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14.

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 馬車は、ご飯時に止まる以外走り続けた。
 街にも寄らなかった。
 止まるところはあらかじめ決めていたのか、道から外れたところに変えの馬と数人の人が待っていた。

 バルロウさんは優秀な方のようで、ロイ様や私の身の回りを気遣ってくれた。
 
 私はバルロウさんから、ワンピースをいただき、それを着込んでいた。
 食事の為に止まった時、近くにあった川で一度水浴びをさせてもらい、髪の色を自前の金色に戻してレンズを外して眼鏡をかけた。
 やはり、それだけでも印象がかわるのか、バルロウさんはびっくりしていた。
 ロイ様は何故か満足そうな表情をしていた。

「眼鏡、ありがとうございます」

 あの状況で、眼鏡を持っていなかったのは、ミスだった。
 バルロウさんからワンピースとともに眼鏡を貰ったので、良かった。
 
 金の髪をゆるく編んで、食事の用意を手伝った。

「いえ。お礼を言うのは私です。セシリア様が手伝ってくれるお陰で美味しく食べられるのですから」

 なんでも、皆さん料理は苦手らしく、主に塩胡椒の味付けになるのだと。用意されていた料理道具の中にあった調味料を使わせて貰った。
 セシリアでいいと言ったものの、彼は私に「様」を外そうとしなかった。
 
「バル。セシリアと親しくし過ぎだ」
「心が狭くなってますよ」
「バル!」

 ロイ様は一段と人間に見え親しみを覚えた。

「セシリア。僕は人間だからね」

 わかっています。
 でも、私を救ってくれた天使様にはかわりありません。

 御者を務めてくれている、アンソンさんとナディクさんも感じの良い方だった。
 だから、警戒心は特になかった。

 不安だけ。

「明日には帝国に入るよ。追っ手もきていないから、安心して入れる」
「ロイ様・・・、貴方は帝国の方なんですか?」

 この数日、聞けなかった事を聞いてみる。

 それだけ余裕ができたせいかもしれない。
 ずっと、あの男の追っ手がこなか心配で気を張っていた。ロイ様がいるからと思っても、どうしても心配だったのだ。
 帝国に入れると聞いて、安心できた。
 帝国に入れば、王子殿下と言え、勝手に国境を跨ぐことはできない。

「う、うん。僕のことは、もう少し待って。落ち着いたら、ちゃんと話から」
「・・・わかりました」

 そうは言ったものの、きっとロイ様は身分のある方なのだろう。
 そうでなければ、マザーを助けてくれたり、身元が危うい私をこうして救ってくれるはずがない。
 この馬車にしても、隠してはいても格が高いものだとわかる。
 こうして街外れに人を配置しているのだって、金銭に余裕がなければできないことである。

 ちゃんと話してくれると言うならば、待つしかない。
 
「ごめんね。不安だよね。でも、これだけは約束するよ。絶対に、君の笑顔は奪わない。無理もさせない。だから、僕を信じて」

 真摯な眼差し。
 
 信じてもいい?
 信じてみよう・・・、そう思った。


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