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優しくて厳しいお兄様
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「……なるほど。そう言う事か。フォンターナ卿に正式に礼をしなくてはならない。父上にはその旨話しておく」
わぁ。お兄様が怒っているわ。エミリオ様、もといフォンターナ卿は、お兄様に心配を掛けていたのなら先に説明した方がいい。と言って席を外してくれた。
それからお兄様とフォンターナ卿の元へ行った。フェルナンドはお互いを知っているため紹介役をかってくれて、自己紹介してお礼を言った。お兄様は腰を深く折り挨拶していた。
「ルーナ、卿と話があるようだがこんな事があったんだから今日は家に帰ろうか。申し訳ありませんが後日お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
お兄様って口も態度も悪いけれど、ちゃんとした挨拶も出来るのね……
「礼は結構だよ。令嬢が助けを求めていれば手を差しのべるのは当然だ。それにルーナ嬢の事は知っているから間に合って良かったとさえ思っているよ」
にこりと笑みを浮かべるフォンターナ卿。
「いえ、そう言うわけにはいきません。ルーナそうだよな?」
……フォンターナ卿は隣国の公爵家の方。失礼があってはいけないものね。
「はい。フォンターナ卿、本日はありがとうございました。もしよろしかったら我が家でお茶を飲みませんか? 美味しいお菓子を用意させて下さい!」
すると、はははっ……とフォンターナ卿が笑い出した。あれ何か失礼な事を……
「美味しいお菓子を用意してくれるのなら行かなくては失礼だな。礼は不要だがせっかくのお誘いだ。寄らせてもらうよ」
ほっとした。お兄様もふぅ。と息を吐いている。フォンターナ卿のようなすごい人と庶民の街で偶然あったりするなんて思わないもん。それに鉄道ってあの鉄道でしょう? みんな開通を心待ちにしているあのすごい乗り物!
*****
「ルーナ、先程の件で分かったように男の力には抗えないんだ。もし、フォンターナ卿が助けに来てくれなかったらお前のような子娘はあっという間に、侯爵家に戻されていたぞ。あの家に戻りたいのか? 襲ってきた男は初めからお前の事を狙っていたんだ。油断するからこんなことが起きるのだ。誰にでも良い顔をするんじゃない」
ここは馬車の中。両親に先に帰ると伝えてお兄様と帰ることにした。
そうよね。あの人に何かされていたら……ゾッとした。あの場でされる事を考えた。顔が近づいてきてたから唇を奪われたり。
急に体が震え出した。今思うと本当に危機一髪だったのね。
涙が溢れてきた。
そう思うとジョゼフは私のことをそういう目で見ていたと言いながらも無理やり、その……襲ってきたりはしなかった。最低な人間だったけど契約無効だと言って体の関係になってもおかしくはなかったのかもしれない。
そんな目で見られている事も知らなかったから冷たい態度をとっていれば、相手にされないと思っていた。契約書の存在は私の中で大きかった。
ジョゼフの親戚だからと言ってそうとは限らないのに、お兄様の言う通り私は油断したんだ。
「ようやく理解したようだな? 王宮だからこんなことがあり得るわけないなどと考えていたんだろう? 王宮であっても休憩室やテラスなど人目のつかないところは沢山あるんだ。婚約者のいないおまえが一人で彷徨くという事はそこに隙がうまれるということだ。王宮のパーティーにはたくさんの貴族達が呼ばれる。マナーがなっているもの、なっていないものまで……もっと早くに気づいてやれなくて悪かった。これから化粧室といえど一人で行動するのは控えてくれ」
お兄様の言う通りだわ。自分の常識(マナー)が人と同じだと思ったら大間違いなのよね。反省しかないし、こんなこと身をもって体験するなんて……私はバカだわ。
「せっかく離縁が成立したのにまたあの家に出戻る事になったかもしれないんだからな! そんな事誰も望んでいない。またジョゼフ殿と顔を合わす事になっていただろうな。ふむ。侯爵家にはかなりきつめに抗議するようにと父には進言しておこう」
お兄様が悪い顔をしていた。
「いつも迷惑ばかりかけてごめんなさい」
「まだ泣いているのか……分かればそれで良い。それに妹が兄に迷惑などと考えなくても良い。今回の件は相手が悪い。あの家はうちに一生頭が上がらなくなるだけだ。邸が見えてきたぞ、くよくよ考えずに今日は湯船に浸かってからすぐ寝ろ。これは命令だ」
厳しくも優しいお兄様。ずっと誤解していたみたいね。結婚してなかったら分からなかったかもしれない。
わぁ。お兄様が怒っているわ。エミリオ様、もといフォンターナ卿は、お兄様に心配を掛けていたのなら先に説明した方がいい。と言って席を外してくれた。
それからお兄様とフォンターナ卿の元へ行った。フェルナンドはお互いを知っているため紹介役をかってくれて、自己紹介してお礼を言った。お兄様は腰を深く折り挨拶していた。
「ルーナ、卿と話があるようだがこんな事があったんだから今日は家に帰ろうか。申し訳ありませんが後日お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
お兄様って口も態度も悪いけれど、ちゃんとした挨拶も出来るのね……
「礼は結構だよ。令嬢が助けを求めていれば手を差しのべるのは当然だ。それにルーナ嬢の事は知っているから間に合って良かったとさえ思っているよ」
にこりと笑みを浮かべるフォンターナ卿。
「いえ、そう言うわけにはいきません。ルーナそうだよな?」
……フォンターナ卿は隣国の公爵家の方。失礼があってはいけないものね。
「はい。フォンターナ卿、本日はありがとうございました。もしよろしかったら我が家でお茶を飲みませんか? 美味しいお菓子を用意させて下さい!」
すると、はははっ……とフォンターナ卿が笑い出した。あれ何か失礼な事を……
「美味しいお菓子を用意してくれるのなら行かなくては失礼だな。礼は不要だがせっかくのお誘いだ。寄らせてもらうよ」
ほっとした。お兄様もふぅ。と息を吐いている。フォンターナ卿のようなすごい人と庶民の街で偶然あったりするなんて思わないもん。それに鉄道ってあの鉄道でしょう? みんな開通を心待ちにしているあのすごい乗り物!
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「ルーナ、先程の件で分かったように男の力には抗えないんだ。もし、フォンターナ卿が助けに来てくれなかったらお前のような子娘はあっという間に、侯爵家に戻されていたぞ。あの家に戻りたいのか? 襲ってきた男は初めからお前の事を狙っていたんだ。油断するからこんなことが起きるのだ。誰にでも良い顔をするんじゃない」
ここは馬車の中。両親に先に帰ると伝えてお兄様と帰ることにした。
そうよね。あの人に何かされていたら……ゾッとした。あの場でされる事を考えた。顔が近づいてきてたから唇を奪われたり。
急に体が震え出した。今思うと本当に危機一髪だったのね。
涙が溢れてきた。
そう思うとジョゼフは私のことをそういう目で見ていたと言いながらも無理やり、その……襲ってきたりはしなかった。最低な人間だったけど契約無効だと言って体の関係になってもおかしくはなかったのかもしれない。
そんな目で見られている事も知らなかったから冷たい態度をとっていれば、相手にされないと思っていた。契約書の存在は私の中で大きかった。
ジョゼフの親戚だからと言ってそうとは限らないのに、お兄様の言う通り私は油断したんだ。
「ようやく理解したようだな? 王宮だからこんなことがあり得るわけないなどと考えていたんだろう? 王宮であっても休憩室やテラスなど人目のつかないところは沢山あるんだ。婚約者のいないおまえが一人で彷徨くという事はそこに隙がうまれるということだ。王宮のパーティーにはたくさんの貴族達が呼ばれる。マナーがなっているもの、なっていないものまで……もっと早くに気づいてやれなくて悪かった。これから化粧室といえど一人で行動するのは控えてくれ」
お兄様の言う通りだわ。自分の常識(マナー)が人と同じだと思ったら大間違いなのよね。反省しかないし、こんなこと身をもって体験するなんて……私はバカだわ。
「せっかく離縁が成立したのにまたあの家に出戻る事になったかもしれないんだからな! そんな事誰も望んでいない。またジョゼフ殿と顔を合わす事になっていただろうな。ふむ。侯爵家にはかなりきつめに抗議するようにと父には進言しておこう」
お兄様が悪い顔をしていた。
「いつも迷惑ばかりかけてごめんなさい」
「まだ泣いているのか……分かればそれで良い。それに妹が兄に迷惑などと考えなくても良い。今回の件は相手が悪い。あの家はうちに一生頭が上がらなくなるだけだ。邸が見えてきたぞ、くよくよ考えずに今日は湯船に浸かってからすぐ寝ろ。これは命令だ」
厳しくも優しいお兄様。ずっと誤解していたみたいね。結婚してなかったら分からなかったかもしれない。
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