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第二章
24話
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学院に帰ってきてすぐに私たちは調査中の面々に得られた情報の報告をした。
「目の奥に暗闇、か。なるほど……良い情報をありがとう」
と、ルカルド様はいつものようにキラキラとした笑顔を向けながら何だか意味深な雰囲気を残していった。一方でルーク様はお忙しいこともあり中々お会いする機会を掴めなかった。なので少し時間を置いて、ラズリアさんには流石に遅いので部屋に戻ってもらい、ラナに外で控えてもらって生徒会室でご報告した。
「そんな場所に、3人だけで行ったのか?」
最初に返ってきたのはこの言葉だった。
「い、いいえ。先生に護衛をお借りしてその方々にも少し離れたところから見ていていただきました」
「そうか、ならいい。君たちのおかげできっと状況が進展するだろう。感謝する。今日はゆっくり休んでくれ」
どうやらまた心配をおかけすることになりかけたようだ。流石に治安もあまり良くないところだったからラナだけでは無理があるものね。そう納得し、挨拶をして立ち去ろうとしたところで何を思ったのかふとルーク様のお顔を見た。もしかして、以前見た時よりもさらにお痩せになっていないだろうか?それに、目の下には薄っすらと隈があるように見える。
「ルーク様こそ、よくお休みになってください。お疲れのように見えます」
この方は私の心配はしてくださるのにご自分のことはあまり大事にしていらっしゃらないのかもしれない。ならばこの方を心配するのは私の役目だ。それに役目じゃなくても気になるものだし。そう思って言うとルーク様はキョトンとした表情をしたように見えた。いや、表情が変わったというよりは纏う空気が変わったように見えた。
「……そう、だな。俺ももう休むことにしよう」
ルーク様はそれまで机の上に広げていた書類を片付け始めた。それを見て私も少し安心し、部屋に戻ることにした。部屋に戻ってベッドに横たわると自分で思っていたよりも疲れていたらしくすぐに眠りについてしまった。
翌日のお昼休み。得られた情報からの考えを全員で共有する必要があるとお兄様が判断なさったので、私たちは空き教室に集められた。
「目の奥に深い闇がある、というのが得られた情報ですよね?」
レオン様がコテンと首を傾げながら確認するように言う。
「はい、ここから一番早く鴉の羽を調達できる店の店主がそう教えてくれました」
「しかしよく教えてもらえたものですね」
カイ様が感心したように言うので少し笑いが漏れてしまう。
「ふふ、これに関してはほとんどレイチェルちゃんの力です」
「レイチェル、ですか?」
可愛らしい妹をこよなく愛していらっしゃるカイ様は大きく目を見開いた。
「ええ、偶然会えたんです。話すと長くなってしまうのでそれに関してはまた今度お話ししますね」
それから私は話題を切り替えることにした。昨日感じたことを話してみようと思ったのだ。確証はないから正直何とも言えないけれど自分の中で抱えておくときっとろくなことにならない。それにこの方々ならちゃんと聞いてくださるはずだ。私は一度大きく息を吸った。
「それで、その情報について一つ気になることがあるのですが……」
「気になること……ぜひお聞きしたいです!」
メルルの優しい笑顔を見て少しホッとした私はそのまま話を続けた。
「似ている気がするんです。店主の言っていた情報と、あの屋上で私が初めてラズリアさんに会ったときに感じた印象が」
「私、ですか?」
「ええ。ですが決してラズリアさんが犯人だと言っているわけではなくて、あの時の、飛び降りてしまいそうだったラズリアさんの瞳と同じだと感じたんです。どこか不安定で、光のない感じが」
「なるほど……」
ルカルド様は考え込むような姿勢をとって相槌を打つ。それにつられるように他の面々もじっくりと考え始めた。今まで一言も発していないリリーちゃんが気になって視線をやると何だか呆然としているように見えた。その様子に不安になって声をかけようとしたけれどそれすらも良くないのではないかと思い止まる。宙ぶらりんになってしまった思考を紛らわすように周囲に視線を動かすと、気のせいでなければルカルド様もリリーちゃんに視線を向けていた。それはただ見るというよりも意識して観察しているようにも見えた。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
更新の時間が遅くなってしまい申し訳ございません……。
「目の奥に暗闇、か。なるほど……良い情報をありがとう」
と、ルカルド様はいつものようにキラキラとした笑顔を向けながら何だか意味深な雰囲気を残していった。一方でルーク様はお忙しいこともあり中々お会いする機会を掴めなかった。なので少し時間を置いて、ラズリアさんには流石に遅いので部屋に戻ってもらい、ラナに外で控えてもらって生徒会室でご報告した。
「そんな場所に、3人だけで行ったのか?」
最初に返ってきたのはこの言葉だった。
「い、いいえ。先生に護衛をお借りしてその方々にも少し離れたところから見ていていただきました」
「そうか、ならいい。君たちのおかげできっと状況が進展するだろう。感謝する。今日はゆっくり休んでくれ」
どうやらまた心配をおかけすることになりかけたようだ。流石に治安もあまり良くないところだったからラナだけでは無理があるものね。そう納得し、挨拶をして立ち去ろうとしたところで何を思ったのかふとルーク様のお顔を見た。もしかして、以前見た時よりもさらにお痩せになっていないだろうか?それに、目の下には薄っすらと隈があるように見える。
「ルーク様こそ、よくお休みになってください。お疲れのように見えます」
この方は私の心配はしてくださるのにご自分のことはあまり大事にしていらっしゃらないのかもしれない。ならばこの方を心配するのは私の役目だ。それに役目じゃなくても気になるものだし。そう思って言うとルーク様はキョトンとした表情をしたように見えた。いや、表情が変わったというよりは纏う空気が変わったように見えた。
「……そう、だな。俺ももう休むことにしよう」
ルーク様はそれまで机の上に広げていた書類を片付け始めた。それを見て私も少し安心し、部屋に戻ることにした。部屋に戻ってベッドに横たわると自分で思っていたよりも疲れていたらしくすぐに眠りについてしまった。
翌日のお昼休み。得られた情報からの考えを全員で共有する必要があるとお兄様が判断なさったので、私たちは空き教室に集められた。
「目の奥に深い闇がある、というのが得られた情報ですよね?」
レオン様がコテンと首を傾げながら確認するように言う。
「はい、ここから一番早く鴉の羽を調達できる店の店主がそう教えてくれました」
「しかしよく教えてもらえたものですね」
カイ様が感心したように言うので少し笑いが漏れてしまう。
「ふふ、これに関してはほとんどレイチェルちゃんの力です」
「レイチェル、ですか?」
可愛らしい妹をこよなく愛していらっしゃるカイ様は大きく目を見開いた。
「ええ、偶然会えたんです。話すと長くなってしまうのでそれに関してはまた今度お話ししますね」
それから私は話題を切り替えることにした。昨日感じたことを話してみようと思ったのだ。確証はないから正直何とも言えないけれど自分の中で抱えておくときっとろくなことにならない。それにこの方々ならちゃんと聞いてくださるはずだ。私は一度大きく息を吸った。
「それで、その情報について一つ気になることがあるのですが……」
「気になること……ぜひお聞きしたいです!」
メルルの優しい笑顔を見て少しホッとした私はそのまま話を続けた。
「似ている気がするんです。店主の言っていた情報と、あの屋上で私が初めてラズリアさんに会ったときに感じた印象が」
「私、ですか?」
「ええ。ですが決してラズリアさんが犯人だと言っているわけではなくて、あの時の、飛び降りてしまいそうだったラズリアさんの瞳と同じだと感じたんです。どこか不安定で、光のない感じが」
「なるほど……」
ルカルド様は考え込むような姿勢をとって相槌を打つ。それにつられるように他の面々もじっくりと考え始めた。今まで一言も発していないリリーちゃんが気になって視線をやると何だか呆然としているように見えた。その様子に不安になって声をかけようとしたけれどそれすらも良くないのではないかと思い止まる。宙ぶらりんになってしまった思考を紛らわすように周囲に視線を動かすと、気のせいでなければルカルド様もリリーちゃんに視線を向けていた。それはただ見るというよりも意識して観察しているようにも見えた。
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更新の時間が遅くなってしまい申し訳ございません……。
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