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セリーヌ編 悔恨。
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カトリーヌ様が記憶を取り戻したと聞いた。
記憶をなくしたカトリーヌ様はいつも空虚だった。
物静かな作り笑い。
話をしていても楽しそうではない。
あんなに負けず嫌いで泣いたり怒ったり笑ったりしていたカトリーヌ様が「今」を生きるために仕方なくここに居ると言う感じ。
お父様が何を仕出かすかわからない毎日の中でカトリーヌ様のそばにいることで必死で守ろうとした。
それは多分イーサン殿下も同じだったのだと思う。
彼もカトリーヌ様が記憶を失われてから態度が一変した。周りの悪意を排除しようと動いたり出来るだけ時間を作りカトリーヌ様のそばにいるように心がけていた。
「カトリーヌ、今日は一緒にランチをしよう」
イーサン殿下が中等部に来て声をかける。
カトリーヌ様は「はい」とだけ答えて二人で静かな時間を過ごした。
二人の間に会話はもちろんある。
ただ穏やかで静かな時間。
そこには全くカトリーヌ様には嬉しいとか楽しいと言う感情はなかったように感じた。
ただいつも静かに微笑んでいた。
イーサン殿下はそんなカトリーヌ様を切なそうに見ていた。まるでずっと愛していたかのように。
そんな二人の間に婚約解消の話は出てこない。
お父様は常にイライラしていた。
わたしが知っていたのは馬車の事故。
そして薬を盛ろうとしたことくらいだった。
でも多分他にも何かしていたのだろうとは感じていた。後で実際に薬を盛ろうとしていたことは知るのだが。
わたしはずっとイーサン殿下に恋をしていた。
でも彼のカトリーヌ様に寄り添う姿を見て諦めるしかなかった。
わたしが入る隙なんてどこにもなかった。
カトリーヌ様のそばにいるわたし達のことなんてイーサン殿下は見向きもしない。
彼の目線の先はいつもカトリーヌ様だけ。
ーー羨ましいとは思ったけど、もう嫉妬や憎しみはなかった。
二人だけの空気の中にわたしは邪魔でしかなかったから。
ーーーーー
記憶を取り戻したカトリーヌ様。
わたしは友人ということでカトリーヌ様が襲われそうになったこと、イーサン殿下が助けたことを知らされた。
詳しい内容はわからなかったけど
『またお父様が?』と疑ってしまった。
屋敷に戻りお父様に呼ばれた。
「セリーヌは知っているのか?カトリーヌ嬢が記憶を取り戻してしまったことを」
「はい聞いております、今日会いに行きました、明日からまた学校に通学するそうです」
「そうか……」
「ただ、この3年間の記憶は逆に失くしてしまいました」
「本当か?だったらわたしがしでかしたこともバレていないな」
「しでかしたこと?」
「まぁちょっと殺そうと何度かしたのだが失敗に終わったんだ。ここまで来たら死んでもらうしかない。ったく、記憶を取り戻させるなんて、バカな失敗をしおって、犯して狂わせればよかったものを」
まるで襲った犯人を知っているみたいだった。
ーー殺す?犯す?
この人は何を言っているのだろう。
わたしが驚いた顔をしていたら
「お前が薬を盛ることを断るから仕方がないだろう。食堂の調理人や貧乏学生に大金を渡してやらせようとしたんだ。だが下手くそでバレたんだ。おかげで大金はパーさ」
「で、でも、そんな話は学校では聞いておりません」
「イーサン殿下がカトリーヌ嬢を守っているんだ。邪魔ばかりしおって忌々しい。流石に4回も失敗したからな、次の手を考えているところだったんだが、犯すのも失敗した。イーサン殿下にはまだ尻尾は掴まれていないがお前は大人しくカトリーヌ嬢と仲良くしておけ」
「あ、あの失敗した人たちはどうなったのですか?」
「そんなもの大金を渡したんだ。家族のために死んださ」
「…………」
ーー狂っている。お父様もそのカトリーヌ様を犯そうとした人も。
わたしはどうなるのだろう。イーサン殿下の婚約者に選ばれなければわたしの未来も「死」しかないのだろうか。
こうして記憶を取り戻したカトリーヌ様は明るい笑顔でわたしと接してきた。
わたしの罪も裏切りも知ることもなく。
なのにまたカトリーヌ様の馬車が狙われたらしい。
そしてカトリーヌ様はわたしの目を見て聞いてきた。
『セリーヌ様はわたしの敵ですか?馬車の車輪にヒビが入っていたのはセリーヌ様の指示ですか?わたしの悪い噂はあなたが流したのですか?』
わたしは突然の質問に答えることができなかった。
記憶をなくしたカトリーヌ様はいつも空虚だった。
物静かな作り笑い。
話をしていても楽しそうではない。
あんなに負けず嫌いで泣いたり怒ったり笑ったりしていたカトリーヌ様が「今」を生きるために仕方なくここに居ると言う感じ。
お父様が何を仕出かすかわからない毎日の中でカトリーヌ様のそばにいることで必死で守ろうとした。
それは多分イーサン殿下も同じだったのだと思う。
彼もカトリーヌ様が記憶を失われてから態度が一変した。周りの悪意を排除しようと動いたり出来るだけ時間を作りカトリーヌ様のそばにいるように心がけていた。
「カトリーヌ、今日は一緒にランチをしよう」
イーサン殿下が中等部に来て声をかける。
カトリーヌ様は「はい」とだけ答えて二人で静かな時間を過ごした。
二人の間に会話はもちろんある。
ただ穏やかで静かな時間。
そこには全くカトリーヌ様には嬉しいとか楽しいと言う感情はなかったように感じた。
ただいつも静かに微笑んでいた。
イーサン殿下はそんなカトリーヌ様を切なそうに見ていた。まるでずっと愛していたかのように。
そんな二人の間に婚約解消の話は出てこない。
お父様は常にイライラしていた。
わたしが知っていたのは馬車の事故。
そして薬を盛ろうとしたことくらいだった。
でも多分他にも何かしていたのだろうとは感じていた。後で実際に薬を盛ろうとしていたことは知るのだが。
わたしはずっとイーサン殿下に恋をしていた。
でも彼のカトリーヌ様に寄り添う姿を見て諦めるしかなかった。
わたしが入る隙なんてどこにもなかった。
カトリーヌ様のそばにいるわたし達のことなんてイーサン殿下は見向きもしない。
彼の目線の先はいつもカトリーヌ様だけ。
ーー羨ましいとは思ったけど、もう嫉妬や憎しみはなかった。
二人だけの空気の中にわたしは邪魔でしかなかったから。
ーーーーー
記憶を取り戻したカトリーヌ様。
わたしは友人ということでカトリーヌ様が襲われそうになったこと、イーサン殿下が助けたことを知らされた。
詳しい内容はわからなかったけど
『またお父様が?』と疑ってしまった。
屋敷に戻りお父様に呼ばれた。
「セリーヌは知っているのか?カトリーヌ嬢が記憶を取り戻してしまったことを」
「はい聞いております、今日会いに行きました、明日からまた学校に通学するそうです」
「そうか……」
「ただ、この3年間の記憶は逆に失くしてしまいました」
「本当か?だったらわたしがしでかしたこともバレていないな」
「しでかしたこと?」
「まぁちょっと殺そうと何度かしたのだが失敗に終わったんだ。ここまで来たら死んでもらうしかない。ったく、記憶を取り戻させるなんて、バカな失敗をしおって、犯して狂わせればよかったものを」
まるで襲った犯人を知っているみたいだった。
ーー殺す?犯す?
この人は何を言っているのだろう。
わたしが驚いた顔をしていたら
「お前が薬を盛ることを断るから仕方がないだろう。食堂の調理人や貧乏学生に大金を渡してやらせようとしたんだ。だが下手くそでバレたんだ。おかげで大金はパーさ」
「で、でも、そんな話は学校では聞いておりません」
「イーサン殿下がカトリーヌ嬢を守っているんだ。邪魔ばかりしおって忌々しい。流石に4回も失敗したからな、次の手を考えているところだったんだが、犯すのも失敗した。イーサン殿下にはまだ尻尾は掴まれていないがお前は大人しくカトリーヌ嬢と仲良くしておけ」
「あ、あの失敗した人たちはどうなったのですか?」
「そんなもの大金を渡したんだ。家族のために死んださ」
「…………」
ーー狂っている。お父様もそのカトリーヌ様を犯そうとした人も。
わたしはどうなるのだろう。イーサン殿下の婚約者に選ばれなければわたしの未来も「死」しかないのだろうか。
こうして記憶を取り戻したカトリーヌ様は明るい笑顔でわたしと接してきた。
わたしの罪も裏切りも知ることもなく。
なのにまたカトリーヌ様の馬車が狙われたらしい。
そしてカトリーヌ様はわたしの目を見て聞いてきた。
『セリーヌ様はわたしの敵ですか?馬車の車輪にヒビが入っていたのはセリーヌ様の指示ですか?わたしの悪い噂はあなたが流したのですか?』
わたしは突然の質問に答えることができなかった。
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