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なな
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「……あっ、うん、わたし……気がつかなかったみたいなの……奥様の優しい言葉の裏には、わたしへの優しさなんて全くなかった。「ごめんなさいね娘が」と言いながらわたしのことを嘲笑っていたのではないかとやっと気がついたの」
バズールはわたしの頭に手を置くと髪の毛をクシャクシャっとしながら
「素直なところがライナのいいところだと思うよ。それに婚約者がいながら蔑ろにして仕事を優先し過ぎるシエルが一番悪い」
「仕事を優先……バズールったら良い言い方を知っているのね。わたしから心が離れたのではなくて仕事を優先し過ぎたのね。
うん、そう思うと心がすこし楽になれたかも」
わたしはベンチから立ち上がりバズールの前でにっこりと微笑んだ。
「バズール、ありがとう。明後日の学園祭楽しみにしているわ。向こうでは少しは時間作れる?会うのは難しいのかしら?」
「うーん、たぶん昼休憩があるから俺の担当の教室に顔を出して。案内のパンフレット渡しておくから、場所は印をつけておくよ」
「ありがとう、今更だけどわたしも高等部へ通えばよかったかな。お父様に頼んでどこかの国に留学するのもアリかな?」
「留学かあ、俺も卒業したらオリソン国へ一年間行く予定なんだ。ライナも試験受けてみたら?本当はお前成績良かったんだから半年間勉強頑張ったら受かると思うよ」
「そうだね、実家の商会をもっと大きくしたいし外国へ行けば勉強になるわよね?」
「おっ、女当主になるつもり?」
「だって一人娘だもの、良い婿さん探すか一人で頑張るしかないもの」
「俺には兄弟いるからいざとなれば弟達に継いでもらえるけどライナのところは一人だもんな……ま、お互い当主候補として頑張ろう」
「うん!」
最近ずっと落ち込むことが多かったけど、学園祭も楽しみだし、留学のことを考えるのも楽しそう。
実現させるなら勉強頑張らないといけないけど、高等部には行かなかったけど勉強は好きなのでずっと仕事の合間に実はバズールから教科書をもらって自分なりには勉強をしていた。
「今度詳しい試験の申し込みの仕方の資料を用意しておくよ」
「留学はするとしてバズールと同じところ決定なの?」
「え?だってライナって人見知りがあるから馴染むのに時間かかるだろう?」
「うっ……確かに」
ーーほんとバズールってわたしの良いところも悪いところも苦手なところもよく分かっているので取り繕うこともできないのよね。
「そろそろ肌寒くなったから部屋に戻ろう」
バズールは着ていた上着を脱いでわたしの肩にそっとかけてくれた。
「えっ、バズールが寒くなるわ、わたしは大丈夫だよ」
「そんな薄着してたら風邪引くぞ。それにしてやったのに返されたら俺の好意が無になるだろう」
「ふふ、バズールがわたしを女の子として接するなんて……」
「俺は女性には優しいからね」
「わたし以外には、でしょ?」
「あーー、確かにライナに優しくしても仕方ないからな」
「いとこなんてそんなものよね」
「………お前にはシエルがいたからな」
バズールが小さな声で何か言った気がして
「何か言った?」と聞いたら「別に」といつもの愛想のない返事が返ってきた。
それでもわたしの歩調に合わせて歩いてくれるバズールの優しさがなんだか恥ずかしくて、ふふッと笑いながら帰った。
屋敷に戻るといつの間にか戻っていたサマンサが温かい紅茶を淹れてくれた。
「ライナ様なんだか嬉しそうですね?バズール様といるとライナ様はとてもご機嫌なのでホッとします」
「心配かけてごめんなさい……確かにこの屋敷に来てからあまりシエルのこと考えないで済んでいるわ。お祖母様達のおかげね」
「ソウデスネ」サマンサが何故か小さな声で呆れたように返事をして「ハア」と大きな溜息を吐いた。
「サマンサったらそんな大きな溜息を吐いたら幸せが逃げてしまうわよ?」
「わたしの幸せはライナ様が笑ってくれることです!なので今日は逃げないので大丈夫ですよ」
「あらありがとう?」
ーーーーーー
学園祭当日。
バタバタと朝食を摂ったバズールがまだ食べているわたしの席へ来た。
「パンフレット、はい。俺のいる場所に印つけてるからね、生徒会長なんでここの教室に待機してるから」
「うん、後で伺うわ」
「じゃあ行ってくる」
わたしとバズールのやり取りをお祖母様達がみていて
「今日は学園祭に行くの?」
「はい、サマンサと行ってみようと思っています」
「楽しんで来なさいね。あ!もしバザーで手作りクッキーが売っていたら買ってきてちょうだい。去年バズールが買ってきてくれたのがとても美味しかったのよ」
「わかりました。もしあったら買ってまいります」
今日は動きやすい服装にした。
街へお出かけの時に着るワンピースをサマンサとお揃いで着ることにしたのだ。
バズールに服装を尋ねるとあまりドレスで着飾ってくる人は少ないと言われたので、仕立ての良いお出かけ用の淡いイエローのワンピースを選んだ。
「ライナ様わたしまで用意していただいて申し訳ありません」
「二人でお揃いで着たら姉妹に見えるかしら?」
「ええ、可愛いらしいわ二人とも」
伯母様が「女の子はいいわね」と羨ましそうに呟いた。
「母上、僕と兄上では確かに可愛さはありませんよね」
バズールの弟のカイリがクスクス笑いながら言った。
「カイリは可愛いわよ、でもねドレスもワンピースも似合わないものね」
「似合いたくなんてありませんよ!」
わたし達はみんなで笑い合った。
ここの場所はとても温かくて居心地がとてもいい。
バズールはわたしの頭に手を置くと髪の毛をクシャクシャっとしながら
「素直なところがライナのいいところだと思うよ。それに婚約者がいながら蔑ろにして仕事を優先し過ぎるシエルが一番悪い」
「仕事を優先……バズールったら良い言い方を知っているのね。わたしから心が離れたのではなくて仕事を優先し過ぎたのね。
うん、そう思うと心がすこし楽になれたかも」
わたしはベンチから立ち上がりバズールの前でにっこりと微笑んだ。
「バズール、ありがとう。明後日の学園祭楽しみにしているわ。向こうでは少しは時間作れる?会うのは難しいのかしら?」
「うーん、たぶん昼休憩があるから俺の担当の教室に顔を出して。案内のパンフレット渡しておくから、場所は印をつけておくよ」
「ありがとう、今更だけどわたしも高等部へ通えばよかったかな。お父様に頼んでどこかの国に留学するのもアリかな?」
「留学かあ、俺も卒業したらオリソン国へ一年間行く予定なんだ。ライナも試験受けてみたら?本当はお前成績良かったんだから半年間勉強頑張ったら受かると思うよ」
「そうだね、実家の商会をもっと大きくしたいし外国へ行けば勉強になるわよね?」
「おっ、女当主になるつもり?」
「だって一人娘だもの、良い婿さん探すか一人で頑張るしかないもの」
「俺には兄弟いるからいざとなれば弟達に継いでもらえるけどライナのところは一人だもんな……ま、お互い当主候補として頑張ろう」
「うん!」
最近ずっと落ち込むことが多かったけど、学園祭も楽しみだし、留学のことを考えるのも楽しそう。
実現させるなら勉強頑張らないといけないけど、高等部には行かなかったけど勉強は好きなのでずっと仕事の合間に実はバズールから教科書をもらって自分なりには勉強をしていた。
「今度詳しい試験の申し込みの仕方の資料を用意しておくよ」
「留学はするとしてバズールと同じところ決定なの?」
「え?だってライナって人見知りがあるから馴染むのに時間かかるだろう?」
「うっ……確かに」
ーーほんとバズールってわたしの良いところも悪いところも苦手なところもよく分かっているので取り繕うこともできないのよね。
「そろそろ肌寒くなったから部屋に戻ろう」
バズールは着ていた上着を脱いでわたしの肩にそっとかけてくれた。
「えっ、バズールが寒くなるわ、わたしは大丈夫だよ」
「そんな薄着してたら風邪引くぞ。それにしてやったのに返されたら俺の好意が無になるだろう」
「ふふ、バズールがわたしを女の子として接するなんて……」
「俺は女性には優しいからね」
「わたし以外には、でしょ?」
「あーー、確かにライナに優しくしても仕方ないからな」
「いとこなんてそんなものよね」
「………お前にはシエルがいたからな」
バズールが小さな声で何か言った気がして
「何か言った?」と聞いたら「別に」といつもの愛想のない返事が返ってきた。
それでもわたしの歩調に合わせて歩いてくれるバズールの優しさがなんだか恥ずかしくて、ふふッと笑いながら帰った。
屋敷に戻るといつの間にか戻っていたサマンサが温かい紅茶を淹れてくれた。
「ライナ様なんだか嬉しそうですね?バズール様といるとライナ様はとてもご機嫌なのでホッとします」
「心配かけてごめんなさい……確かにこの屋敷に来てからあまりシエルのこと考えないで済んでいるわ。お祖母様達のおかげね」
「ソウデスネ」サマンサが何故か小さな声で呆れたように返事をして「ハア」と大きな溜息を吐いた。
「サマンサったらそんな大きな溜息を吐いたら幸せが逃げてしまうわよ?」
「わたしの幸せはライナ様が笑ってくれることです!なので今日は逃げないので大丈夫ですよ」
「あらありがとう?」
ーーーーーー
学園祭当日。
バタバタと朝食を摂ったバズールがまだ食べているわたしの席へ来た。
「パンフレット、はい。俺のいる場所に印つけてるからね、生徒会長なんでここの教室に待機してるから」
「うん、後で伺うわ」
「じゃあ行ってくる」
わたしとバズールのやり取りをお祖母様達がみていて
「今日は学園祭に行くの?」
「はい、サマンサと行ってみようと思っています」
「楽しんで来なさいね。あ!もしバザーで手作りクッキーが売っていたら買ってきてちょうだい。去年バズールが買ってきてくれたのがとても美味しかったのよ」
「わかりました。もしあったら買ってまいります」
今日は動きやすい服装にした。
街へお出かけの時に着るワンピースをサマンサとお揃いで着ることにしたのだ。
バズールに服装を尋ねるとあまりドレスで着飾ってくる人は少ないと言われたので、仕立ての良いお出かけ用の淡いイエローのワンピースを選んだ。
「ライナ様わたしまで用意していただいて申し訳ありません」
「二人でお揃いで着たら姉妹に見えるかしら?」
「ええ、可愛いらしいわ二人とも」
伯母様が「女の子はいいわね」と羨ましそうに呟いた。
「母上、僕と兄上では確かに可愛さはありませんよね」
バズールの弟のカイリがクスクス笑いながら言った。
「カイリは可愛いわよ、でもねドレスもワンピースも似合わないものね」
「似合いたくなんてありませんよ!」
わたし達はみんなで笑い合った。
ここの場所はとても温かくて居心地がとてもいい。
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