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第四章 これから先の人生はイージーモードでお願いします

お金を捨てることと一緒です

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 スローライフを始めて一週間。

 来るのはいつものメンバーだけ。

「…………狩りをする貴族令嬢なんて、聞いたことがない。ましてや、平気で捌いてるってアリなのか」

「……ウゲッ!!」
 
 護衛騎士ではなく、自称ハンターのフランクがそう呟けば、部下である騎士君ことジョン君は短い悲鳴を上げた。

 メインディッシュの下処理中にね。

 はぁ~また来たの。お仕事とはいえ大変よね。こんな小娘のご機嫌取りなんて。

 作業の手を一旦止めて顔を上げると、何故か口元をヒクヒクしながら引いている二人がいた。彼らの視線は私の手元に注がれている。

「何言ってるんですか? 野菜ばかりだと栄養が偏りますよ。幸いにも、この森にはお肉がたくさんありますもの、大事に頂きますわ」

 そう言いながら、内蔵を取って首をはねた野鳥を逆さに持つ。ボトボトと血が滴り落ちる。

 血抜きは大事だよ。ちゃんと血抜きしてないと生臭くなるからね。内蔵も素早く取る。これも大事。まぁでも、野鳥だから、臭くなっても余裕で食べれるけどね。でもこれが、魔猪なら無理。なので、魔猪の場合は素早く内蔵を取った後、川に沈めて置く。内臓は食べられないよ。寄生虫もいるし、毒を持ってる場合もあるからね。だから、直ぐに燃やすかな。血の匂いにつられて、厄介なものが来るからね。

「いや……そういう意味じゃなくて……」

 フランクが苦笑しながら答える。

「どうして、公爵家のお嬢様ができるんだ?」

 やや青い顔をしながら、ジョン君は訊いてきた。

 腰が引き気味なのは気のせいかな? さっき、悲鳴上げてたよね。……もしかして、

「ハンターなんだから、普通できるでしょ。それよりも、ジョン君」

 にっこりと微笑みながら、ジョン君に一歩近付く。すると、ジョン君は一歩下がった。数歩近付き、数歩下がる。

 うん、間違いないわね。

「騎士が血が苦手って、大丈夫なのですか?」

 後ろにいるフランクを振り返りながら尋ねる。

「いざとなったら、動けるから大丈夫だ」

「そういうものですか?」

「ああ、そういうものだ」

 まぁ、上司であるフランクがそう言うなら、それでいいんでしょうね。仮にも公爵家の専属騎士、その名は伊達じゃないでしょう。

「俺は血が苦手じゃない!! グロいのが苦手なんだ!!」

「いやいや、これのどこがグロいのですか? もう、内臓を取り出した後じゃないですか」

「首切り落として逆さにしているだけで、十分グロいだろ!! なっ、なんだよ!! 二人して、駄目な子を見るような目をして!!」

 うん。デリケートなんだね、ジョン君は。これがグロいって……命のやり取りをしている人の台詞じゃないわ。少なくとも、今はハンターでしょうが、魔物をさばけないなんて勿体ない。お金を捨ててるようなものだわ。種類によっては、魔物の内臓が薬になったりするのよ。

「……フランクさん、提案なのですけど、今から魔猪を狩りに行きませんか? この前、近くで足跡を見付けたので、まだ近くにいると思うの」

 私がそう提案すると、フランクは私の意図に気付いたようだ。ニカッと笑うと、ジョン君を見た。もちろん、私も。

 後退る、ジョン君。

 逃げれられると思う? 逃しはしないわよ。そうでしょ、フランクさん。

「さぁ、行こうか」

「行きましょうか」

 脱兎の如く逃げ出すジョン君。

 私はパチンと指を鳴らす。結界に阻まれて出られないジョン君。

「晩ご飯は、魔猪のステーキか」

「シチューもいいですわ」

 野鳥は明日でもいいし。

 結界を背に青い顔色で焦るジョン君に近付く、私とフランク。

「いえ……俺は猪肉は苦手なので、お二人で」

「食事は皆で食べる方が美味しいぞ、ジョン」

「好き嫌いは駄目ですよ、ジョン君」

 満面な笑みを浮かべながら逃げ道を塞ぐ私とフランク。

 あれ? 更に顔色が悪くなってるけど……大丈夫? 視線が、私を通り越しているようだけど、後ろに何かいるの? でも結界内よね。

「ほう……今から仲良く、魔猪を狩りにいくのか? 我も行こう。我は生がいいな」

 懐かしいまでとはいかないけど、よく知っている声が背後からした。

 どうやら、同行者が増えたようね。私にとって、その同行者は大歓迎!! これからのスローライフが、よりいっそう楽しくなるわ!! ゼリアス様、ありがとうございます。

 

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