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第四章 これから先の人生はイージーモードでお願いします
情に訴えるならこの方法しかないわね
しおりを挟む一番最初に結界に引っ掛かったのは魔物じゃなく、人間だったわね……
「……リラさんは、魔法が得意だと聞いていましたが、まさか、小屋の周囲に結界を張っていたとは考えもしませんでしたよ」
私の質問には答えず、ハハと笑いながらそうのたまうフランクに、私の機嫌は見る見る低下。殴りそうになったけど、グッと我慢する。
たぶん、フランクと騎士君はお母様たちに命令されて来たのだと思うけど、私にとったらありがた迷惑もいいところ。ここは穏便にお帰り頂こう。なので、私は丁寧に対応した。
「出て行ってもらえます? 出て行かないのなら、実力行使させてもらいますが、宜しいでしょうか?」
丁寧でしょ。だって、実力行使する前にちゃんと警告してるんだから。
「なっ、待て!! いきなり!!」
焦るフランクに、相対して、後ろに控えている騎士君は焦る様子が見られない。怖くないって思ってるからね。それは口調からも伺えた。
「俺たちは、リラさんを護るよう命令されてここにいる」
少し馬鹿にしたような言い方ね。
「だから? 私に護衛は不要ですわ」
きっぱりと断ると、騎士君のこめかみがピクッと動く。もしかして、矜持に障った? そういえば、私、この人の名前知らないわね。興味ないけど。
「確かに、リラさんは強い。その強さは野盗狩りに同行した俺がよく知っている。しかし、貴女がいくら強くても、女一人でここに住むのは危険過ぎる。御家族が心配する気持ちも理解してほしい」
なかなかやるわね、フランク。私を持ち上げ、情に訴えてきたわ。下手に言葉で断ると、墓穴を掘りそうだわ。なら、取る方法は一つね。
「……そこまで、隊長であるフランクさんが仰るのであれば、一回、私とお手合わせしてもらえませんか? だって、護ってもらうのならば、当然、護衛者よりも強くなくてはいけないでしょ」
にっこりと微笑みながらそう提案すると、フランクは呆気に取られ、騎士君は、更にこめかみに青筋が浮かんでいる。
「……本気ですか?」
吐き出される言葉もとても低い。かなり頭にきているわね。馬鹿にされたと思ったよう。馬鹿にはしてないわよ。事実を述べただけですけど。
「ええ。相手はフランクさんでなく貴方でも構いませんよ」
私的にはどちらでもいいんだけど。ただ、この騎士なら勝敗は格段に上がるわね。私にしても都合がいい。
「なら、お望み通り、俺が相手しましょう」
あっ、掛かった。騎士として大成したいのなら、挑発にのらないようにならないと無理よ。その点から見れば、さすがフランクね。彼は気付いてる。もう立ち合いが始まってることに。
「俺は鞘を抜きません。いつでも掛かって来てください。魔法を使用しても構いませんよ」
少し距離をとってから、そう言い放つ。私もずいぶん舐められたものね。絶対、自分が勝つって自信があるのね。なら、その自信、粉々にしてあげましょうか。
「あら、優しいのね。でも、止めとくわ。私はこれでお相手致しますわ」
そうにっこりと微笑みながら、落ちていた一本の木の棒を二度ほど振ってみる。うん、長さ的にもちょうどいいわ。
騎士のこめかみにまたしても青筋が。クスッ。完全にキレてるわね。
フランクは苦笑しながら私を見ている。でも止めないのね。それがどういう意味か気付かないなんて、もうちょっと修行が必要よね。
「審判は俺がしよう。両者、用意はいいか?」
私と騎士君は頷く。
「では、始め!!」
その声と同時に、私は地面を蹴る。遠慮なく私から仕掛けてさせてもらうわ。
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