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★高等部3年生①
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わたし達は最後の学年になった。
お母様に会う前にレオ様に会う。
わたしはアランを捕まえた。
「アラン、大事な話があるの、少しだけ時間もらえるかな?」
「あー、もう、わかったよ」
アランは最近わたしを避けている。
伯爵家の問題でハノン伯母様に多少操られていたメアリー様の件もありわたし達はお互い無意識に話題を避けていた。
放課後、学園の庭園のベンチに座った。
「アラン、わたし貴方のお父様に一度お会いしようと思っているの」
「それって君の父親だろう?」
「わたしのお父様はボガード侯爵よ。今更レオ様を父親としては見れないわ」
「父上は君たちをずっと見守ってきたんだ、流石にその一言はきついと思うよ」
「それは勝手にしてきたことだと思うの、わたしはほとんど話したこともないしどんな人なのかも知らないわ」
「……そうだな、俺もラウル様に対して同じだもんな。今更父親としてみろと言われても難しいよ」
「ごめんなさい、ハノン伯母様がわたし達の人生を狂わせたのよね」
「違うよ、俺の母上もラウル様も父上もみんなが少しずつ間違った選択をしたんだと思う。それが拗れて……犯罪にまでなっていったんだ。エイミーこそ被害者だ、謝るな。俺はお前に対してずっと当たっていたんだ、その髪の色が父上と同じで羨ましかった。まさか実の娘だとは思っていなかったけどね」
「レオ様はまだお母様のことを思っているらしいの……知ってた?」
「……うん……俺は……出て行くべきだと思ってはいるんだ、ただ……ごめん、ずるいよな、君の家庭を駄目にしたのに父上の息子でいたいと思ってしまう」
「え?駄目なの?わたしはボガード家の娘で居たいわ、だってわたしのお父様よ。お母様は確かに二人いるけどその二人も大事なの。だってそうやってその環境で育ったのよ?そこは変えれないわ」
アランの気持ちはわかる。でもわたし達はそれぞれ、その環境で育ったんだもん。何も悪い訳が無い。
「エイミーはいつも真っ直ぐで……俺はずっと捻くれてた」
「あら?やっと認めたの?貴方の捻くれ方は中々のものよ、でもあの環境の中でよく頑張って育ったと思うわ、エライ、エライ」
わたしはアランの頭を撫でてあげた。
「ハァー……君といると俺が色々悩んでいるのが馬鹿らしくなってしまう」
「そんなに悩むことがあるの?」
「だから、ルディア様と父上が再婚するなら俺は邪魔だろう?」
「ああ、そうね、邪魔でしょうね。わたしと三人で本当の親子になるのがベストなんだと思うわ」
「…………わかってる」
「でもお母様は他の人と領地の立て直しの為に再婚するらしいわ」
「え?」
「たぶん受け入れられないんだと思うの。貴方を息子として扱うのも、レオ様とメアリー様が過ごした年月も、だからレオ様と戻ることはないんだと思うわ」
「俺たち親子がルディア様に辛い思いを未だにさせているんだ」
「うーん、そうだけどそうではないわ。お母様が弱過ぎるのよ、もう過去なんだから変えれないのに拘っているのよ、あの性格を変えない限り仕方がないわ」
「……君は父上を許せるのか?」
「許すって言っても何もされていないから許しようがないわ。レオ様と話してみたいの。どんな人なのか知りたいと思うの。でも、貴方に隠れて会うのは嫌だったから今日話そうと思ったの」
「俺がとやかく言う事ではないから好きに会えばいいと思うよ」
「うん、ありがとう、アラン、貴方はレオ様の息子だと思うよ。だって18年間そうやって育ってきたの、わたし達のことなんか気にしないでいいと思うわ、お母様が再婚したいなら誰とでもすればいいと思うの」
「そんなこと言っていいの?」
「だって二人はすれ違ってきたんだもん、それを元に戻すかどうかは本人次第だわ」
わたしは子どもみたいなお母様に対して少し腹を立てていた。アランに対して母親になれないって気持ちは少しならわかるけど、再婚しても別にいい母親になる必要なんてないと思うの。
「アラン、話を聞いてくれてありがとう、またいつものように話せるようになったら嬉しいわ、お互いちょっと避けてたから」
「ごめん、君とどう接するべきかわからなくなっていたんだ」
わたしとアランはお互い笑って別れた。
◇ ◇ ◇
(エイミーごめん、俺お前に惹かれていたんだ。だから兄妹になるかもしれないと思うと嫌だったんだ)
俺はエイミーと別れてから邸に戻った。
この邸は母と暮らした邸で今は使用人達と俺だけが住んでいる。
偶に父上が会いに来てくれる。
そしてもう一人の父親であるラウル様とは剣術を教わり師匠と弟子のような関係になっている。
厳しく教えてくれる人、今は父親と言うより尊敬する人へとなり彼を超えてみたいと思うようになってきた。
今日はラウル様が邸に来て剣術の鍛錬をした。
「いつもと違うが何かあったのか?」
「すみません、大した事ではありません」
「このまま練習をしても身につかない、今日は止めよう」
「……すみません」
ラウル様は俺が話すのを待って隣で黙って待っていてくれた。
俺はハノン様のことからルディア様のこと、エイミーのことも話した。
こんな風に自分の心の中を全て話すのは初めてだった。
俺はいつの間にか泣いていた。
好きな子に好きと言えない。
苦しめるだけなんだとわかっているから。
最近は少し離れてそっと見ているしかなかった。
俺には何も言う資格はなかったから……
「アラン、もし君が今の現状が辛いならわたしはいつでも君を受け入れる準備はしている。君が自分の意思で好きに決めなさい。侯爵家に残ってもいいし公爵家に来ても良いんだ。わたしは父に公爵を返したが本当はそろそろわたしが爵位をもう一度継がなければいけない、その後の後継者として君がなってくれるなら嬉しい」
俺はすぐに返事が出来なかった。
お母様に会う前にレオ様に会う。
わたしはアランを捕まえた。
「アラン、大事な話があるの、少しだけ時間もらえるかな?」
「あー、もう、わかったよ」
アランは最近わたしを避けている。
伯爵家の問題でハノン伯母様に多少操られていたメアリー様の件もありわたし達はお互い無意識に話題を避けていた。
放課後、学園の庭園のベンチに座った。
「アラン、わたし貴方のお父様に一度お会いしようと思っているの」
「それって君の父親だろう?」
「わたしのお父様はボガード侯爵よ。今更レオ様を父親としては見れないわ」
「父上は君たちをずっと見守ってきたんだ、流石にその一言はきついと思うよ」
「それは勝手にしてきたことだと思うの、わたしはほとんど話したこともないしどんな人なのかも知らないわ」
「……そうだな、俺もラウル様に対して同じだもんな。今更父親としてみろと言われても難しいよ」
「ごめんなさい、ハノン伯母様がわたし達の人生を狂わせたのよね」
「違うよ、俺の母上もラウル様も父上もみんなが少しずつ間違った選択をしたんだと思う。それが拗れて……犯罪にまでなっていったんだ。エイミーこそ被害者だ、謝るな。俺はお前に対してずっと当たっていたんだ、その髪の色が父上と同じで羨ましかった。まさか実の娘だとは思っていなかったけどね」
「レオ様はまだお母様のことを思っているらしいの……知ってた?」
「……うん……俺は……出て行くべきだと思ってはいるんだ、ただ……ごめん、ずるいよな、君の家庭を駄目にしたのに父上の息子でいたいと思ってしまう」
「え?駄目なの?わたしはボガード家の娘で居たいわ、だってわたしのお父様よ。お母様は確かに二人いるけどその二人も大事なの。だってそうやってその環境で育ったのよ?そこは変えれないわ」
アランの気持ちはわかる。でもわたし達はそれぞれ、その環境で育ったんだもん。何も悪い訳が無い。
「エイミーはいつも真っ直ぐで……俺はずっと捻くれてた」
「あら?やっと認めたの?貴方の捻くれ方は中々のものよ、でもあの環境の中でよく頑張って育ったと思うわ、エライ、エライ」
わたしはアランの頭を撫でてあげた。
「ハァー……君といると俺が色々悩んでいるのが馬鹿らしくなってしまう」
「そんなに悩むことがあるの?」
「だから、ルディア様と父上が再婚するなら俺は邪魔だろう?」
「ああ、そうね、邪魔でしょうね。わたしと三人で本当の親子になるのがベストなんだと思うわ」
「…………わかってる」
「でもお母様は他の人と領地の立て直しの為に再婚するらしいわ」
「え?」
「たぶん受け入れられないんだと思うの。貴方を息子として扱うのも、レオ様とメアリー様が過ごした年月も、だからレオ様と戻ることはないんだと思うわ」
「俺たち親子がルディア様に辛い思いを未だにさせているんだ」
「うーん、そうだけどそうではないわ。お母様が弱過ぎるのよ、もう過去なんだから変えれないのに拘っているのよ、あの性格を変えない限り仕方がないわ」
「……君は父上を許せるのか?」
「許すって言っても何もされていないから許しようがないわ。レオ様と話してみたいの。どんな人なのか知りたいと思うの。でも、貴方に隠れて会うのは嫌だったから今日話そうと思ったの」
「俺がとやかく言う事ではないから好きに会えばいいと思うよ」
「うん、ありがとう、アラン、貴方はレオ様の息子だと思うよ。だって18年間そうやって育ってきたの、わたし達のことなんか気にしないでいいと思うわ、お母様が再婚したいなら誰とでもすればいいと思うの」
「そんなこと言っていいの?」
「だって二人はすれ違ってきたんだもん、それを元に戻すかどうかは本人次第だわ」
わたしは子どもみたいなお母様に対して少し腹を立てていた。アランに対して母親になれないって気持ちは少しならわかるけど、再婚しても別にいい母親になる必要なんてないと思うの。
「アラン、話を聞いてくれてありがとう、またいつものように話せるようになったら嬉しいわ、お互いちょっと避けてたから」
「ごめん、君とどう接するべきかわからなくなっていたんだ」
わたしとアランはお互い笑って別れた。
◇ ◇ ◇
(エイミーごめん、俺お前に惹かれていたんだ。だから兄妹になるかもしれないと思うと嫌だったんだ)
俺はエイミーと別れてから邸に戻った。
この邸は母と暮らした邸で今は使用人達と俺だけが住んでいる。
偶に父上が会いに来てくれる。
そしてもう一人の父親であるラウル様とは剣術を教わり師匠と弟子のような関係になっている。
厳しく教えてくれる人、今は父親と言うより尊敬する人へとなり彼を超えてみたいと思うようになってきた。
今日はラウル様が邸に来て剣術の鍛錬をした。
「いつもと違うが何かあったのか?」
「すみません、大した事ではありません」
「このまま練習をしても身につかない、今日は止めよう」
「……すみません」
ラウル様は俺が話すのを待って隣で黙って待っていてくれた。
俺はハノン様のことからルディア様のこと、エイミーのことも話した。
こんな風に自分の心の中を全て話すのは初めてだった。
俺はいつの間にか泣いていた。
好きな子に好きと言えない。
苦しめるだけなんだとわかっているから。
最近は少し離れてそっと見ているしかなかった。
俺には何も言う資格はなかったから……
「アラン、もし君が今の現状が辛いならわたしはいつでも君を受け入れる準備はしている。君が自分の意思で好きに決めなさい。侯爵家に残ってもいいし公爵家に来ても良いんだ。わたしは父に公爵を返したが本当はそろそろわたしが爵位をもう一度継がなければいけない、その後の後継者として君がなってくれるなら嬉しい」
俺はすぐに返事が出来なかった。
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