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2章
第25話
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メリーア様が置かれた紙には、ライラのことが書かれていた。調査をした結果のようで、重要な部分のみをメリーア様が読み上げた。
「これは私が信頼出来る人に頼んで、ライラさんが孤児院に居た時のことを調査してもらった結果よ。この報告書によると、彼女は普通の女の子だったそうね。9歳までは…。」
両親が病で亡くなり、当時5歳で孤児となったライラをセルティラス伯爵領の孤児院が引き取った。とても優しく、孤児院の子供達からも好かれていた。
しかし10歳のある日、ライラは階段で転けてしまい、頭を強く打った。そこから少しずつ彼女だけでなく、周囲の様子も変わっていった。
頭を打った日、ライラは初めて光魔法を使った。孤児院に居た者全員が驚きとともに聖女の生まれ変わりだと喜んだ。
しかし数日後には既に子供達がおかしくなっていた。院長が事を起こしたライラを叱ると、『彼女は悪くない』と言い出し、逆に院長が責められるようになった。
それだけではなく、ライラが子供達に命令をしたかと思うと、誰も何の疑問すら抱かずに彼女の言いなりになっていたそう。
それはまるで……
「まるで、現在の一部の貴族のようね…。」
「つまりは、魅了のような状態になっていたという事だわ。」
「彼女が孤児院から離れたことによって、魔力の効果は消えているそうですが…。」
「光魔法の力が発現したと同時に、人格も変わるなんてことが有り得るのか?」
ドーフェンの言葉に、私とメリーア様は心当たりしかなかったわ。
ライラが『転生者』という存在であることは知っているけれど、メリーア様が同じ転生者であることを悟られない為にも、2人だけの秘密なのよね…。
とはいえこの報告書で、彼女が前世の記憶を思い出した時期を知ることが出来た。
10歳で思い出したとなれば、伯爵家に来るまでに約5年は経っていることになるわね。
その間に自分の能力について、色々と試しているでしょう。となれば、癒しの魔力に変換されることも知っているのでは…?もし知っていて、無意識に見せかけているだけで変換された周囲の魔力を操れるとすれば…?
……ないと信じたいけれど、有り得る可能性も十分にあるわ。そうなれば、ただでさえ厄介な相手がもっと厄介になるわね…。
とりあえずドーフェンの言葉には、それらしいことを言っておきましょう。
「……頭を打ったから変わってしまった…としか考えられないわね。」
「確かに、それならば納得出来ないこともないですね。」
全員が頷いたが、ライラの変化は『謎』という考えで終わった。
「今まで通り、全員が彼女の動向に気をつけておこう。リアに対する当たりが強いということをレアから聞いているが、それも気を付けておいてくれ。」
クレスディア殿下がまとめ、再度全員が頷いた。
しかしこの時、私達は気付かなかった。
ライラの魔の手が、すぐそこまで迫っていたことに──
「これは私が信頼出来る人に頼んで、ライラさんが孤児院に居た時のことを調査してもらった結果よ。この報告書によると、彼女は普通の女の子だったそうね。9歳までは…。」
両親が病で亡くなり、当時5歳で孤児となったライラをセルティラス伯爵領の孤児院が引き取った。とても優しく、孤児院の子供達からも好かれていた。
しかし10歳のある日、ライラは階段で転けてしまい、頭を強く打った。そこから少しずつ彼女だけでなく、周囲の様子も変わっていった。
頭を打った日、ライラは初めて光魔法を使った。孤児院に居た者全員が驚きとともに聖女の生まれ変わりだと喜んだ。
しかし数日後には既に子供達がおかしくなっていた。院長が事を起こしたライラを叱ると、『彼女は悪くない』と言い出し、逆に院長が責められるようになった。
それだけではなく、ライラが子供達に命令をしたかと思うと、誰も何の疑問すら抱かずに彼女の言いなりになっていたそう。
それはまるで……
「まるで、現在の一部の貴族のようね…。」
「つまりは、魅了のような状態になっていたという事だわ。」
「彼女が孤児院から離れたことによって、魔力の効果は消えているそうですが…。」
「光魔法の力が発現したと同時に、人格も変わるなんてことが有り得るのか?」
ドーフェンの言葉に、私とメリーア様は心当たりしかなかったわ。
ライラが『転生者』という存在であることは知っているけれど、メリーア様が同じ転生者であることを悟られない為にも、2人だけの秘密なのよね…。
とはいえこの報告書で、彼女が前世の記憶を思い出した時期を知ることが出来た。
10歳で思い出したとなれば、伯爵家に来るまでに約5年は経っていることになるわね。
その間に自分の能力について、色々と試しているでしょう。となれば、癒しの魔力に変換されることも知っているのでは…?もし知っていて、無意識に見せかけているだけで変換された周囲の魔力を操れるとすれば…?
……ないと信じたいけれど、有り得る可能性も十分にあるわ。そうなれば、ただでさえ厄介な相手がもっと厄介になるわね…。
とりあえずドーフェンの言葉には、それらしいことを言っておきましょう。
「……頭を打ったから変わってしまった…としか考えられないわね。」
「確かに、それならば納得出来ないこともないですね。」
全員が頷いたが、ライラの変化は『謎』という考えで終わった。
「今まで通り、全員が彼女の動向に気をつけておこう。リアに対する当たりが強いということをレアから聞いているが、それも気を付けておいてくれ。」
クレスディア殿下がまとめ、再度全員が頷いた。
しかしこの時、私達は気付かなかった。
ライラの魔の手が、すぐそこまで迫っていたことに──
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