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2章

23.知らない痛み

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熱く、荒く、本庄エリィは雫の肌を撫でていた。
 興奮に呼吸を荒げ、時折……

「雫が殺した、殺したのよ……」
「こうやって、誘い、殺したのね」

 そんな事を呟き、責め立ててきた。

「違う……私は何もしていません」


 ただ、耐えただけ……。
 いつものように恐怖から解放されるのを待っていた。

 貯水槽に沈められた時と同じように……。

 いえ……今回は、友達の……岬加奈子の裏切りに何も考えられなくなっていた。 思い出せば、泣きたくなる……。 ずっと、ただ一人の友達だったのに。 無気力に水の中に沈んでいた。

 そんな風に意識が逸れていれば、背に爪がたてられた。

「くっ……」

 痛みには強い……。 いつだって、少し待てば痛みは消えた。 だけれど、コレは良く分からない痛みで、その痛みを心の何処かで求めている自分が怖かった。 触れる指が、手の平がネットリと肌に吸い付き、内側に入り込むようで肌がざわつく。



 切られ、刻まれ、開かれ、奪われ、そんな痛みではない……甘さの伴うその行為が、どういうものなのか理解できなかった。

 何をされるの?

 熱く触れる本庄の手や、押し付けられる豊かな胸、与えてくる傷は痛みではなく……快楽だった。

 息が苦しい……。

「お願い、止めて……」

 快楽を知らない雫には、恐怖でしかない。

 脅すような甘い囁きに悪意と言うものは感じなかった。 感じたとするなら……ばつの悪さ……。

 肌に触れる手が、舐めるように触れる。
 爪が肌を傷つけ、熱を持つ。
 舌先が舐るように肌を擦り、歯を当て噛みついてきた。

「いたっ!!」

 叫んだのは……ソレを伝えれば止めてくれるかもしれないと言う期待。 反面……暴れないのは、恐怖と……好奇心。



 ドンドンと扉を叩く音が激しく鳴り響いた。

 早く、助けて……。



 背中を撫でまわる手が、ウエストへと移り着物の上を這い、中へと入り込み足に触れた。 執拗に足を撫でまわされ……怖かった。

 呼吸が上手くできず、口の中が……喉が渇く……。

「ぁ、いや、ダメ……」

「ねぇ……雫、アナタ、経験はあって?」

「な、んの、事ですか……」

 知らない……。

 何を言っているのか分からない。

 恐怖を感じているのに……両足の間が熱い……。

「ダメ……」

「どうして?」

「怖いから……」

「ねぇ、あの子達にされた事と、ドチラが怖い?」

 そう聞かれて……頭の中が急激に冷やされた。

「いや!! お願い!! 止めて!!」

「大人しくしなさい!! 質問に答えるのよ!! そうすれば、気持ちよくしてあげるわ」

「嫌よ!!」

「化け物の分際で、何、純情ぶっているのよ!! この変化を誰に知らせようかしら? ねぇ、どの教授がいい? それとも……私を殺す? アナタを可愛がってあげると言ってあげている私を殺すようにカラスに命じる? 殺しちゃう? 今度は、アナタの意志で殺す? 今度こそ、人殺しになる? 化け物が……」

 本庄が馬乗りを止め、うつ伏せのままだった雫の肩が掴まれ、身体が起こされた。
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