『タイタニック:不沈船の残響』

『タイタニック:不沈船の残響』

不沈と呼ばれた船があった

その言葉は
鉄よりも硬く
海よりも軽かった

誰かが言った
「沈まない」と

そして誰も
その言葉の重さを測らなかった

---

氷山は
音もなくそこにいた

警告は届いていた
けれど届く前に
祝電に変わった

海は静かだった
静かすぎるほどに

---

「異常なし」

その言葉が
いくつも重なって

真実を覆った

見えないものは
存在しないことになった

---

衝突は
音ではなく

沈黙として起きた

小さな揺れ
小さな遅れ
小さな誤算

そのすべてが
あとで名前を持つことになる

---

誰かは信じていた
誰かは気づいていた
誰かは言えなかった

同じ船の上で
違う現実が流れていた

---

ボートは足りなかった

けれどそれは
その瞬間に初めて
足りなさとして現れた

---

音楽が流れた

恐怖を包むためではなく
恐怖に名前をつけないために

---

海は冷たかった

冷たさは公平だった

階級を選ばず
言葉を選ばず
祈りも選ばなかった

---

沈むということは
崩れることではなかった

「間に合わない」という形で
世界がゆっくり確定していくことだった

---

夜が終わり

海は何も語らなかった

ただそこに
多すぎる沈黙を残した

---

そしてあとに残ったのは

事故ではなく

判断の跡だった

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