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じゅうに
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お父様の経営している商会の本部がある建物は街の中にある。
一階と二階はお店として色々な商品を売っている。奥には大きな倉庫がありたくさんの在庫を抱えている。
三階は事務所として使っていて、四階から上は従業員の社員寮になっていて、この建物ではたくさんの人が働いている。
お父様はそのたくさんの人を雇いまとめる当主。
わたしは今はそのサポートをしている。
このままサポートをして仕事を覚えるのがベストなのだろう。でも新しいことにチャレンジしたいし外の世界を見てみたい。
いつかそれが必ずプラスになる、そう信じて新しい世界へ飛び込んでいきたい。
ここに来るとみんなの活気にふれてとてもやる気が出る。
お父様に書類を渡してから、お店に出ていつものように販売のお手伝いをすることにした。
「ライナ様……あの、ちょっと宜しいでしょうか?」
店の中に入るなりすぐに店長が困った顔をしてわたしに近づいてきた。
「どうしたの?」
「それが……お客様からクレームがきているのですが、ご説明しても聞き入れてもらえないので困っているのです」
このお店には平民でも富裕層のお客様や貴族のお客様が多い。取り扱っているものも宝石や時計、絵画など高級なものから輸入家具や食器など幅広く取り扱っている。
「貴族の方?それとも平民の方?」
それによってこちらも対応が変わる。
店員の何人かは貴族出身の子息や令嬢もいるのだが、平民の方が多いので、貴族に対しては強く出ることができない。なので接客も客に合わせるようにしている。
「貴族のご令嬢なのですが……」
「わたしが対応してみるわ。もしもの時はお父様か伯父様にお願してちょうだい」
バズールの父である伯父様も顧問として週に二回はこちらに顔を出している。
先程伯父様がいたので、男爵の地位のお父様では対応できない時は伯父様が代わりに対応してくださることになっている。
「失礼致します、何かお困りのことがあるとお聞きしました」
クレームを言っているというお客様の後ろ姿を見て嫌な予感がしながらも声をかけた。
振り返るお客様はわたしを見てにっこりと微笑んだ。
獲物を見つけて嬉しそうな顔をして。
「あら?ライナ?どうして貴女がここにいるの?うちであまりにも評判が悪くて働けなくなったからここで働かせてもらっているの?
ふふ、貴女の悪評だとここのお店の評判も悪くなるからすぐにクビになりそうね」
「………リーリエ様……何か問題がございましたでしょうか?」
ーーリーリエ様の言葉は無視して笑顔で対応することにした。
「この前こちらのお店で買ったルビーのネックレスがどう見ても偽物にしか見えないの。ほら見て?」
そう言うとリーリエ様が手のひらの上にあるネックレスをわたしに見せた。
わたしは白い手袋をはめると「失礼致します」と言ってそのネックレスを受け取り前後ろと動かしてしっかりと見てから返事をした。
「リーリエ様少しお待ちくださいね。お買い上げいただいたのは一週間前で間違いありませんか?」
「そうよ、お父様から買っていただいたの」
「今こちらでお調べしたところ確かにルビーのネックレスを買って頂いております……しかしこちらのネックレスは当店で販売したものではございません」
「どう言うことかしら?」
キョトンと可愛らしくわたしを見るリーリエ様。
「こちらのネックレスは当店の印がどこにもついておりません。そして……ネックレスを入れてある箱についているはずの認証番号もありません。お買い上げいただく時には必ずお客様に認証番号と当店の印をお確かめいただきサインをしてからお渡ししております。
しかしこの商品の箱にもネックレスのどちらにも何もついておりません。うちの商会で買われたものではないと思います」
「それは!だからそちらが偽物を売ったと言うことでしょう?何度言ったらわかるの?」
リーリエ様はイライラして店中に聞こえる大きな声で話し出した。
「わたしはこのネックレスをお茶会でして行って恥をかいたのよ?どうしてくれるの?」
「申し訳ございませんがこの商品はこちらで売ったものではありません。買われたのはリーリエ様のお父様である伯爵様だと思います。サインが伯爵様のものですので。今から店の者を伯爵様のところへ向かわせますのでしばらくお待ち頂けますか?
こちらのネックレスがうちが売ったものではないことは立証できると思いますので」
「わたしが嘘を言っていると言うの?酷いわ。ライナはうちの伯爵家で働いている時も仕事はサボるし狡いことばかりしていたわよね?そのうえ他のメイドを虐めていたと聞いているわ。貴女こそ嘘つきなのに貴女の言葉なんて誰が信じると言うの?ここのお店の人たちだって貴女の言葉なんて信じるわけがないわ。偽物を売りつけて貴方が本物は隠しているのではないのかしら?」
ーーわたしはリーリエ様の言葉に呆れて言い返すことすら出来なかった。
わたしが仕事をサボる?
狡いことをしていた?
虐めていた?
わたしがお客様に偽物を売って本物を盗んだ?
ーーいい加減にして欲しい。
我慢していたのにプツッとキレてしまった。
「リーリエ様、その言葉はもう取り消すことはできませんが宜しいのでしょうか?」
「な、何を言っているの?貴女がわたしの宝石を盗んだと言って何が悪いの?貴女はそう言う人でしょう?」
ーーそう言う人って何?
「わたしを盗人扱いされましたがわたしは無実であることは確かです。それを証明させていただきますがその時はリーリエ様には名誉毀損で訴えさせていただきます。こちらにはたくさんの証人がおりますので」
「わたしに罪を着せようと言うの?ここに居るのは貴女の味方であるお店の人達ばかりではないの。酷いわ、わたしは本当のことしか言っていないのに」
リーリエ様はまたいつものように怯えたように瞳を潤ませていた。
護衛としてついて来ていたのはシエルではなかった。
でもわたしも知っている人だった。
リーリエ様を護衛しながらも少し顔を引き攣らせていた。どう見てもリーリエ様の言っていることはおかしいと流石に思ってはいるようだった。
「……今このお店には他にもお客様がいらっしゃいます。その中にはこのお店を贔屓にしてくださっている方も何人もおります。わたし達のやり取りをずっと見守っている方もたくさんいます。冷静に見ている方達ですので正確な証言をしてくださると思います」
「わ、わたしは……偽物を買わされたと訴えているだけなのに……酷いわ、お父様に言い付けて貴女なんてクビにしてもらうから!」
ーーこの人はどうしてわたしを悪者にしたいのだろう?
一階と二階はお店として色々な商品を売っている。奥には大きな倉庫がありたくさんの在庫を抱えている。
三階は事務所として使っていて、四階から上は従業員の社員寮になっていて、この建物ではたくさんの人が働いている。
お父様はそのたくさんの人を雇いまとめる当主。
わたしは今はそのサポートをしている。
このままサポートをして仕事を覚えるのがベストなのだろう。でも新しいことにチャレンジしたいし外の世界を見てみたい。
いつかそれが必ずプラスになる、そう信じて新しい世界へ飛び込んでいきたい。
ここに来るとみんなの活気にふれてとてもやる気が出る。
お父様に書類を渡してから、お店に出ていつものように販売のお手伝いをすることにした。
「ライナ様……あの、ちょっと宜しいでしょうか?」
店の中に入るなりすぐに店長が困った顔をしてわたしに近づいてきた。
「どうしたの?」
「それが……お客様からクレームがきているのですが、ご説明しても聞き入れてもらえないので困っているのです」
このお店には平民でも富裕層のお客様や貴族のお客様が多い。取り扱っているものも宝石や時計、絵画など高級なものから輸入家具や食器など幅広く取り扱っている。
「貴族の方?それとも平民の方?」
それによってこちらも対応が変わる。
店員の何人かは貴族出身の子息や令嬢もいるのだが、平民の方が多いので、貴族に対しては強く出ることができない。なので接客も客に合わせるようにしている。
「貴族のご令嬢なのですが……」
「わたしが対応してみるわ。もしもの時はお父様か伯父様にお願してちょうだい」
バズールの父である伯父様も顧問として週に二回はこちらに顔を出している。
先程伯父様がいたので、男爵の地位のお父様では対応できない時は伯父様が代わりに対応してくださることになっている。
「失礼致します、何かお困りのことがあるとお聞きしました」
クレームを言っているというお客様の後ろ姿を見て嫌な予感がしながらも声をかけた。
振り返るお客様はわたしを見てにっこりと微笑んだ。
獲物を見つけて嬉しそうな顔をして。
「あら?ライナ?どうして貴女がここにいるの?うちであまりにも評判が悪くて働けなくなったからここで働かせてもらっているの?
ふふ、貴女の悪評だとここのお店の評判も悪くなるからすぐにクビになりそうね」
「………リーリエ様……何か問題がございましたでしょうか?」
ーーリーリエ様の言葉は無視して笑顔で対応することにした。
「この前こちらのお店で買ったルビーのネックレスがどう見ても偽物にしか見えないの。ほら見て?」
そう言うとリーリエ様が手のひらの上にあるネックレスをわたしに見せた。
わたしは白い手袋をはめると「失礼致します」と言ってそのネックレスを受け取り前後ろと動かしてしっかりと見てから返事をした。
「リーリエ様少しお待ちくださいね。お買い上げいただいたのは一週間前で間違いありませんか?」
「そうよ、お父様から買っていただいたの」
「今こちらでお調べしたところ確かにルビーのネックレスを買って頂いております……しかしこちらのネックレスは当店で販売したものではございません」
「どう言うことかしら?」
キョトンと可愛らしくわたしを見るリーリエ様。
「こちらのネックレスは当店の印がどこにもついておりません。そして……ネックレスを入れてある箱についているはずの認証番号もありません。お買い上げいただく時には必ずお客様に認証番号と当店の印をお確かめいただきサインをしてからお渡ししております。
しかしこの商品の箱にもネックレスのどちらにも何もついておりません。うちの商会で買われたものではないと思います」
「それは!だからそちらが偽物を売ったと言うことでしょう?何度言ったらわかるの?」
リーリエ様はイライラして店中に聞こえる大きな声で話し出した。
「わたしはこのネックレスをお茶会でして行って恥をかいたのよ?どうしてくれるの?」
「申し訳ございませんがこの商品はこちらで売ったものではありません。買われたのはリーリエ様のお父様である伯爵様だと思います。サインが伯爵様のものですので。今から店の者を伯爵様のところへ向かわせますのでしばらくお待ち頂けますか?
こちらのネックレスがうちが売ったものではないことは立証できると思いますので」
「わたしが嘘を言っていると言うの?酷いわ。ライナはうちの伯爵家で働いている時も仕事はサボるし狡いことばかりしていたわよね?そのうえ他のメイドを虐めていたと聞いているわ。貴女こそ嘘つきなのに貴女の言葉なんて誰が信じると言うの?ここのお店の人たちだって貴女の言葉なんて信じるわけがないわ。偽物を売りつけて貴方が本物は隠しているのではないのかしら?」
ーーわたしはリーリエ様の言葉に呆れて言い返すことすら出来なかった。
わたしが仕事をサボる?
狡いことをしていた?
虐めていた?
わたしがお客様に偽物を売って本物を盗んだ?
ーーいい加減にして欲しい。
我慢していたのにプツッとキレてしまった。
「リーリエ様、その言葉はもう取り消すことはできませんが宜しいのでしょうか?」
「な、何を言っているの?貴女がわたしの宝石を盗んだと言って何が悪いの?貴女はそう言う人でしょう?」
ーーそう言う人って何?
「わたしを盗人扱いされましたがわたしは無実であることは確かです。それを証明させていただきますがその時はリーリエ様には名誉毀損で訴えさせていただきます。こちらにはたくさんの証人がおりますので」
「わたしに罪を着せようと言うの?ここに居るのは貴女の味方であるお店の人達ばかりではないの。酷いわ、わたしは本当のことしか言っていないのに」
リーリエ様はまたいつものように怯えたように瞳を潤ませていた。
護衛としてついて来ていたのはシエルではなかった。
でもわたしも知っている人だった。
リーリエ様を護衛しながらも少し顔を引き攣らせていた。どう見てもリーリエ様の言っていることはおかしいと流石に思ってはいるようだった。
「……今このお店には他にもお客様がいらっしゃいます。その中にはこのお店を贔屓にしてくださっている方も何人もおります。わたし達のやり取りをずっと見守っている方もたくさんいます。冷静に見ている方達ですので正確な証言をしてくださると思います」
「わ、わたしは……偽物を買わされたと訴えているだけなのに……酷いわ、お父様に言い付けて貴女なんてクビにしてもらうから!」
ーーこの人はどうしてわたしを悪者にしたいのだろう?
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