炊き出しをしていただけなのに、大公閣下に溺愛されています



 希望したのは、医療班だった。
 それなのに、配属されたのはなぜか“炊事班”。

 「役立たずの掃き溜め」と呼ばれるその場所で、僕は黙々と鍋をかき混ぜる。
 誰にも褒められなくても、誰かが「おいしい」と笑ってくれるなら、それだけでいいと思っていた。

 ……けれど、婚約者に裏切られていた。

 軍から逃げ出した先で、炊き出しをすることに。
 そんな僕を追いかけてきたのは、王国軍の最高司令官――
 “雲の上の存在”カイゼル・ルクスフォルト大公閣下だった。

「君の料理が、兵の士気を支えていた」
「君を愛している」

 まさか、ただの炊事兵だった僕に、こんな言葉を向けてくるなんて……!?

 さらに、裏切ったはずの元婚約者まで現れて――!?



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