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3巻
3-3
3 出発前の準備
片付けも終わったことだし、作るか、風呂を!
まずは土魔法を使って、横三メートル、縦四メートルの浴槽を作っていく。
全体を粘土質の土でキレイに整えて、内側の下部分と壁部分に石板を重ねて、外側には圧力に負けないように一枚岩の石畳で囲って……これで大丈夫かな?
水漏れ部分がないかの確認のために水を入れてみるか?
……よし!
どこにも水漏れもないようだし、水が濁ることもなかったので、今度は周りから見えないように木壁を作る。
これで良いかな?
では、お湯を沸かそうか。
こんなものかな? 体感だから正確ではないけど、たぶん四十一度くらいだろう。ゆっくり浸かりたいからこんな温度で良いか。
着替えを取りに行ってから風呂に入ろう。楽しみだ!
そうしていざ入ろうとして気づいた。石鹸、リンス、シャンプーを用意しないと!
どうせならサッパリしたいから、今回は日本の物をスキル【タブレット】で購入しよう。
これでよし!
では改めて、いざ入浴。
かけ湯して頭を洗う……うおっ、全然泡立たないな。仕方ないか……泡立つまで三回も洗ったよ……体もそうなんだろうなー。
……結局、体も三回洗ったよ。
従魔達の体も洗って湯に浸かる。ちなみにマナはいない。マナは女の子だから、一緒に風呂に入るわけにはいかないからな。
「うあぁー、気持ちいいよなー」
従魔達も思い思いに湯に入っている。
ライは種族的に湯に長くは浸かれないのかな? 出たり入ったりしているが、それでも楽しそうだから好きにさせておこう。
ヴォルフは少し浅いからか、普段より小さくなって浸かっている。
アクアはどうだろうと見回すが……
あれ、いない?
「アクアどこだー」
『ここー』
ヴォルフの上に乗ってた…‥アクアには深すぎたようで、ちょうど良い高さを探したらそこだったようだ。
風呂の浸かり方それぞれだけど、皆気持ちよく入ってるし良いかな。
体も温まったし、のぼせる前に出る。
マナに「このあと風呂に入ったらどうだ?」と聞く。マナは基本的に汚れないけど、風呂には興味はあるようだ。
マナが風呂に入っている間に、湯上がりの飲み物を全員で飲みながら待つ。
マナの入浴はあっという間で、十分ほどで出てきた。
飲み物をマナに渡して、お風呂の湯を抜く。それから湯船を撤去して、そこそこの深さの地面に埋めた。
気持ち良かったし、従魔達も気に入ったようなのでまた作りたいな。
さてと、あとは寝るだけだ。
アクアは飲み物を飲んだらさっさと寝たので、抱き上げて部屋に戻って全員で寝る。
◇
朝日が目に入ったので起きる。
全員珍しく寝ているな。
ヴォルフでさえもだ。
まあ、悪意を持つ人間が近づいたら気づくだろうから、何もなかったんだろう。
俺が起き上がったら、気づいて目を開けたし。
さてと、朝飯はハンバーガーとサンドイッチにしよう。従魔達には、この世界のリンゴであるアポの実のジュースを作ってと。俺とマークにはチャの葉を使ったミルクティーで良いかな。
ライもマナも起きてきたし、アクアも起こしたところで、マークも起きてきた。
「ノート、今日は魔道具を作ってくれるんだろ?」
「ああ、やっておくが、夕方になると思うぞ」
「わかった。できたら教えてくれ。ファスティに送る手筈はすでに整っていて、二個小隊で持っていってくれることになったから」
「了解。随分大げさだな。じゃあ、朝食が終わったら買い物に出るよ」
「頼む」
朝食を終え、片付けもささっと終える。
さて、準備万端だし買い物に出るかな。
武器屋や防具屋を巡って、結構な量の鉄のインゴットを購入した。そのまま戻って昼食の下拵えをして、さっさと作っちゃおう!
そして作ったのが次の物になった。
・回復のネックレス(小) ×3 三分ごとにHP5回復
・解毒のブレスレット(小) ×3 (小)ランクの毒無効
・力強化の指輪(小) ×3 力が5%上昇
・敏捷の指輪(小) ×6 敏捷が5%上昇
・魔力回復のイヤリング(小) ×6 一分ごとにMPを1%回復させる(最低でも1回復)
・熟練の腕輪(小) ×6 器用が5%上昇
うむ、これで良いだろう。
まだ材料は残っているが、後日魔道具を作るために残しておこう。
でき上がった物のうち、三種類を持ってマークを捜す。もちろん他の物は【アイテムボックス】に収納済み。
時間がまだ少し昼食に早いから、先に渡してしまおう。
「マーク、いるかー」
「ノート、どうしたんだ?」
「いたか。頼まれてた物ができたから持ってきたぞ!」
「もうか!? 随分と早くないか?」
「すでに作ったことのある物だからな、思ってた以上に手早くできたんだよ」
「そうか、ならば私はそれを持って、オーゴ領主様の所に行くとしよう。たぶん夕方には戻れると思う」
「わかった。なら、マークの分も夕食を作っておこう」
「すまないが頼めるか?」
「あってもなくても、手間は変わらないから気にすんな」
「そ、そうなのか。ならお願いする。私はすぐに出る支度をするので、魔道具は預かっておこう」
マークに作った魔道具を渡して、昼食作りにキッチンに向かう。
夕食の話はしたが、マークの奴、昼飯はどうするんだろう?
昼食を作っているとマークが出掛けると言うので、飯をどうするのか聞く。屋台の物を食べるとのことだったが……
俺はマークに告げる。
「食ってからいけば良いだろう。少しでも早くというのはわからないでもないが、俺は元々夕方と言ってたんだ。飯を食ってからでも十分だろ」
「いや、そうだが……昼食をとって遅くなるというのは……」
「それで文句を言うなら、俺の機嫌を損ねるとでも言っておけ! 二度と卸さないともな! 俺からすれば、そんなもんよりもマーク、お前の体調が崩れるほうが大事だ」
「ノート……」
なんだか感動しているような顔をしているな。
そんなマークに正直に言う。
「お前の体調が崩れて、日程ずれるほうが俺は困るんだ」
「少しは人のことを考えられるんだと感心したんだが……私の気持ちを返せ!」
「まあ、そんなわけだから、大人しく食ってから行けよ」
「はぁ、わかった。そうすることにしよう。だが、苦言を言われたらお前のせいにするぞ」
俺は不敵に笑う。
「ファスティ領主はそんなことで文句は言わないと思っているけどな」
「まあいい。それで? 食事はいつできるのだ?」
「そうだな。あと十分くらいだろう」
「では、テーブルのほうに行っておく」
「ああ、そうしててくれ」
マークの胃のことも考え、簡単なランチにしようと思い、【アイテムボックス】に入っている下拵え済みの物を出す。
簡単とはいえ昼だし、ある程度腹に溜まる物がいいだろう。
ソーセージの入ったシチューと、ブルーブルのミルフィーユカツレツ、シーザーサラダ、パンを各種、チャの葉、ジュース、簡単なお菓子を用意して、テーブルに向かった。
全員の分の配膳をして、皆で食べる。
やっぱり皆で食べるのは良いな。
こっちに来る前は一人飯が多かったからな。
……って、誰がボッチだ!
飯食うのが真夜中というか明け方が多かっただけだ! たぶん。
ミルフィーユカツレツとシチューが思いのほか上手くいっていたのでまた作ろうと思う。
しかし、スキルの恩恵がありがたすぎるな。
以前はできなかったというか……そういうこと以前に、調理の段階で失敗したような気がしても、なぜかあっさり上手くできてるからな。
食事を終えたところでマークがすぐにでも出掛けると言うので、俺達も一緒に家を出ることにした。
そういえばここの鍵は一個しかないんだが、マークに渡しておいた。
それで俺は従魔を連れて冒険者ギルドに行ったんだが、面倒くさそうな依頼しかなかったので、そのまま依頼を受けずに外に出てきた。
依頼なしで採取に行くかな。
目当ては、薬草も含めた素材採取。
明日には街を出るから、常備薬としてのポーション系を作ったり、暇潰しの物を集めたりしないと……
そうだ、本屋を探そう!
採取は一時間くらいで切り上げて、街中に戻って本屋を探すことにした。
……ないのか。
そう諦めかけたとき、やっと本屋を見つけた。
店内を覗くと、ローブを着た、おそらく店主であろうおっさんが暇そうにカウンターに座っていた。
「少し見させてもらっても良いかな?」
俺がそう言うと、おっさんが答える。
「いらっしゃい。好きに見て回るといいよ。もし、こういう物を探しているというのがあるのなら、言ってくれれば出してあげるからね。まあ、適当に見て回ってもらっても、もちろんいいんだけどさ。ただし、パラパラと中身の確認くらいならいいけど、ずっと読むのはやめてね」
なるほど、日本の本屋と同じだな。
とりあえず目当ての物は出してもらって、あとは適当に見て回ろう。
「じゃあ、お願いしていい? 『デミダス国の歴史』と『デミダス国の地図』と『デミダス国周辺国の地図』があれば欲しいな」
「地図ね。あるにはあるが、全体図の正確な物はないよ。領地名と町村の名前とだいたいの位置が載ってる物はあるけどね」
「それでもいい」
「そうかい? じゃあ……」
おっさんはそう言いつつ、店内の数ヶ所を見て回って本を取り出してきた。
このおっさん、すべての本の場所覚えてるのか。
迷いがないな! スゲー!
「頼まれたのはこの辺の物だね。あとはどうするのかな?」
そう聞かれて、少し考えてから追加でお願いする。
「魔法関係の物はあるか?」
「それならこの辺だね。欲しいのがどういった魔法かによるだろうから、あとは自分で見て選んでくれるかい?」
「ああ、ありがとう」
俺は、言われた辺りの本の名前をチェックしていく。
五冊ほど気になった物があったので、これも購入しようと思って持っていくと、おっさんは心配そうに問う。
「お金はあるのかい? 結構な金額になってきているよ?」
「今でどれくらいになった?」
「えーと、35万ダルになってるよ」
まだいけるな。
もっと欲しいからと、俺は100万ダルを机に置く。それで、その金額になったら教えてもらうことにした。
『生活魔法書』とか『魔法名称一覧』とか『薬草一覧』『魔物一覧』等々積み上げていくと、声がかかったのでそこまでにしておく。
値段はピンキリあったな。
ちなみに、最終的には六十冊ほど購入することになった。
店主のおっさん、嬉しそうだったのが印象的だったし、悪くない人っぽいな。また来られたら来るかと思った。
買い物も終わって満足げにコテージに戻ってくる。
すでに夕方近くになっていた。
マークが帰ってくるのを待つついでに、コテージの横で食事の準備を行っていると、ヴォルフが誰かが近づいてくると言ってきた。
「敵性か?」
『違うな、殺意も悪意もない』
「なら、出方を待つか」
そう話し合いつつ、その近づいてくるという誰かを待つ。
何用なんだろうな。
4 領主と会う
しばらく待つと、一人の気配が近づいてきているのを俺も感知した。
男性がこちらに向かって歩いてきた。
俺達が見ていると、向こうから声をかけてきた。
「ノート殿で間違いないですか?」
「ああ。俺がノートだ」
「戻られていて良かったです。では、マーク殿、領主様からの伝言を伝えます」
伝言?
なんだろうな?
「マーク殿からは、『夕食までには戻れそうにない』との伝言を預かっております。次いで、領主様からです。『マーク殿の用事がまだかかるので、本日はこちらで食事をしないか?』とのことです」
うーん……食事は準備してたんだが、さすがにパスはできんよな。
これだけ丁寧に、しかもこちらを侮らない伝令の人をよこしてくれたんだしな。なら、こちらも相応に返事しないとな。
今までは高圧的に来られることが少なくなかったが。
「わかった。ただ一点お願いがある。今まさに夕食の準備をしていたので、でき上がっている分だけでも持ち込んで良いか? それを領主様に許可を得てもらいたいんだが」
「それは大丈夫かと思われますが。マーク殿が、ノート殿の料理は美味だと領主様に話していたので……」
そう言いつつ、伝令の人は少し困った顔をしている。
ちょっと迷惑かもだが、ここは押し通してしまおう。
「では、その旨を伝えてもらえますか。自分はアイテムカバンを持っているので、それに料理を入れていきますから」
「伝言承ります。では、先に戻らせていただきますので」
伝令の人は領主邸に戻っていった。
そこから少し時間を置いて、領主の所に向かって歩き出す。
伝令の人が俺の所を出てから五十分くらいで、俺は領主の待つ所へやって来た。
入り口でいったん止められたものの、話は通っており、中の執事に連絡するだけなので少し待ってほしいと言われる。
待っていると、執事はものの数分でやって来た。
執事に案内され、領主の執務室に通される。
「よく来てくれた!」
「お招きいただいたようだが……飯じゃないのですかね?」
執務室に通されてるし、食事をする雰囲気でもないので尋ねてみた。
オーゴ領主は答える。
「まあ、そうなんだが、その前に話があったんでこちらに呼んだんだ」
「話?」
「あいつだ。元隊長の話だ」
「ああ。俺とトラブった奴か。なんかそんな奴もいたな。それで、なんの話だろうか?」
「あいつは私の顔を潰すようなことをしたんで、奴隷にまで落とすつもりなんだが‥…」
「あの者の処罰は、そちらで罰する話でまとまったのでは?」
「いや、まあ、その、なんだ……」
「歯切れが悪いな?」
「いや、あの者の罰だけで済ませてやれないだろうか?」
俺はムッとして答える。
「はっ? 好きにすれば良いのでは? あの者が俺に関わり合いにならないならそれで良いのだから」
「一応確認はしときたかったんだ」
こっちの世界では、家族までまとめて処罰するのが普通なのか。
しかし、こういうのは面倒だし気分も悪いな。
「マークから聞いてませんかね?」
「何をだ?」
「俺は俺と敵対する本人には徹底抗戦するが、その者の家族一族にまでは手を出さないぞ? もちろん家族ぐるみで敵対してくる場合はその限りではないが」
「い、一応マーク殿からは聞いていたんだが、勝手な解釈はあとが面倒になりかねないから、確認することにしたんだ」
「そうか。じゃあハッキリと言いましょう。連帯責任はいらん! 罰するのは、先ほども言った通り、家族ぐるみ一族ぐるみで敵対することがない限りは本人のみでいい! これでいいだろうか?」
俺が一気にまくし立てると、オーゴ領主は唖然としていた。
「随分とハッキリした宣言をするものだな」
「下手に毎度家族全員処罰するほうが、俺はあとが面倒になると思ってるからな」
「わかったわかった。では、あの者のみの処罰にしよう。これは、あの者の資産を売却したときの予想買い取り代金だ、受け取ってくれ」
オーゴ領主はそう言って、金の入った袋を差し出してくる。
「ならこの金で、どこかに小さくてもいいから、物件か土地をくれ。また来た際の拠点にでもするから」
すると、オーゴ領主は目を丸くする。
「移り住むことにしたのかね!?」
「いや、そういうわけじゃない。海鮮を買いに来るかもしれんからな。こっちに来たとき、最悪テントでも良いが、人に気を遣わないで済む場所が欲しいんだ。元々宿には泊まれないからさ。従魔達がいるから」
「なるほどな。わかった。それならば、問題の人物の家をそのままノート殿の物にしよう。奴の家族としても家の維持費は嵩むとしんどいらしく、もう少し安い所に移動するらしいし、ちょうど良いだろう」
「わかった。じゃあそれとは別にこの金を預けるので、週一くらいで掃除をしてくれそうな、孤児院の子供か、女手一つで子供を育てながら働いてる人に仕事を斡旋してほしい」
俺の願いに、オーゴ領主は首を傾げる。
「週一で月四回くらいの掃除か。給金はどうするんだ?」
「そうだな、掃除と窓開けだからな。一回1万ダル月四回で4万ダルで良いか」
「助かるが、高額すぎるな。半分くらいにして良いか?」
「その辺は任せることにするよ。適正価格がわからないからな。貧困救済の仕事にしてくれればいいさ」
「わかっている。任せてくれ」
俺の希望通り話がまとまったが、あとはどんな話があるのかな?
俺は回りくどいことをせず、直接聞くことにした。
「オーゴ領主、他にも何か話があるんだよな?」
「なぜそう思う?」
「先ほどの話だけなら、わざわざここで話さなくても良かったはず。ここに呼ぶ話があると考えるのが普通では?」
「そういうことに気づけるとは……本当にもったいない人材だな。まあいい、その話はマーク殿がここに来てからに」
オーゴ領主がそう言うと、ちょうどそのタイミングで扉がノックされる。
入ってきたのは、執事とマークだった。
「オーゴ領主様、お待たせいたしました」
「いや、大丈夫だ」
「ノート、着いていたのか」
「さっき来たとこだ」
マークが席に座り、執事はそのまま出ていった。
俺は二人に問う。
「それで、どんな話があるんだ? なんとなく想像はつくが一応聞いておこうか」
オーゴ領主とマークは驚いた顔をした。
領主が口を開く。
片付けも終わったことだし、作るか、風呂を!
まずは土魔法を使って、横三メートル、縦四メートルの浴槽を作っていく。
全体を粘土質の土でキレイに整えて、内側の下部分と壁部分に石板を重ねて、外側には圧力に負けないように一枚岩の石畳で囲って……これで大丈夫かな?
水漏れ部分がないかの確認のために水を入れてみるか?
……よし!
どこにも水漏れもないようだし、水が濁ることもなかったので、今度は周りから見えないように木壁を作る。
これで良いかな?
では、お湯を沸かそうか。
こんなものかな? 体感だから正確ではないけど、たぶん四十一度くらいだろう。ゆっくり浸かりたいからこんな温度で良いか。
着替えを取りに行ってから風呂に入ろう。楽しみだ!
そうしていざ入ろうとして気づいた。石鹸、リンス、シャンプーを用意しないと!
どうせならサッパリしたいから、今回は日本の物をスキル【タブレット】で購入しよう。
これでよし!
では改めて、いざ入浴。
かけ湯して頭を洗う……うおっ、全然泡立たないな。仕方ないか……泡立つまで三回も洗ったよ……体もそうなんだろうなー。
……結局、体も三回洗ったよ。
従魔達の体も洗って湯に浸かる。ちなみにマナはいない。マナは女の子だから、一緒に風呂に入るわけにはいかないからな。
「うあぁー、気持ちいいよなー」
従魔達も思い思いに湯に入っている。
ライは種族的に湯に長くは浸かれないのかな? 出たり入ったりしているが、それでも楽しそうだから好きにさせておこう。
ヴォルフは少し浅いからか、普段より小さくなって浸かっている。
アクアはどうだろうと見回すが……
あれ、いない?
「アクアどこだー」
『ここー』
ヴォルフの上に乗ってた…‥アクアには深すぎたようで、ちょうど良い高さを探したらそこだったようだ。
風呂の浸かり方それぞれだけど、皆気持ちよく入ってるし良いかな。
体も温まったし、のぼせる前に出る。
マナに「このあと風呂に入ったらどうだ?」と聞く。マナは基本的に汚れないけど、風呂には興味はあるようだ。
マナが風呂に入っている間に、湯上がりの飲み物を全員で飲みながら待つ。
マナの入浴はあっという間で、十分ほどで出てきた。
飲み物をマナに渡して、お風呂の湯を抜く。それから湯船を撤去して、そこそこの深さの地面に埋めた。
気持ち良かったし、従魔達も気に入ったようなのでまた作りたいな。
さてと、あとは寝るだけだ。
アクアは飲み物を飲んだらさっさと寝たので、抱き上げて部屋に戻って全員で寝る。
◇
朝日が目に入ったので起きる。
全員珍しく寝ているな。
ヴォルフでさえもだ。
まあ、悪意を持つ人間が近づいたら気づくだろうから、何もなかったんだろう。
俺が起き上がったら、気づいて目を開けたし。
さてと、朝飯はハンバーガーとサンドイッチにしよう。従魔達には、この世界のリンゴであるアポの実のジュースを作ってと。俺とマークにはチャの葉を使ったミルクティーで良いかな。
ライもマナも起きてきたし、アクアも起こしたところで、マークも起きてきた。
「ノート、今日は魔道具を作ってくれるんだろ?」
「ああ、やっておくが、夕方になると思うぞ」
「わかった。できたら教えてくれ。ファスティに送る手筈はすでに整っていて、二個小隊で持っていってくれることになったから」
「了解。随分大げさだな。じゃあ、朝食が終わったら買い物に出るよ」
「頼む」
朝食を終え、片付けもささっと終える。
さて、準備万端だし買い物に出るかな。
武器屋や防具屋を巡って、結構な量の鉄のインゴットを購入した。そのまま戻って昼食の下拵えをして、さっさと作っちゃおう!
そして作ったのが次の物になった。
・回復のネックレス(小) ×3 三分ごとにHP5回復
・解毒のブレスレット(小) ×3 (小)ランクの毒無効
・力強化の指輪(小) ×3 力が5%上昇
・敏捷の指輪(小) ×6 敏捷が5%上昇
・魔力回復のイヤリング(小) ×6 一分ごとにMPを1%回復させる(最低でも1回復)
・熟練の腕輪(小) ×6 器用が5%上昇
うむ、これで良いだろう。
まだ材料は残っているが、後日魔道具を作るために残しておこう。
でき上がった物のうち、三種類を持ってマークを捜す。もちろん他の物は【アイテムボックス】に収納済み。
時間がまだ少し昼食に早いから、先に渡してしまおう。
「マーク、いるかー」
「ノート、どうしたんだ?」
「いたか。頼まれてた物ができたから持ってきたぞ!」
「もうか!? 随分と早くないか?」
「すでに作ったことのある物だからな、思ってた以上に手早くできたんだよ」
「そうか、ならば私はそれを持って、オーゴ領主様の所に行くとしよう。たぶん夕方には戻れると思う」
「わかった。なら、マークの分も夕食を作っておこう」
「すまないが頼めるか?」
「あってもなくても、手間は変わらないから気にすんな」
「そ、そうなのか。ならお願いする。私はすぐに出る支度をするので、魔道具は預かっておこう」
マークに作った魔道具を渡して、昼食作りにキッチンに向かう。
夕食の話はしたが、マークの奴、昼飯はどうするんだろう?
昼食を作っているとマークが出掛けると言うので、飯をどうするのか聞く。屋台の物を食べるとのことだったが……
俺はマークに告げる。
「食ってからいけば良いだろう。少しでも早くというのはわからないでもないが、俺は元々夕方と言ってたんだ。飯を食ってからでも十分だろ」
「いや、そうだが……昼食をとって遅くなるというのは……」
「それで文句を言うなら、俺の機嫌を損ねるとでも言っておけ! 二度と卸さないともな! 俺からすれば、そんなもんよりもマーク、お前の体調が崩れるほうが大事だ」
「ノート……」
なんだか感動しているような顔をしているな。
そんなマークに正直に言う。
「お前の体調が崩れて、日程ずれるほうが俺は困るんだ」
「少しは人のことを考えられるんだと感心したんだが……私の気持ちを返せ!」
「まあ、そんなわけだから、大人しく食ってから行けよ」
「はぁ、わかった。そうすることにしよう。だが、苦言を言われたらお前のせいにするぞ」
俺は不敵に笑う。
「ファスティ領主はそんなことで文句は言わないと思っているけどな」
「まあいい。それで? 食事はいつできるのだ?」
「そうだな。あと十分くらいだろう」
「では、テーブルのほうに行っておく」
「ああ、そうしててくれ」
マークの胃のことも考え、簡単なランチにしようと思い、【アイテムボックス】に入っている下拵え済みの物を出す。
簡単とはいえ昼だし、ある程度腹に溜まる物がいいだろう。
ソーセージの入ったシチューと、ブルーブルのミルフィーユカツレツ、シーザーサラダ、パンを各種、チャの葉、ジュース、簡単なお菓子を用意して、テーブルに向かった。
全員の分の配膳をして、皆で食べる。
やっぱり皆で食べるのは良いな。
こっちに来る前は一人飯が多かったからな。
……って、誰がボッチだ!
飯食うのが真夜中というか明け方が多かっただけだ! たぶん。
ミルフィーユカツレツとシチューが思いのほか上手くいっていたのでまた作ろうと思う。
しかし、スキルの恩恵がありがたすぎるな。
以前はできなかったというか……そういうこと以前に、調理の段階で失敗したような気がしても、なぜかあっさり上手くできてるからな。
食事を終えたところでマークがすぐにでも出掛けると言うので、俺達も一緒に家を出ることにした。
そういえばここの鍵は一個しかないんだが、マークに渡しておいた。
それで俺は従魔を連れて冒険者ギルドに行ったんだが、面倒くさそうな依頼しかなかったので、そのまま依頼を受けずに外に出てきた。
依頼なしで採取に行くかな。
目当ては、薬草も含めた素材採取。
明日には街を出るから、常備薬としてのポーション系を作ったり、暇潰しの物を集めたりしないと……
そうだ、本屋を探そう!
採取は一時間くらいで切り上げて、街中に戻って本屋を探すことにした。
……ないのか。
そう諦めかけたとき、やっと本屋を見つけた。
店内を覗くと、ローブを着た、おそらく店主であろうおっさんが暇そうにカウンターに座っていた。
「少し見させてもらっても良いかな?」
俺がそう言うと、おっさんが答える。
「いらっしゃい。好きに見て回るといいよ。もし、こういう物を探しているというのがあるのなら、言ってくれれば出してあげるからね。まあ、適当に見て回ってもらっても、もちろんいいんだけどさ。ただし、パラパラと中身の確認くらいならいいけど、ずっと読むのはやめてね」
なるほど、日本の本屋と同じだな。
とりあえず目当ての物は出してもらって、あとは適当に見て回ろう。
「じゃあ、お願いしていい? 『デミダス国の歴史』と『デミダス国の地図』と『デミダス国周辺国の地図』があれば欲しいな」
「地図ね。あるにはあるが、全体図の正確な物はないよ。領地名と町村の名前とだいたいの位置が載ってる物はあるけどね」
「それでもいい」
「そうかい? じゃあ……」
おっさんはそう言いつつ、店内の数ヶ所を見て回って本を取り出してきた。
このおっさん、すべての本の場所覚えてるのか。
迷いがないな! スゲー!
「頼まれたのはこの辺の物だね。あとはどうするのかな?」
そう聞かれて、少し考えてから追加でお願いする。
「魔法関係の物はあるか?」
「それならこの辺だね。欲しいのがどういった魔法かによるだろうから、あとは自分で見て選んでくれるかい?」
「ああ、ありがとう」
俺は、言われた辺りの本の名前をチェックしていく。
五冊ほど気になった物があったので、これも購入しようと思って持っていくと、おっさんは心配そうに問う。
「お金はあるのかい? 結構な金額になってきているよ?」
「今でどれくらいになった?」
「えーと、35万ダルになってるよ」
まだいけるな。
もっと欲しいからと、俺は100万ダルを机に置く。それで、その金額になったら教えてもらうことにした。
『生活魔法書』とか『魔法名称一覧』とか『薬草一覧』『魔物一覧』等々積み上げていくと、声がかかったのでそこまでにしておく。
値段はピンキリあったな。
ちなみに、最終的には六十冊ほど購入することになった。
店主のおっさん、嬉しそうだったのが印象的だったし、悪くない人っぽいな。また来られたら来るかと思った。
買い物も終わって満足げにコテージに戻ってくる。
すでに夕方近くになっていた。
マークが帰ってくるのを待つついでに、コテージの横で食事の準備を行っていると、ヴォルフが誰かが近づいてくると言ってきた。
「敵性か?」
『違うな、殺意も悪意もない』
「なら、出方を待つか」
そう話し合いつつ、その近づいてくるという誰かを待つ。
何用なんだろうな。
4 領主と会う
しばらく待つと、一人の気配が近づいてきているのを俺も感知した。
男性がこちらに向かって歩いてきた。
俺達が見ていると、向こうから声をかけてきた。
「ノート殿で間違いないですか?」
「ああ。俺がノートだ」
「戻られていて良かったです。では、マーク殿、領主様からの伝言を伝えます」
伝言?
なんだろうな?
「マーク殿からは、『夕食までには戻れそうにない』との伝言を預かっております。次いで、領主様からです。『マーク殿の用事がまだかかるので、本日はこちらで食事をしないか?』とのことです」
うーん……食事は準備してたんだが、さすがにパスはできんよな。
これだけ丁寧に、しかもこちらを侮らない伝令の人をよこしてくれたんだしな。なら、こちらも相応に返事しないとな。
今までは高圧的に来られることが少なくなかったが。
「わかった。ただ一点お願いがある。今まさに夕食の準備をしていたので、でき上がっている分だけでも持ち込んで良いか? それを領主様に許可を得てもらいたいんだが」
「それは大丈夫かと思われますが。マーク殿が、ノート殿の料理は美味だと領主様に話していたので……」
そう言いつつ、伝令の人は少し困った顔をしている。
ちょっと迷惑かもだが、ここは押し通してしまおう。
「では、その旨を伝えてもらえますか。自分はアイテムカバンを持っているので、それに料理を入れていきますから」
「伝言承ります。では、先に戻らせていただきますので」
伝令の人は領主邸に戻っていった。
そこから少し時間を置いて、領主の所に向かって歩き出す。
伝令の人が俺の所を出てから五十分くらいで、俺は領主の待つ所へやって来た。
入り口でいったん止められたものの、話は通っており、中の執事に連絡するだけなので少し待ってほしいと言われる。
待っていると、執事はものの数分でやって来た。
執事に案内され、領主の執務室に通される。
「よく来てくれた!」
「お招きいただいたようだが……飯じゃないのですかね?」
執務室に通されてるし、食事をする雰囲気でもないので尋ねてみた。
オーゴ領主は答える。
「まあ、そうなんだが、その前に話があったんでこちらに呼んだんだ」
「話?」
「あいつだ。元隊長の話だ」
「ああ。俺とトラブった奴か。なんかそんな奴もいたな。それで、なんの話だろうか?」
「あいつは私の顔を潰すようなことをしたんで、奴隷にまで落とすつもりなんだが‥…」
「あの者の処罰は、そちらで罰する話でまとまったのでは?」
「いや、まあ、その、なんだ……」
「歯切れが悪いな?」
「いや、あの者の罰だけで済ませてやれないだろうか?」
俺はムッとして答える。
「はっ? 好きにすれば良いのでは? あの者が俺に関わり合いにならないならそれで良いのだから」
「一応確認はしときたかったんだ」
こっちの世界では、家族までまとめて処罰するのが普通なのか。
しかし、こういうのは面倒だし気分も悪いな。
「マークから聞いてませんかね?」
「何をだ?」
「俺は俺と敵対する本人には徹底抗戦するが、その者の家族一族にまでは手を出さないぞ? もちろん家族ぐるみで敵対してくる場合はその限りではないが」
「い、一応マーク殿からは聞いていたんだが、勝手な解釈はあとが面倒になりかねないから、確認することにしたんだ」
「そうか。じゃあハッキリと言いましょう。連帯責任はいらん! 罰するのは、先ほども言った通り、家族ぐるみ一族ぐるみで敵対することがない限りは本人のみでいい! これでいいだろうか?」
俺が一気にまくし立てると、オーゴ領主は唖然としていた。
「随分とハッキリした宣言をするものだな」
「下手に毎度家族全員処罰するほうが、俺はあとが面倒になると思ってるからな」
「わかったわかった。では、あの者のみの処罰にしよう。これは、あの者の資産を売却したときの予想買い取り代金だ、受け取ってくれ」
オーゴ領主はそう言って、金の入った袋を差し出してくる。
「ならこの金で、どこかに小さくてもいいから、物件か土地をくれ。また来た際の拠点にでもするから」
すると、オーゴ領主は目を丸くする。
「移り住むことにしたのかね!?」
「いや、そういうわけじゃない。海鮮を買いに来るかもしれんからな。こっちに来たとき、最悪テントでも良いが、人に気を遣わないで済む場所が欲しいんだ。元々宿には泊まれないからさ。従魔達がいるから」
「なるほどな。わかった。それならば、問題の人物の家をそのままノート殿の物にしよう。奴の家族としても家の維持費は嵩むとしんどいらしく、もう少し安い所に移動するらしいし、ちょうど良いだろう」
「わかった。じゃあそれとは別にこの金を預けるので、週一くらいで掃除をしてくれそうな、孤児院の子供か、女手一つで子供を育てながら働いてる人に仕事を斡旋してほしい」
俺の願いに、オーゴ領主は首を傾げる。
「週一で月四回くらいの掃除か。給金はどうするんだ?」
「そうだな、掃除と窓開けだからな。一回1万ダル月四回で4万ダルで良いか」
「助かるが、高額すぎるな。半分くらいにして良いか?」
「その辺は任せることにするよ。適正価格がわからないからな。貧困救済の仕事にしてくれればいいさ」
「わかっている。任せてくれ」
俺の希望通り話がまとまったが、あとはどんな話があるのかな?
俺は回りくどいことをせず、直接聞くことにした。
「オーゴ領主、他にも何か話があるんだよな?」
「なぜそう思う?」
「先ほどの話だけなら、わざわざここで話さなくても良かったはず。ここに呼ぶ話があると考えるのが普通では?」
「そういうことに気づけるとは……本当にもったいない人材だな。まあいい、その話はマーク殿がここに来てからに」
オーゴ領主がそう言うと、ちょうどそのタイミングで扉がノックされる。
入ってきたのは、執事とマークだった。
「オーゴ領主様、お待たせいたしました」
「いや、大丈夫だ」
「ノート、着いていたのか」
「さっき来たとこだ」
マークが席に座り、執事はそのまま出ていった。
俺は二人に問う。
「それで、どんな話があるんだ? なんとなく想像はつくが一応聞いておこうか」
オーゴ領主とマークは驚いた顔をした。
領主が口を開く。
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