イタズラ温泉

釧路太郎

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混浴温泉へ行こう

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「今日はたくさんの人が遊びに来てくれたし、みんな温泉に行こうか」
 俺は友人の紹介でこの店で働くようになったのだが、最初はただのボーイであったはずなのだ。いつの間にかボーイの仕事よりも経理の仕事が増えていき、今では店長という立場を押し付けられていたのだ。まあ、それなりに給料も貰えているし、目立ったトラブルも無いので平穏な日々を送っている。
 ただ、一つだけ問題なことがあるのだが、それは月に一度車で行ける範囲の混浴温泉に行かなくてはいけないという事なのだ。
 なんでも、当店で働いているキャストのために福利厚生の一環として温泉に連れて行くことになったらしいのだが、それなら電車やバスで行けるような普通の温泉にすればいいものの、色々な理由があって混浴温泉にしか行けないという事なのだ。
「今日も運転よろしくね。私達はお酒を抜くためにもひと眠りさせてもらうわね。今日はいい男たくさんいるといいんだけどね」
 五人いるキャストたちはもうすでに深い眠りに落ちているようなのだが、出来ることなら俺が温泉に入って出るまでは目を覚まさないでいて欲しい。なぜなら、温泉に入るにはいくつかの決まりがあって、その決まりの一つに疲れて寝ている人を起こしてはいけないというものがあるのだ。せっかく温泉についても寝たままで起きることが出来なければ温泉に入らずに帰ることになってしまうのだ。今までは何人か疲れて寝たまま帰る人なんかもいたのだが、最近では足りない頭で学習してしまったのか車に乗ってすぐに寝るという事が習慣付いてしまっていたのだ。目的地直前で寝てくれれば温泉に入らないで帰る可能性もあるのだが、そんな人はもうどこにもいません。たまにはゆっくり温泉を楽しみたいのにな。
 ちなみに、助手席で寝ている全体的に小柄な子がいちごで二列目にいるめろんとももは服の上からでも形がわかるくらい大きな胸を持っている。三列目でいびきをかいて寝ているのはみかんとりんごなのだが、この二人は見た目も胸の大きさも普通といった感じだが誰よりもコミュニケーション能力は高いと思う。お酒が入っていても入っていなくても面白い人だというのは間違いのない事だ。

 早朝についたこともあって駐車場には一台も車が止まっていなかったのでキャストたちのテンションは下がり気味だったのだが、俺はそんな事を気に留めるはずもなく脱衣所で一人服を脱いで温泉を堪能することにした。色々と考えることはあるのだが、せっかくここまで来たんだから温泉を楽しまないと損だしね。
 五人いるキャストは他に誰もいないことに不満を持っていたようなのだが、もう少し待っていれば誰かしらやってくるのは分かっているのだ。露出狂なのかは知らないけれど、この人達は皆自分たちの体を知らない男に見られることに喜びを感じてしまう変態なのだ。
「今日はどんな人がくるのか楽しみね」
「ここでの出会いを活かしてお店にも来てくれるといいんだけど、なかなかそう言うのって難しいよね」
「それはあんたが変なこと言うからでしょ。黙ってればバレないのに」
「そんなわけないって。黙っててもすぐにバレちゃうわよ」
「それとさ、可愛い男の子がいたらいつものイタズラしちゃおうか」
「本当にそれ好きだよね。でも、私も嫌いじゃないかも」
「やりすぎて襲われそうになっても店長が助けてくれるだろうしね」
 体を洗いながら楽しそうにしている姿だけを見ると今時の若い女の子にしか見えないのだが、世の中の男性たちはこの人達の本質を見抜けずに顔を見て騙されてしまうんだろうな。何も知らなければ俺も騙されてしまいそうなのだが、残念なことに俺はこの人達の本質を十分に理解してしまっているのだ。
 体の大部分を改造しているとはいえ、張りの良い胸はツンと上を向いていたり普通よりも大きなものを揺らしていたりと様々な形ではあるのだけれど、皆自信を持っているようで誰も隠したりはせずに堂々としているのだ。
 湯船に浸かってしばらく他愛もない会話をしていたのだが、遠くの方から車のエンジン音が聞こえてくると全員が無言になって入口の方を注目していた。
「誰かやってきたけどどんな人だろうね」
「緊張しないで話しかけてくれたらいいんだけど、私達を見て固まっちゃうかもね」
「それはそれで面白いからいいんじゃない」
「ねえ、話し声は若いっぽいよ。私達と同じくらいかも」
 脱衣所には聞こえないような小さな声で会話をしているのを黙って聞いていたのだが、これから入ってくる男の子たちの事を思うと少し胸が痛くなってしまった。変な事を考えたりせずに温泉を楽しんでもらえればいいのだけれど、そうもいかないんだろうな。

 楽しそうに話しながら入ってきた若い男性三人組であったが、湯船に浸かっている俺達を見て一瞬固まってしまった。三人とも湯船に浸かっているキャストたちを見てフリーズしてしまっているのだ。そんな彼らの様子を黙って見た板キャストたちは男性たちとは違って体を隠すことも無く、湯船に浸かっていてもうっすらと見える胸は男性たちを誘っているようでもあった。
 無言のまま体を洗い終えた男性たちは遠慮がちに湯船に入ってきたのだが、キャストの一人が少しだけ男性たちに近付いて話しかけたのだ。
「お兄さんたちってよくここにくるんですか?」
「いや、初めてです」
 三人のうち一人が視線を合わせないままそう答えたのだが、他の二人もこちら側を見ずに壁の方を向いていた。
「そうなんだ。私達はたまに来るんだけどさ、温泉っていいよね。お兄さんたちって私達みたいな子がいるかもって期待してきたの?」
 その問い掛けに答えることはせずに黙っていた男性たちではあったが、もう一人のキャストが湯船から体を出さないように手を使って体を移動させていた。後ろから見ていると背中からお尻にかけてのラインが時々湯船から出ているのがわかるのだが、あの感じだと男性側からだと揺れている胸が丸見えだろう。
「そんな意地悪な質問しちゃダメだって。若い男の子なんだから期待しながらくるに決まってるでしょ。でも、それって当り前のことなのよ。あんただって見せたくてここに来てるくせに」
「ちょっとやめてよね。それじゃまるで私が露出狂みたいじゃない」
「胸を隠さないで堂々としているのって露出狂以外の何者でもないでしょ。私より少し大きいからって積極的に声をかけるのズルいわよ」
「ねえねえ、二人だけでズルいって、私達も話に混ぜてよ」
 キャストたちは男性を囲むように集まって話しかけていたのだが、少しずつではあるが男性たちの緊張も解けてきたようで会話は増えつつあった。ただ、俺に遠慮してなのか視線は顔から下に向くことは無かったように見えた。そんなに遠慮しなくてもみたいなら見ればいいのにと思っていたのだけれど、他人の視線も気になるのだろう。天然モノではないから好きなだけ見てもいいんだよと言いたいのだが、そんなことを言ってしまったらキャストたちに恨まれてしまうと思うので俺は黙っていることにしているのだ。
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