『向日葵の咲かない夏に、君が遺した「宿題」』

向日葵の咲かない夏に、君が遺した「宿題」

あの日から、庭の時計は止まったまま
太陽を忘れた向日葵たちは
うつむき、色を失い、
ただ 土へと還るのを待っていた

水をやる指先は 冷たく凍え
「幸せ」という文字の書き順さえ
思い出せないまま 僕らは
終わらない夏を 死人のように歩く

君が遺した 一冊のノート
幼い筆跡がなぞる 無謀な「宿題」
それは 僕を笑顔にするための呪文
それとも 僕を繋ぎ止めるための鎖か

空っぽのフライパンで 炭を焼き
冷え切った部屋で ぎこちない手品を見せる
君の瞳の奥に 隠された必死さを
僕は「子供の無邪気さ」だと 信じたかった

でも 知ってしまった
その「宿題」を書き上げたのは
病室の君ではなく
泣きじゃくる君の手を 握りしめた小さな指

なぞり書きされた 鉛筆の跡
震える線が教えてくれた 本当の魔法
守っていたつもりで 守られていた
愛は 遺されるものではなく 手渡されるもの

空へ還った君との約束は
合格をもらうまでの 長い、長い道のり
「パパの幸せ」という 最後の一頁
それを書き込むために 僕は今日を生きる

見ていて。
もう 庭に水は枯れない。

向日葵が 空を向いて咲いた
水をやる人間が ここにいるから
止まっていた夏を 愛で満たして
僕は 次の季節へ 踏み出していく

君がくれた 終わらない「宿題」を抱いて。

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