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第五章水の精霊
山ごと全部で!
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「おう嬢ちゃん、いらっしゃ···ひっ···!」
私の顔を見て短い悲鳴を上げたのは、この店の店員···いや店長だろう。人の顔を見て悲鳴を上げる失礼はともかく、ここは土地や建物を紹介して契約して売る··言わば不動産屋だ。
料理店や服屋のようなわかりやすさの外見ではないと思うので、どれが不動産屋かわかるかなーとか考えていたら、「不動産屋」という親切なぐらいわかりやすい看板があった。もうこれ不動産屋だ。異世界でもあるんだね。
「あの···怪しい者ではないです。顔付きが悪いのは知っていますが、変なやつではないです。少しお時間を頂いてもいいですか?」
以前より少し口が悪くなった感じがするが、こちらもいちいち悲鳴をあげる人達に気を使ってはいられない。私の言葉に気付いたっぽい悲鳴をあげたおじさんが、恥ずかしそうに咳払いをした。
「···えぇと、すまん。気にしないでくれ。で、何の用だ?」
「···普通に家を買いに来ました」
「お、おう···そうだよな···」
こんな顔じゃ客にも見えないのかという文句を心の中でつく。
「えっと···別荘、拠点的な家が欲しいんですけど···」
私が自信なさげな声で言うと、おじさんは「別荘?」と私の格好をちらっと確認した。気持ちはわかるけど行動にデリカシーがないね。
「···まあ立ち話もあれだし、とりあえず座りな」
そう言っておじさんは奥の小さなテーブルと三つの椅子のある場所へ勧めた。おじさんは一つの椅子に「どっこいしょ」といかにもおっさん臭いことを言いながら腰を下ろした。私も一つの椅子に腰を下ろし、もう一つの椅子に鞄を置いた。もちろん毎回のことだが、鞄にフォレとロランがいる。フォレはロランといるとストレスが溜まるようなので早くしよう。
「それで···拠点や別荘ってことはやっぱり家にいないってことだよな?あんた何やってんだ?」
「···えっと、仕事ですか?仕事···うーん、まあ冒険者やってます」
「まさか···A級冒険者···S級冒険者ではないよな!?」
「C級冒険者です」
「あっ···そう。···で、どんな物件をお探しで?」
急に冷めた感じがするおじさん。悪かったね高位ランクじゃなくて。
まあそれはさておき、もちろん···。
「あまり人目につかない、山とかにある別荘みたいな所ないですか?」
きょとんとするおじさん。それからしばらく頭を傾けて「うーん」と唸った。
「詳しくは資料を出さないと見られないが···。お客さん、知っての通りここら辺は平地だ。少し遠くの山に物件があるが···見るかい?」
「確かにここら辺は平地ですね···。少し遠くの山って、どの方向あたりですか?」
「ウチの国と南の隣国、ハイヴェレ王国の国境には山脈がある。ぎりぎりウチの方にある山に、昔貴族が使っていた別荘があるんだ。ちなみにここからハイヴェレ王国に行くには、国境は開放されてるからめんどくせぇ手続きとかはねぇが、魔物が多い山を越えなきゃならねぇんだ」
わざわざ必要な説明をしてくれた。ありがたい。でもその物件、手入れされてそうにないし、国境山かぁ···人はそんなに通らなそうだけど、冒険者(特に魔法使い)が通ったら厄介だ。
「あのー、その別荘付近を通る人っているんですよね?冒険者とか」
「いや、山脈の中でも厳しい山だからなぁ。国境を渡るだけなら向こうの控えめな小さな山を登るだろう」
それを聞いて安心した。でも写真とかはないと思うから、がないからその別荘がどのようなものかはわからない。
「その別荘の···絵とかはないんですよね?」
「前に一度だけ行ったことがあるが、あれは凄いな。王宮の三分の一くらいあるんじゃねぇか?」
そんなに!?とツッコミたくなるのを堪える。あの量の精霊達でもなんとかいけそうかな?でもあの精霊達が別荘だけで満足するとはとても思えない。
「うーん···別荘周辺の土地って買えないですかね?」
「土地ィ!?」
「土地」というワードに食いついてきたおじさん。まあこんなCランク止まりの小娘が土地買いたいなんて言い出したらびっくりだよなぁ。
「···あの土地は一応国が管理している部分もあるが、人も寄り付かない、魔物も多く資源も取れない、正直見放された土地なんだ。買取手がいるならそれでいいと言われたのだが···ほんとにいいのか?」
「はい。できれば川とかを含めた土地がいいです」
私がそう言うとおじさんは「ははっ」と笑いながら頭をかいた。急にどうした。
「どのくらいの面積だ?まさかこの山全部なんて言わねぇだろうな?」
冗談交じりのようにおじさんが言うと、私は素直に「なるほど」と思った。山ごと私有地にしてしまえば、人なんて勝手に入らないじゃないか。まあお金は足りるだろう。
「山ごと全部で!」
私の顔を見て短い悲鳴を上げたのは、この店の店員···いや店長だろう。人の顔を見て悲鳴を上げる失礼はともかく、ここは土地や建物を紹介して契約して売る··言わば不動産屋だ。
料理店や服屋のようなわかりやすさの外見ではないと思うので、どれが不動産屋かわかるかなーとか考えていたら、「不動産屋」という親切なぐらいわかりやすい看板があった。もうこれ不動産屋だ。異世界でもあるんだね。
「あの···怪しい者ではないです。顔付きが悪いのは知っていますが、変なやつではないです。少しお時間を頂いてもいいですか?」
以前より少し口が悪くなった感じがするが、こちらもいちいち悲鳴をあげる人達に気を使ってはいられない。私の言葉に気付いたっぽい悲鳴をあげたおじさんが、恥ずかしそうに咳払いをした。
「···えぇと、すまん。気にしないでくれ。で、何の用だ?」
「···普通に家を買いに来ました」
「お、おう···そうだよな···」
こんな顔じゃ客にも見えないのかという文句を心の中でつく。
「えっと···別荘、拠点的な家が欲しいんですけど···」
私が自信なさげな声で言うと、おじさんは「別荘?」と私の格好をちらっと確認した。気持ちはわかるけど行動にデリカシーがないね。
「···まあ立ち話もあれだし、とりあえず座りな」
そう言っておじさんは奥の小さなテーブルと三つの椅子のある場所へ勧めた。おじさんは一つの椅子に「どっこいしょ」といかにもおっさん臭いことを言いながら腰を下ろした。私も一つの椅子に腰を下ろし、もう一つの椅子に鞄を置いた。もちろん毎回のことだが、鞄にフォレとロランがいる。フォレはロランといるとストレスが溜まるようなので早くしよう。
「それで···拠点や別荘ってことはやっぱり家にいないってことだよな?あんた何やってんだ?」
「···えっと、仕事ですか?仕事···うーん、まあ冒険者やってます」
「まさか···A級冒険者···S級冒険者ではないよな!?」
「C級冒険者です」
「あっ···そう。···で、どんな物件をお探しで?」
急に冷めた感じがするおじさん。悪かったね高位ランクじゃなくて。
まあそれはさておき、もちろん···。
「あまり人目につかない、山とかにある別荘みたいな所ないですか?」
きょとんとするおじさん。それからしばらく頭を傾けて「うーん」と唸った。
「詳しくは資料を出さないと見られないが···。お客さん、知っての通りここら辺は平地だ。少し遠くの山に物件があるが···見るかい?」
「確かにここら辺は平地ですね···。少し遠くの山って、どの方向あたりですか?」
「ウチの国と南の隣国、ハイヴェレ王国の国境には山脈がある。ぎりぎりウチの方にある山に、昔貴族が使っていた別荘があるんだ。ちなみにここからハイヴェレ王国に行くには、国境は開放されてるからめんどくせぇ手続きとかはねぇが、魔物が多い山を越えなきゃならねぇんだ」
わざわざ必要な説明をしてくれた。ありがたい。でもその物件、手入れされてそうにないし、国境山かぁ···人はそんなに通らなそうだけど、冒険者(特に魔法使い)が通ったら厄介だ。
「あのー、その別荘付近を通る人っているんですよね?冒険者とか」
「いや、山脈の中でも厳しい山だからなぁ。国境を渡るだけなら向こうの控えめな小さな山を登るだろう」
それを聞いて安心した。でも写真とかはないと思うから、がないからその別荘がどのようなものかはわからない。
「その別荘の···絵とかはないんですよね?」
「前に一度だけ行ったことがあるが、あれは凄いな。王宮の三分の一くらいあるんじゃねぇか?」
そんなに!?とツッコミたくなるのを堪える。あの量の精霊達でもなんとかいけそうかな?でもあの精霊達が別荘だけで満足するとはとても思えない。
「うーん···別荘周辺の土地って買えないですかね?」
「土地ィ!?」
「土地」というワードに食いついてきたおじさん。まあこんなCランク止まりの小娘が土地買いたいなんて言い出したらびっくりだよなぁ。
「···あの土地は一応国が管理している部分もあるが、人も寄り付かない、魔物も多く資源も取れない、正直見放された土地なんだ。買取手がいるならそれでいいと言われたのだが···ほんとにいいのか?」
「はい。できれば川とかを含めた土地がいいです」
私がそう言うとおじさんは「ははっ」と笑いながら頭をかいた。急にどうした。
「どのくらいの面積だ?まさかこの山全部なんて言わねぇだろうな?」
冗談交じりのようにおじさんが言うと、私は素直に「なるほど」と思った。山ごと私有地にしてしまえば、人なんて勝手に入らないじゃないか。まあお金は足りるだろう。
「山ごと全部で!」
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