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2話 セルフ返り討ち(ナターシャ視点)

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 たった今起こっていることが信じられなかった。ソフィアを犯人に仕立て上げていたのは本当のことだけど、魔法なんて使えない。

 一瞬取り乱してしまったけど、ソフィアの目論見通りになっている状態だと気がついてなんとか気持ちを落ち着けた。

「誰か先生を呼んでくれ! ……ナターシャ、大丈夫か? 怪我は?」

「モーリス殿下っ、私は大丈夫ですわ」

「そうか、じゃあ放っておいても平気だな? 僕はソフィアを追いかけないと!」

「え? ちょっと、お待ちください──」

 言いおわらないうちから、モーリスは足早に去っていってしまった。ひとりで呆然と立ち尽くしていると、呼ばれてやってきた教師がナターシャに近づいてくる。

「……大丈夫か? 怪我は?」

 ナターシャに優しく声をかけてきた教師の顔は引き攣っているように見えた。いつもの端整な顔立ちなのに、かっこよさ三割減といった感じ。

「怪我はありませんわ、ありがとうございます」

「……何があったのか、他の奴らから聞いた」

「そうですか」

 はっきりと確信した。教師の目には疑いがある。ナターシャの自作自演であると思っている目をしている。

 ナターシャは焦る気持ちを抑えて、必死に頭の中で考える。どうしたらこの状況を打破して教師も、周囲も味方につけられるのか。

 そして、神妙な面持ちを作ると教師に聞こえるように低めのトーンで告げた。

「……ソフィアにしてやられたのでは。あの子は魔法を使えるようになったのかもしれません」

「ソフィアが魔法を使えるなんて……ありえない」

 ナターシャは、自分の言い分を完全に信じ込んでいた教師に冷静な部分が残っていることに驚いた。

 今日でソフィアを打ち負かせると思っていたのに、予想していなかった状況が出来てしまって焦りがでてくる。

「どうしてそう言い切れるのですか?」

「ソフィアが魔法を使えるなら、なぜ今までナターシャを直接いじめてたんだ?」

「それは……っ、魔法は最近使えるようになったからでは? 今までは使えなくて、私のことを直接いじめるしかなかった」

「ええと、ナターシャが階段から突き落とされたのが先週のことだから……。この一週間でいきなりあんな正確な魔法を使えるようになったということか?」

「その可能性は否めないでしょう?」

「そうだな、否定することはできない」

 階段から突き落とされたように見せかけるために、わざわざ教師が目撃するように仕組んだ。ナターシャがいじめられたと訴えても半信半疑の態度を崩さなかったから。

 それが返ってナターシャ自身を苦しめることになるとは想像もしていなかった。
 
「……先生、今まで私に対して酷いことをしてきたのはあのソフィアですよ?」

「詳しく調査しなおす必要があるだろう?」


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