涙腺を崩壊させてくる。
最後がラブリリ屈指の可愛い枠、レオン・クライン。クライン公爵家の長男。肩につかないくらいの輝く金髪と温かなオレンジ色の瞳で天使のようなビジュアルを誇る。可愛いものが好きで本人も美少女のような見た目なので「女のようだ」「頭がおかしい」と馬鹿にされ続け、ありのままの自分でいられなくなってしまう。しかしヒロインと出会い、素の自分を好きになってもらえたことで、自分らしく生きることを決心する。ヒロインに心から微笑んだ時のレオちゃんは本当に天使だった。
「とりあえず主要人物はここまでね」
私は大きくため息を吐いて伸びをした。今まで頑張って思い出したことは何とか数枚の紙に書き起こしておいた。これは誰にも見られないようにしなければならない。そう思って私はその紙束を鍵のついた小箱に入れておいた。この鍵は私しか持っていない。
「よし、これからもっと頑張らなくっちゃ!」
私が長生きすることでラブリリのシナリオが大幅に崩れてしまうのならば私は彼らの幸せを守らなければならない。これは私が伸ばす寿命の分の代金なのだ。
応援ありがとうございます!
11
お気に入りに追加
6,014
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる