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第三章 超ハードモードの人生に終止符を
モフモフは正義です
しおりを挟む転移魔法陣を三人で踏む。
眩い光が私たちを包み込んだ。
行き着く先が罠なのか、それとも糞女神のアジトなのか、どちらにしても、一歩を踏み出すことが出来た。
その一歩は、とてもとても大きい。
大きいんだよ……。
眩い光が消えると、そこは森の中だった。
敵の気配はしない。だけど、蛇はいる。至るところにね。とぐろを巻いて。でも、飛び掛かっては来ない。
魔法陣内にいるからね。一歩出たら、まず間違いなく一斉に攻撃してくるわね。中には、一咬みであの世行きの毒蛇もいる。
「インディー様。大丈夫ですか? 魔力酔いを起こしてませんか?」
そう尋ねる私も、軽い酩酊感がある。ちょっとした馬車酔いに似た感じかな。まぁでも、全然平気だけど、インディー様は顔色が悪い。完全に目眩を起こしてるわね。
「……大丈夫です」
いや、冷や汗出てるでしょ。魔力酔いは三半規管を刺激するから。ましてや、気を紛らわそうとしても、周りは蛇だらけだしね……。
「取り敢えず、これ飲んで下さい。毒じゃありませんよ。ただのポーションです。何故か、魔力酔いに効果があるんですよ」
訝しむインディー様にポーションを飲ませながら、私は殿下に頼む。
「カイン殿下。蛇どうにか出来ますか?」と。
これをどうにかしないと先に進めないからね。
「わかった。任せろ」
殿下はニヤリと笑う。そのまま魔法陣から出ようとした時だった。私たち三人以外の声がした。
「その必要はない」
その声に弾かれるように、私たちは声をした方に視線を向ける。
すると、視線の先には白い狼がいた。一メートルは有に超える大きさだ。
いつの間にーー。全く気配がしなかった。殿下でさえ、驚愕している。
魔物……? ううん、違う。禍々しい気配は一切ないわ。反対に、神々しいものを感じる。
白い狼はゆっくりとこっちに向かって来る。一歩、一歩。蛇はとぐろを解き逃げ出した。潮が引いた海岸のように。私たちの前まで来ると、空に向かって遠吠えを一回する。
すると、蛇の気配が一斉に消えた。
「「…………神獣」」
殿下と私の言葉が重なった。
「一目で我を見抜くとはな。さすが、創世神の使徒たちだな」
白い狼は上機嫌で告げた。インディー様は弾かれたように顔を上げ、私と殿下を凝視する。その表情は純粋に驚愕しかなかった。思考がそこまで追い付いていないようだった。
「「何故、神獣様が?」」
また声が重なる。
「お前たちはほんに仲が良いな。邪神を倒しに行くのだろ? 我も同行しよう」
愉快そうに神獣様は仰る。
「……それは、凄くありがたいですが、本当に宜しいのでしょうか?」
珍しく、殿下が敬語で話しているわ。
「構わん。創世神に頼まれたが、我自身アレのやりようは腹が煮えくり返っているのでな、丁度いい。それに、使徒とはいえ人の身だ。アレに対抗するのは、ちと不利だろう」
確かに、神獣様の仰る通りだ。
下界に降りてきたとはいえ、神は神。下位でもね。その力が制限されたとしても、人の肉を被っていたとしても、その力は人間を遥かに凌駕しているだろう。
神獣様の力が借りられるなら、願ってもないことだわ。
「ありがとうございます。助かりますわ」
ゼリアス様に大感謝。
「……ありがとうございます。神獣様」
殿下、ここは素直に喜ぼうよ。裏があると思ってもね。
「うむ。感謝しろ」
「はい」
モフモフは正義ですわ。撫でたら駄目かな。駄目だよね。残念。
一人付いていけてない方がいるけど、ここは放置で。説明するのも大変だし、それにそんな時間はないからね。
そんなことを思いながら、神獣様を先頭に進む。
だって、私たちが乗り込んで来たってことは伝わってる筈だからね。魔法陣を通して。
ほら、屋敷の門扉に見知った人が立っているわ。彼は私たちが、貴方の顔を知ってることは知らないけどね。
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