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そして、現在。
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「お父様、本当にわたしに結婚をしろと?」
「すまない。本当はこの婚約は形だけのものだった。しかし我が家の借金が膨らみ、ロセス公爵が助けてくれる代わりにセレンとスティーブ君との結婚をと求めてきたんだ」
「どうして?借金が終わったら解消してくれると約束したじゃないですか?」
「ロセス公爵は、お前を気に入っている。夫人もお前なら公爵夫人として相応しいと思っているんだ」
「それは……イザベラ様は気が弱くて儚い。わたしはとっても気が強くてしっかり者だから!……お父様、わたしあと半年は学生なのです。スティーブ様だって高等部を卒業して新たに大学へと通い始めたばかりでしょう?何故今何ですか?」
「お前が卒業したら婚約解消するつもりなのをお二人はわかっているからだ」
「……そ、それはそのつもりです。でもそれはもう向こうもわかっていると思います。だってスティーブ様はわたしと交流すらしようとしません。顔も見たくないようです。それでどうやって結婚生活をしろと言うのですか?絶対無理です」
「すまない……セレンがどうしても嫌なら離縁して帰ってきてくれたらいい。だが今はまだ借金があるからこちらからは強く出られない。無力な父を恨んでくれ」
学院をどうしても卒業したかったわたしは残り半年分の勉強をひと月で頭に入れ、卒業試験に挑んだ。
我が国では15歳で成人となる。女性は15歳、男性は16歳になれば結婚できる。ただし、15歳の間はまだ3年生。だから結婚の早い貴族令嬢には、卒業試験を受けることで早めに卒業をさせてもらえる。
15歳……それは子を成せると言うこと。
わたしとスティーブ様が⁈
ーーはあ気が重い。むりムリ無理。
でもその前に卒業資格だけは取っておかないと、離縁したあとが困る。
そしてわたしはマリアナより少し早めに卒業した。
「毎日でも会いにいくから!」マリアナは宣言通りとまではいかなかったけど、我が家に会いに来てくれた。
結婚式までに三ヶ月という無理やりの短い時間の中で、何とか既製品のドレスに手を加えてそれなりに立派なウエディングドレスを準備することができた。
公爵夫人になるための心得や教育はしっかり教えられてきていたので、多分困ることはないだろう。
そして結婚式当日。
たくさんの参列者の中にはわたしがスティーブ様の婚約者で公爵家に嫁ぐなんて思っていなかった貴族子女も多かった。
もちろん周りに知られたくないと言うスティーブ様からの命令もあったしわたし自身もマリアナ以外に教えるつもりはなかった。
ただ結婚式という幸せになるための日に聞こえるのは………
「スティーブ様の愛する人はイザベラ様だと思っていたわ」「イザベラ様と婚約していたのでは?」
「そう言えば……昔セレン様と婚約したと聞いたことがあったわ」「二人がご一緒する姿は見ていないわ」
などなどみんな驚きつつも祝ってはくれない言葉ばかりだった。
まあ、それくらいイザベラ様とスティーブ様は相思相愛だと思われていたのだろう。
ーーどうでもいいけど。
でもお父様とお兄様は涙をためてわたしの幸せを願ってくれた。そしてマリアナは「今度は公爵家に毎日遊びに来るから」と言ってスティーブ様を睨んでいた。
スティーブ様は笑顔もなく淡々と結婚式でわたしの隣に立っていた。
イザベラ様は、たくさんの人の前で悲しそうに涙をためて結婚式に参列してみんなからの同情を集めていた。
ーー別にイザベラ様からスティーブ様を奪った訳ではない。
わたしは何度も頼んだ。
ーー婚約解消したいと。
誰もそんなことを知らない。
わたしが幸せじゃないことも。
「すまない。本当はこの婚約は形だけのものだった。しかし我が家の借金が膨らみ、ロセス公爵が助けてくれる代わりにセレンとスティーブ君との結婚をと求めてきたんだ」
「どうして?借金が終わったら解消してくれると約束したじゃないですか?」
「ロセス公爵は、お前を気に入っている。夫人もお前なら公爵夫人として相応しいと思っているんだ」
「それは……イザベラ様は気が弱くて儚い。わたしはとっても気が強くてしっかり者だから!……お父様、わたしあと半年は学生なのです。スティーブ様だって高等部を卒業して新たに大学へと通い始めたばかりでしょう?何故今何ですか?」
「お前が卒業したら婚約解消するつもりなのをお二人はわかっているからだ」
「……そ、それはそのつもりです。でもそれはもう向こうもわかっていると思います。だってスティーブ様はわたしと交流すらしようとしません。顔も見たくないようです。それでどうやって結婚生活をしろと言うのですか?絶対無理です」
「すまない……セレンがどうしても嫌なら離縁して帰ってきてくれたらいい。だが今はまだ借金があるからこちらからは強く出られない。無力な父を恨んでくれ」
学院をどうしても卒業したかったわたしは残り半年分の勉強をひと月で頭に入れ、卒業試験に挑んだ。
我が国では15歳で成人となる。女性は15歳、男性は16歳になれば結婚できる。ただし、15歳の間はまだ3年生。だから結婚の早い貴族令嬢には、卒業試験を受けることで早めに卒業をさせてもらえる。
15歳……それは子を成せると言うこと。
わたしとスティーブ様が⁈
ーーはあ気が重い。むりムリ無理。
でもその前に卒業資格だけは取っておかないと、離縁したあとが困る。
そしてわたしはマリアナより少し早めに卒業した。
「毎日でも会いにいくから!」マリアナは宣言通りとまではいかなかったけど、我が家に会いに来てくれた。
結婚式までに三ヶ月という無理やりの短い時間の中で、何とか既製品のドレスに手を加えてそれなりに立派なウエディングドレスを準備することができた。
公爵夫人になるための心得や教育はしっかり教えられてきていたので、多分困ることはないだろう。
そして結婚式当日。
たくさんの参列者の中にはわたしがスティーブ様の婚約者で公爵家に嫁ぐなんて思っていなかった貴族子女も多かった。
もちろん周りに知られたくないと言うスティーブ様からの命令もあったしわたし自身もマリアナ以外に教えるつもりはなかった。
ただ結婚式という幸せになるための日に聞こえるのは………
「スティーブ様の愛する人はイザベラ様だと思っていたわ」「イザベラ様と婚約していたのでは?」
「そう言えば……昔セレン様と婚約したと聞いたことがあったわ」「二人がご一緒する姿は見ていないわ」
などなどみんな驚きつつも祝ってはくれない言葉ばかりだった。
まあ、それくらいイザベラ様とスティーブ様は相思相愛だと思われていたのだろう。
ーーどうでもいいけど。
でもお父様とお兄様は涙をためてわたしの幸せを願ってくれた。そしてマリアナは「今度は公爵家に毎日遊びに来るから」と言ってスティーブ様を睨んでいた。
スティーブ様は笑顔もなく淡々と結婚式でわたしの隣に立っていた。
イザベラ様は、たくさんの人の前で悲しそうに涙をためて結婚式に参列してみんなからの同情を集めていた。
ーー別にイザベラ様からスティーブ様を奪った訳ではない。
わたしは何度も頼んだ。
ーー婚約解消したいと。
誰もそんなことを知らない。
わたしが幸せじゃないことも。
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