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暗雲

第26話 そういうものじゃなくって

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 おっま、お前さああ……!
 今ここで襲わせたいわけ!?

 今度はこっちがむすっとした顔になって、ばくばくとクッキーを噛み砕いて太い首を掴む。
 ちょっと苦しいであろう引き寄せられ方をしても、旭陽は目を細めて受け入れた。

「ッん、ぁっン……ッ」

 口移しで欠片を与えながら舌を絡めれば、何処か楽しげな甘い声が鼓膜を揺らす。

 こいつ、何しても俺が興奮するから面白がってるだろ。
 分かってても跳ね除けられないんだから、ほんと振り回されてるよなあ。


 紅茶に移ってもそんな調子だったものだから、カップも皿も空になった頃には旭陽はとろとろに蕩けていた。

 途中で「もういい」と言い出したから、退こうとした腰を捕まえて俺の太腿の上に下ろさせた。
 口移しの時間よりも、舌を絡めて咥内を荒らす時間のほうが長くなっていく。
 やがて旭陽の体が震え始めれば、逃げないように背中を抱いて動きを止めた。
 膨らんだ股座を、同じく芯を持った場所にズボン越しに押し付ける。
 びくりと跳ねた腰は好きにさせて、何度も足の上の体に擦り寄せた。

 ちょっと待て、しつこいばか、って何度も罵倒された気がする。全部無視した。
 そうして気付けば、どろりとした瞳から涙を溢れさせた旭陽が膝の上で震えている。

 あー……やりすぎた。
 こいつ、ただでさえキスに弱いのに。

「旭陽……」

 荒い息を吐きながら茫洋としている男の意識を、こちらに戻させようとする。
 先に、恐る恐るといった声が割り込んできた。

「ま、魔王様……」

 …………サンドロの存在を忘れていた!!

 はっとして顔を向ければ、真っ赤な顔を必死に背けていた。

「……魔王様、意外と……その、情熱的なキスを、なさるんですね……」

 その側に、巨大なオークが立っている。
 騎士団の第二部隊隊長だ。
 手に持った書類からして、何か報告を届けにきたらしい。

 ふ、二人に目撃されてた……だと……
 流石に恥ずかしくて固まっていると、そそくさとサンドロが立ち上がった。

「魔王様、わ、私の執務は済みましたので。先に他の場所へ行って参ります」
「え? でも……」
「ご安心を。この部屋には、魔王様が必要とするまで誰も近付けさせませんので」

 いつも仕事に関しては最後まで確認しようとする臣下らしからぬ言葉に、思わず何も考えずに留めようとしてしまった。
 言葉を被せるように宣言されて、また気を遣われたことを悟った。

 もうちょっと突然盛るなって怒ってくれても良いんだぞ、サンドロ……
 俺、このままだとどんどん人として駄目になりそう。人間じゃないけど。

 サンドロは騎士に執務室の人払いを指示して出て行った。指示を受けた騎士も出て行き、俺と旭陽の二人になる。

「旭陽」
「っぁ……ぃ、ら……」

 今度こそ、俺に凭れてぼんやりしている男に声をかけた。
 ゆっくりと瞬いて、黄金の焦点が合う。
 呂律が少し怪しいのは、舌が痺れているんだろう。

 下肢に触れれば、ぐちゅりと小さな水音がした。

「イったのか?」
「ぁ……れの、せ……」
「そうだな。俺の所為だ」

 否定されないことに、思わず笑みが零れる。
 邪魔な服を剥いでいっても、旭陽は身を捩るだけで俺の上から退こうとはしなかった。
 裸になった体を、書類を退けた机の上に腰掛けさせる。

 何事かと問いたげな視線には気付かないふりで、膝を折って地面に突く。
 吐き出しても硬いままの熱を舐め上げ、びくりと揺れた腰に腕を巻き付けた。
 昨晩も押し入った秘口へ、鋭く伸びた牙を突き立てる。

「ッひっィいあっ!? ァッ、あぐ、んぁああっ!」

 予想していなかったタイミングの吸血に、旭陽が驚きの嬌声を上げた。
 ぶしゃりと噴き上がった精液が、俺の頬や床を濡らす。
 机にもかなりの量が飛沫として飛んだ。

 これは後で大変だと頭の隅が囁くが、今は止まれそうにない。

「はっ、ああっ、ひぐっ! ぁッあぁああー!」

 解す余裕がない。間髪入れず、催淫効果で一気に蕩けた場所を硬い雄で貫いた。
 射精したばかりの体を襲った強すぎる快感に、がくがくと腰が跳ねてまた白濁が吐き出される。

「はっ、あ、さひッ、顔、こっち、!」
「ッンん゛! んぅっ、ぁっ、んぁううっ……!」

 立て続けの絶頂に悶える男の頬に手を当て、端から唾液が溢れかけていた唇を塞ぐ。
 ぽたぽたと涙を零しながら、旭陽が俺の腕を掴んだ。

 縋っているのか、止めようとしているのか。
 弱い力で引っ掻いてくる手を、逆に俺から捕まえる。

 机に手を押し付けて指を絡めると、旭陽からも握り返してくる力があった。
 そういうことされると、止まらなくなりそうだ。

 がつんと力強く突き上げる。

「んん゛んぅぅッっ!」

 口の中に響いてくる嬌声を飲み込みながら、痙攣する腰を掴み直した。
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