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番外編  エグモンドのその後 Ⅱ

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「さあお次はこれね」

 少女に無理やり犯され童貞を卒業させられ意気消沈となっていた僕の傍へ来ればだ。

 彼女は問答無用とばかりに腕へ注射を打つ。

 反対の腕には何故か点滴がされている。

 当然僕は拘束されたまま、然も下半身剥き出し状態。

 初めて射精した……ゴム越しとは言えだ。

 事後の清拭をされる訳もなく当然僕の分身はかぴかぴだ。


 情けない。

 どうしようもなく情けない気持ちで一杯になる。

 だからと言って状況が好転する要素は一つも見つからない。


「ふふ、あなたって思っていたよりも立派なサイズを持っていたのね。だったら余計にショックはきついかも~。でもここへ連れて来られたって事はそれなりの事をしたのだから私は手を抜かないけれどね」


 剥き出しの僕の下半身を興味深げに見る少女。

 もしかしなくとも棒で突いたりしないよ――――⁉

「あ゛、あがぁ!? っつ、はああ、うわあああああああああああああああ!!」


 そう思った刹那だった。

 まるで一瞬で燃え尽きてしまうかの様な灼熱をだ。

 彼女が見つめていたであろう僕の下半身に感じると共にどうしようもなく熱くて痛い、刺す様に痛い!!

 何とも形容し難くこれまでに一度も味わった事のない鮮烈で強烈な痛みと熱が僕の下半身を襲う。

 どろりとした粘りのある熱で僕の分身が溶かされる様な不思議で絶対に味わいたくはないもの。

 そうして僕は余りの痛みと熱と苦しさで意識を失ってしまった。


「もうあなたは二度と……ないわ」


 薄れゆく意識の中で聞いた少女の告げた言葉の意味をこの後で知る事となる。





「ん、こ、ここは……?」

 最初に白い天井が見えた。

 どうやら僕は寝ていたみたい。

 もしかしなくとも今までのは全て夢……?


「ああそうか。あれは全て夢だったのか。うんうんそうだろうな。だけど流石に笑えない内容ばかりだったな。

 先ずエリーゼと王宮で離ればなれになったと思えばだ。

 訳の分からない黒い物体と言うかお化けの様なものと石の球に追いかけられればだ。

 余りの恐怖で失禁してしまったと言うのにさ。

 服装を整える事もなくそのまま貴族達が集う大ホールへ行けばだな。

 何故か愛しの婚約者であるヤスミーンが王太子と一緒に入場するかと思えばだ。

 僕を衆目の中で断罪してくるのだよ、


 おまけに隣に至王太子も怒っているかと思えばだ。

 両陛下と共に何故か僕の両親が真っ青で今にも死にそうな顔で一緒に入場するのだよ。

 次期公爵となる僕でさえ王族と共に入場なんてあり得ないのにさ。

 何でただの侯爵でしかない両親が一緒なのかって思ったよ。


 すると陛下は僕を責めるしおまけに両親をも責めだした。

 それに何だった?

 まさかの有り得なさ過ぎる托卵疑惑。

 
 母上がヤスミーンの父である前公爵と愛人関係で、僕は亡くなった公爵の子で庶子だと言う。

 本末転倒だよ。

 確かに僕は兄上達とは年齢が離れているけれどね。

 父上と兄上にも余り似てはいないけれど……ね。

 何故か昔から? そう不思議な事に父上は兄上達ばかりを可愛がって僕を、幼い頃より僕を抱き締め……た事はない?

 僕が父上の子供……じゃないから? いやいやいやいや僕はノイナー侯爵家の三男に間違いはないのだ!!

 父上と母上の子供で間違ってはいない。絶対に間違っては――――」

「……それ悪いけれど全部リアだからね。それから気が付いたのなら自分の下半身を見てごらんよ。きっと楽しい事になっているわよ」


 けらけらと笑いながら部屋へ入ってきたのは夢だと思っていた筈の白衣を纏う少女。

 本当に全てが現実だったのか?

 僕は彼女に促されるまま下半身を見――――。

「何じゃこれは⁉」

「あはは成功成功、これで承認間違いなし。どぉこんな風になれば幾ら再犯率の高い性犯罪者でも犯罪を起こす気にもなれないでしょ」

「ぼ、僕のは〰〰〰〰」

「あなたのはそこにちゃーんとあるじゃない。ちょっと小振りになったけれ……」
「小振りなんてものじゃない!! 直ぐに元に戻せよ!!」

 
 そう確かに僕の分身はある。

 なくなってはいない。

 でも、でもこんなのはあんまりだああああああああああ。


「無理よ。サイズを元に戻す研究はしてはいないもの。大体性犯罪者を懲らしめる為に開発された薬なのよ。再犯率を下げる為だけのモノであって、性犯罪者を救うなんて物好きが何処にいるって言うのよ」
「そ、そんなあ……」

「ああ大丈夫よ。そのサイズになったとしても排泄に問題はないからね。ちょん切られるよりもうんと良心的と思うわよ


 僕の下半身を見てほくそ笑む少女……ラリサ。

 彼女は少女ではなくれっきとした成人女性だと知ったのはつい最近だ。

 然もあの可愛くもあどけなさをしっかりと残しているのにだ。

 何とラリサの年齢は45歳だと言う。


 彼女のその昔性犯罪者の被害者であったらしい。

 ラリサはその事実を余り語らない。

 でも当時は自死を何度も図ったと言う。

 その度に発見され、こうして今を生きている。

 ただ精神的なショックが大き過ぎて身体だけその当時の年齢のまま成長を止めてしまったらしい。


 性犯罪者の、僕の様な童貞を犯す行為は彼女の精神を現実に引き留める為に行うものとして公認されている。

 だけど同じ性犯罪者でも童貞でない者とラリサは対峙する事は出来ない。

 その場合は他のスタッフが対応すると言う。

 そうしてラリサの執念で考案された薬は僕を最後の被験者として承認され、これからあの薬はどんどん活躍するだろう。


 何しろ一度でもあの薬を打たれればだ。

 誕生した頃のサイズへと逆戻りするのだからね。


 これこそ身体は大人……でも大事な部分はベイビー。
 
 
 生殖機能も誕生時のモノとなれば次第に生殖機能は退化していく。

 生きていく為には特に不自由はない。

 そう裸を他人に見られなければ普通に生きられるのだ。

 ただ性欲そのものが消失する故に生涯孤独に生きていくしかない。


 でも僕の場合は違う。

 あれから様々な薬の治験を繰り返している。

 成功するものもあればその多くは失敗作を投与されていく。

 寝たきりでアイコンタクトしか出来ない身体となってしまった。

 こうしてものを考えるのも億劫で、兎に角常に眠い。


 きっともう直ぐだろう。

 僕は目覚めない日を迎えるのはそう遠くない日だと、思……う。


                                 終わり
 

 これで完結です。

 お付き合いして頂き有難う御座いました。

 
                            ぱぴよん
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