偽りの婚姻

迷い人

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終章

58.平和な日常とバーサーカー将軍

都の中心市街。

 王都に、職人修行に訪れる研修生たちが多く居住する集合住宅がある。

 その1室がドンっと爆発音を上げた。

「第一、第二、第三部隊は居住者たちの保護を行い第一魔術部隊へと引き渡しを行い、その後、突入先に合流を! 第一魔術部隊は監視、第二魔術部隊は建物内の解析、第三魔術部隊は逃亡者に備えるように」

 一通り指示を出したルーカスは、アイザックへ視線を向ける。

「では、住民への説明作業をお願いします」

「はいはい。 任せておいて~~~。 それより今日もうちのボスはご機嫌(斜め)だねぇ~~~!! 帰ってくるというんだから待てばいいのに、全く飼主失くした犬でももっとお利巧ですよ」

 肩を竦めながら、破壊行為を眺めるアイザック。 シヴィルが留守なため彼は通常業務としてパーシヴァルについていた。

「なら、先輩は奥さんにマテって言われて数か月も留守にされたらどうするんですか?」

「そりゃぁ、待ちますよ。 後が怖いですから」

 怖くなければ、行くんかい!! と突っ込みしたいところだが、下手な突っ込みをいれると抉るような返しが長期間にわたり返されるため、適度に流す後輩騎士達は逃げ出してくる住民たちを次々確保していく。





 シヴィルが消えた日。

 ライオネルに魔女の森を教えろとパーシヴァルは激しく迫ったが知る訳はなく。 結果として、パーシヴァルは王都内に存在している賢者を襲い始めた。

「魔女の森の位置を教えろ~~~」 と。

 比較的力が弱く今回の国家転覆計画に関わらなかった賢者(女)達は、薄い本を通じてミランダに助けを求め、早い段階で保護された賢者が出た事で、ライオネルはパーシヴァルの奇行を知ることができた。

 とはいえ……他国でもナイジェル事件と同様な賢者による被害が多数発生、それに伴う亡命希望者が訪れ始めた中で、パーシヴァルの奇行は必要な行為とライオネルは判断を下し、ルーカスに騎士団を率いたフォローと賢者の捕獲を指示した。

 そして……現在。

 王国内に潜入している賢者の8割は攻略をし終えたと、寝返った賢者たちは告げていた。

 とはいえ、パーシヴァルの強行は未だ留まることは無い。

 可愛いファンシーな女性らしい部屋。
 部屋の主は、茶色の巻き毛が可愛らしい少女。

「な、なんなんですか!! アナタは! 憲兵を呼びますよ!!」

 金切声があげられる。

 巨体な男が、壁をぶち破ってやってきたのだから当然と言えば当然、賢者じゃなくても混乱するだろう。 だが、少女は確実に賢者である。 なぜなら今のパーシヴァルの側に近寄る事は、長く彼の部下を務める者達でも息苦しさを感じる。 見習い程度であれば気絶してしまうだろう魔力を駄々洩れにしているためだ。

「あぁ? オマエ賢者だな? 賢者だよな」

 少女は狂気とかしているパーシヴァルに冷静に答えた。 流石少女と言えど賢者と言う訳ではなく、単純に魔女達は莫大な魔力により実年齢が判断しにくい生き物なのだ。

「ち、違います! 私はサモサ村出身で、王都には針子の修行できているんです! 許可証だって持っていま……うごっ」

 許可証をパーシヴァルの前に突き出せば、軽くそれは払われた。 だが、それに魔力を伴っているため、少女は壁に向かって吹き飛ばされることとなる。

「余計な事は話すな。 時間の無駄だ」

 スタスタと歩みよれば、悲鳴と共に少女は叫んだ。

「ままっまままま、待ってください!! わ、私は積極的に国の乗っ取りに関わったわけでは……!!」

「ぁあ? 何がい言いたい。 俺は魔女の森の場所が知れればいいって言ってんだ! オマエが、王家の消滅を狙ってようが、乗っ取りを狙っていようが、関係ねぇ! 魔女の森を……!!」

 ゴスッ

 フルスイング角材でパーシヴァルの頭部を殴るルーカス。

「関係してください。 一応国軍ですから!」

 ダメージ0だが、あぁ?と不機嫌丸出しで振り返るパーシヴァル。

「欲求不満なら、花街で遊ぶ分を経費で落としますから。 少し押さえてもらえませんかね?」

「絞めるぞ」

「絞めるのは、そこの賢者でお願いします。 逃げようとしてますよ」

 言われれば、女賢者を振り返ることもなく拳骨でゴツンと殴り昏倒させた。



 自然との調和、人間社会への不干渉を思想とする魔女達(性別問わず)の大半は、パーシヴァルやシヴィル、(故)ナイジェルと同様に魔力回路の異常により、日常的に膨大な魔力を生産放出する体質を持ち、その力の奔流に影響を受け人格にも影響が出る。

 人間社会への不干渉と言う制約も、膨大な力をもって破壊的思考を行使したいと思う者が多いが故の規則であり、罰則者には『監視』『封印』『監禁』『処刑』の順で処罰が下される……らしい……。

 ソレが気に入らないと、魔女組織を抜けたのが賢者と呼ばれる者達。 一般的には魔女組織、魔女の森を、許可なく抜け出した時点で、最初の『監視』対象となるのだが、賢者側も魔女達に対抗し組織だち魔女達を唆し、促し、保護し、利用しはじめ既に数十年経過していた。

 魔女組織の基本理念は、魔力回路異常による子供達の死亡を助け、穏やかな人生を送らせたいと考えた創始者によってつくられたものであり、賢者と言う反組織は予測されておらず、処罰も作成した当初は逃亡抑制のための見せかけでしかなかった。

『力を持つ者が世界を牛耳る』

 等と言う賢者への対策は後手後手となり、結果として深く深く森に籠り「外に出たら関係なくね?」なんて、言いだすものまで出てきた始末である。 魔女の力を抑制するための封印が『他者への不干渉』をもたらすための、悪影響と言えるだろう。



 結果……。

 ルーベンス国だけでなく、世界的に賢者によって脅威がもたらされる事となったのだ。



 だが!!

 そんなことは、今のパーシヴァルには関係なかった。

 とにかくシヴィルを取り戻すため、犬のように賢者の居場所を探り(匂いではなく魔力で)、隠れ家に突入し賢者を締めあげるという日々を2か月に渡って送っている。



 力を抑制する手錠、思考を制限するサークレットを、昏倒した賢者に装備するルーカス。 そして不意打ちで思考制御用サークレットを背後からパーシヴァルにつけるアイザック。

「よく、団長にそんなことできますね」

 アイザックの部下がボソリと告げれば、

「僕、気配を消すのは得意だから」

 ニッコリとアイザックが笑い言う。 実際のところ狂暴化状態にあるパーシヴァルの感知能力は、限りなく低くなるためなのだが、その手の情報は幹部によって隠蔽されている。

「オマエら……俺に対する扱いを、こいつらと一緒にすんなよな……」

 そう言いながら、ルーカスがわきに腕を差し込み持ち上げていた賢者に蹴りを入れた。 本当に抑制されているのか? と、新入り達は軽く悲鳴を上げるものもいるが、長い付き合いの騎士達は、肉片飛び散り死体が散開していないなら上等と笑う。

 うげっと、苦痛に顔を歪め意識を取り戻した賢者だが、パーシヴァルを前に恐怖に顔を歪めていた。

「た、たたたあたあすけて、知っている事はぜんぶ、ぜんぶ話します!!」

「どっちが悪役なのか分からなくなっていますよね」

 そうアイザックは笑えば、ルーカスは苦笑する。

「はいはい、皆さん、てきぱきと物品の押収を行い隠し扉、通路がないか徹底的に探してください。 変な魔力反応がある場合は、すぐに上司に報告を!!」

 そう言いながら、とりあえず女賢者を殺してしまわないように、パーシヴァルを監視するルーカス。 ふんっとそっぽを向いていた女賢者だが、魔術師の導入によって焦りだした。

 魔力的な隠蔽に騎士達が対応できないため、捜索にかけた魔術師が現在のヒュブリス部隊に取り入れられているのだ。

「アヤシイ魔術通路を発見しました!」

「ううううあああああ、そこはそこは辞めて!!!」

 女賢者の真剣な叫びに、ヒュブリス部隊の面々は苦悩を露わにした。 女性賢者によるこの悲壮な悲鳴、訴えの後に出てくる彼女達の秘宝の多くが、この国の未来の王妃となるミランダ侯爵令嬢が所有する組織によってつくられた薄い本であり、それらの膨大な薄い本の確認作業までが彼等の仕事だからである。





 そして王宮では……。

「なぜ我が婚約者様は、私の執務室で執筆活動をなさっているのですかな?」

「ここに居れば、父に創作活動を邪魔されることもありませんし、それに色々と刺激を受けますのよ」

「……そうですか……」

 ライオネルが頭を抱えつつも、ミランダ侯爵令嬢の奇行を認めるのには訳がある。 なぜなら女賢者のおよそ半数が、彼女の作る作品に屈し、その捜索活動に参加したい。 参加していいなら、自分の力を持って国に貢献しようなどと、力の大安売りをするからである。

 賢者たちを捕獲する際に使われる、能力抑制用手錠と、思考抑制用サークレットは、ミランダ侯爵令嬢の配下に下った女賢者たちによる作品であった。



 他国の賢者被害が、ポツポツと報告されるようになった中。

 ルーベンス国では、賢者たちに対するパーシヴァルとミランダによる被害ばかりが日々増加していく。



 今日もルーペンス国は平和である。

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