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本編

83話『康煕と千隼⑤』

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「問答無用で挿れられるのと、自分が想ってるモノを挿れるのとどちらがいい? 」

「どっちも嫌だよ! なにその選択、 おかしいから!! 」


究極の二択。
千隼にとっては羞恥のなにものでもなく、反対に康煕は楽しみでしかない。

(例え僕の知ってる康煕じゃなくても好きな人に見られながらなんて僕にはハードルが高すぎるのに、なのに、何で意地悪なこと言うの!! )

執拗いようだが、千隼にとっては全てが初めての経験になる。

セックスのセの字も知らず、ましてやローションやディルドなど未知の世界なのだ。

例え、それが好きな人から簡潔に言われてしまえば羞恥しかない。


「ぼ、僕の意思も尊重してほしいんだけど・・・」


ジト目で言えば不思議そうな顔で見つめられる。

何故? どうして? 断る意味が分からないとばかりに。


「お前、気付いてないと思うから話すけどな。 今のお前は精神体なんだろ? ずっとこのまま過ごしていれば本体はどうなる。 現実では昏睡状態に陥るんじゃねぇのか」


そうなったら、心配するのは誰だ。

そう言われた気がして顔を暗くした。

心配するのは、もちろん大好きな康煕。 起きなければ慌てるのも分かる。 

でも、だからといって目の前にいる彼の前で初体験をするのは恥かし過ぎる。

右も左も分からず、ずっと受け身体制でいたからという行為に抵抗を感じてしまう。

数分、数十分、はたまた一時間は経過しただろうか。

ジッとこちらを見ている彼の視線に戸惑いを隠せない千隼が意を決して口を開く。


「一人じゃ無理だから・・・、ぁの・・・、て、手伝って・・・」


顔を真っ赤にし、目を潤ませながらお願いをした。

それを見た康煕はニヤリと笑ったのだが、千隼は羞恥で顔を逸らしてしまい見ることはなかった。




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