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第五章 呪いが解けるまで楽しむ予定です
前門はケルベロス。後門は壁
しおりを挟むダンジョンの入口は、想像していたものよりもかなり広くて立派だった。
滝の裏だから、ジメッとした洞窟のようなものを想像してたんだけど。全くジメッとはしていなかった。どことなく、良い匂いがしてるし。なんとなく、ヤバイ感じがする。神獣様もいらっしゃるし、大丈夫。
まぁ……それはひとまず置いといて、意外と、巨大なダンジョンかもしれないわね。焦りはしない。急いで出てきたけど、癖で、有に二か月は生活できるだけのものはマジックバックに保管してるからね。それ以外にも、ゼリアス様が持たしてくれた品もあるし、じっくり攻略しても大丈夫。神獣様のご飯、主食は神獣様自身が用意してくれるしね。
「神獣様、結構、明るいですね。灯りは必要ありませんね」
言い終えると、ホゥと息を吐く。感嘆からだ。
神秘的な幻想的な光景だった。まだ、入口なのにね。壁自体が光っていたの。正確に言うと、壁に埋め込まれている魔石が仄かに青白く光っていた。一つ一つは小さい。でも、数が集まれば、明かりが必要でなくなるくらいだった。
「ん? この道は通らんぞ」
「えっ!? どう見ても、一本道ですよね。この道以外に道があるのですか? でも、ここ、まだ入口ですよね」
入口付近で、隠し通路があるって話聞いたことがないわ。中盤か終盤にあったりはするけどね。実際、何度もダンジョンに潜ってるけど、こんなパターン今まで遭遇したことがないわ。
「この奥には、ケルベロスが待ち構えておる。いくらマリエールが強くても、ケルベロスには敵わないだろう」
「ケッ、ケルベロス!! 今、ケルベロスって言いました!? ケルベロスって、魔界の番犬として有名なSSランクの魔物ではありませんか!? それが、どうしてこんな場所に!?」
「番犬としてに決まっておろう」
いやいや、話が通じない。質問の仕方を変えよう。
「どうして魔界の番犬が、このようは場所にいるのですか!? 魔界と人間界の境を護っているのではないのですか!?」
「護っているだろう」
私の質問の意図がわからないのか、首をコテと横に傾げながら、神獣様は答える。
「まるで、このダンジョンが、魔界と人間界の境かのようなーー」
途中で言葉が途切れる。タラリとこめかみから汗が滴り落ちる。
……まさか…………嘘よね……
「どうした? マリエール」
「…………神獣様」
声が震える。
「なんだ?」
神獣様は可愛い仕草で私を見ている。却ってそれで、涙が出そうになった。
「神獣様のお友だちって……」
「今世の魔王だ」
やっぱり!! 誰か嘘だって言って!!
頭を抱えて絶叫しそうになったわ。
シクシク。私は知らず知らずに、敵地に足を踏み入れたようです。そうだ!! まだ足を踏み入れたばかり、今から引き返しても、十分間に合うは……ず…………
「マジで~~~~!!」
淑女にあるまじき叫び声。いや~よく響くね。洞窟内だから、反響がいいこと。
背後に壁が。完全に退路を絶たれました。
前門はケルベロス。後門は壁。
隠し通路を行くしか生き残る道はありません。
「安心せい。今世の魔王は、先代とは違い平和主義者だ。無用な殺生はせん」
そうでしょうね。魔族が人間を襲っているとは聞かないから。それに、神獣様のお友だちだし。
「でも、侵入者は?」
「うむ、躊躇なく排除するな」
排除イコール死だよね。
「ちなみに、私の立ち位置は?」
「侵入者」
「ですよね~~」
泣いていいですか。
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